1-1 2) 軌道の混成





軌道(原子軌道と呼ばれることもある。)とは
電子の存在しうる領域の事です。

その領域は、波動方程式と呼ばれる式を解いた時に出てくる
解(=波動関数。
エネルギーが1番低い時の波動関数1
エネルギーが2番目に低い時の波動関数2、、、
といった解が出てきます。
この解は、ものすごく大雑把にいえば
係数がごちゃごちゃしているe, sinx , cosx の積です。
イメージとしては、グラフにしたら波打っているイメージでOKです。)

各軌道に入ることができる電子の数は、2つです。
それぞれの電子の