1) 代表的な肝機能検査





代表的な肝機能検査値は
AST、ALT、LDH、LAP、ALP、ChE
γ-GTP、ビリルビン、血清総タンパク
肝炎ウイルスマーカーです。


ASTは、aspartate amino transferase の略です。
ALTは、alanine amino transferase の略です。

基準値は
AST 11~40 IU/L
ALT 6~43 IU/L
です。

※IUとはinternational unit の略で、国際単位です。
それぞれの検査値やビタミン毎に規定されています。
以下、IUとあった時は国際単位を表します。


おおざっぱな傾向として
ASTは、心筋に多く、心筋梗塞時に上昇します。
ALTは、肝障害時に高くなります。

ASTやALTが1000以上等という
桁の違う高い値になる時は
急性肝炎か劇症肝炎が強く疑われます。

100~500程度までの上昇では
肝硬変、肝細胞癌、脂肪肝、慢性肝炎等が
疑われます。

~100程度までの軽度な上昇では
脂肪肝、アルコール性肝障害などが疑われます。


特徴的な疾患における
ASTとALTの変化についてより詳細に述べると
以下のようになります。


AST,ALTが1000以上にまで上昇した場合の急性肝炎
→初期はAST>ALT
→時間が経つと、半減期がALTの方が長いので、ALT>ASTとなることが多い。


AST,ALTが1000以上にまで上昇した場合の劇症肝炎
→AST>ALT


AST,ALTが100~500程度まで上昇した場合の肝硬変、肝細胞癌
→AST>ALT


AST,ALTが100~500程度まで上昇した場合の脂肪肝、慢性肝炎
→ALT>AST


LDHは、lactate dehydrogenase の略です。

基準値は
LDH 200~400 IU/L
です。


LDHには、5つのアイソザイム
(酵素としての活性はほぼ同じだが、アミノ酸配列が異なる分子のこと)が存在し
それぞれが組織によって分布が異なるという特徴があります。

その特徴を利用し
5つのアイソザイムのうち、どれが上昇しているかによって
病変部位を推定することができます。


よく知られているアイソザイムと疾患の関連は以下のようになります。
LDH1,2が上昇→心筋梗塞など
LDH2,3が上昇→白血病など
LDH4,5が上昇→肝炎など



LAPは、leucine aminopeptidase の略です。

基準値は
LAP
男性:40~80 IU/L
女性:30~60 IU/L

LAPは、通常胆汁中に多く含まれる酵素です。
胆道や肝臓に障害がある時に血中に増えるため、特に胆汁うっ滞の指標として知られています。



ALPは、alkaline phosphatase の略です。

基準値は
ALP 110~340 IU/L
です。

ALPは、ほとんどの臓器に含まれていますが、肝臓などにおいて高活性です。
又、胆汁に多く含まれています。
LAPと同様に、胆道系疾患の指標として知られています。



ChEは、cholinesteraseの略です。

基準値は
ChE 120~460 IU/L
です。

コリンエステラーゼは大きく2種類に分類されます。
真性コリンエステラーゼと、偽性コリンエステラーゼです。

真性コリンエステラーゼは、アセチルコリンを特異基質として、酢酸とコリンに分解します。
偽性コリンエステラーゼは、特異性がなく、コリンエステルを分解する酵素です。

偽性コリンエステラーゼは、肝臓のみで合成されるという特徴があります。
偽性コリンエステラーゼの値は、肝臓でのタンパク合成能の指標に用いられます。

ChEが高値の場合、ネフローゼ症候群や、甲状腺機能亢進症が疑われます。
ChEが低値の場合、肝炎などが疑われます。



γ-GTPは、γ-glutamyl transpeptidase の略です。

基準値は
γ-GTP
男性:55 IU/L 以下
女性:35 IU/L 以下
です。

γ-GTPは、飲酒によく反応する酵素です。
アルコール性肝障害の指標としてよく知られています。



ビリルビンは、ヘモグロビンの代謝によってできるヘムに類似した構造を持つ、黄色の色素です。
ビリルビンは、間接型ビリルビンと、直接型ビリルビンに分類されます。

間接型ビリルビンは赤血球の残骸だとイメージするとよいです。
直接型ビリルビンは、間接型ビリルビンが肝臓においてグルクロン酸抱合されたもののことです。
間接型と直接型ビリルビンを合わせたものが、総ビリルビンと呼ばれます。

基準値は
総ビリルビン:0.3~1.0mg/dL (10mg/dL以上で、明らかな黄疸)
間接型ビリルビン:0.8mg/dL以下
直接型ビリルビン:0.3mg/dL以下
です。

間接型ビリルビンが上昇するときは、ビリルビンの生成亢進、すなわち溶血性の疾患が疑われます。
直接型ビリルビンが上昇するときは、肝細胞障害が疑われます。
すなわち、肝細胞障害により、肝細胞内の直接型ビリルビンが血中に流出したことが疑われます。



血清総タンパク(TP:Total Protein)は、アルブミンやグロブリンといったタンパクの総量です。

基準値は
TP:6.5~8.2g/dL
です。

この値が高い時は、脱水症による血液の濃縮、感染症による免疫グロブリン上昇等が疑われます。
この値が低い時は、ネフローゼ症候群による尿中へのタンパク漏出や、肝障害によるアルブミン合成低下が疑われます。



肝炎ウイルスマーカーには
A型、B型、C型肝炎ウイルスマーカーがそれぞれ存在します。

主要なA型肝炎ウイルスマーカーは、HA(Hepatitis A :A型肝炎)抗体です。
HA抗体には、さらにIgM型とIgG型があります。

IgM型は、肝炎ウイルスに感染後、早期に産生される抗体です。
そのため、A型急性肝炎の診断に用いられます。
又、この抗体は、2~3ヶ月すると血中から消失していきます。

IgG型は、IgM型が消失していく頃から増加していく抗体です。
この抗体は、生涯産生される抗体(終生免疫)ですので、A型肝炎ウイルス感染歴の有無を判断するために用いられます。


主要なB型肝炎ウイルスマーカーは、HBs抗原、HBe抗原、HBs抗体、HBe抗体の4つです。
小文字のsはsurfaceの略、eはenvelopeの略です。
イメージとしては、B型肝炎ウイルスは3層構造をしており、外側から皮の部分(surface),実の部分(envelope),核の部分(core)があるとイメージすればよいです。

HBs抗原は、B型肝炎ウイルスに感染中であるかどうかの有無を判断するために用いられます。
HBe抗原は、B型肝炎ウイルスが、盛んに増殖しているかどうかを判断するために用いられます。

この2つの指標の違いのイメージは、工場で製品(ウイルスの例え)を作る時に出てくるゴミをイメージすると理解が助けられるかもしれません。
(すなわち、工場で製品を激しく生産している時は、製品の様々な部分のゴミが出てくるのに対し
生産をある程度行った後、落ち着いた状態の時は、既にできた製品の表面からしかゴミが出てこないというイメージです。)


HBs抗体は、B型肝炎ウイルス感染歴の有無の判断に使用されます。
ほぼ終生免疫です。

HBe抗体は、肝炎ウイルスの増殖がおさまってきているかどうかの判断に使用されます。

HBe抗原が陽性から陰性になり、HBe抗体が陽性になることをセロコンバージョンと呼びます。
セロコンバージョンは、B型慢性肝炎の治療目標の1つとなっています。


主要なC型肝炎ウイルスマーカーは、HCV-RNA、HCV-抗体です。

HCV-RNAは、C型肝炎ウイルスのRNAです。
感染早期から陽性です。感染の有無の判断に使用されます。

HCV抗体は、HCVに対する抗体です。
感染後ある程度の期間が経過しないと、血中に見られません。

このため、HCV-RNAのみ陽性ならば、C型急性肝炎
両方のマーカーが陽性ならば、C型慢性肝炎と判断する材料になります。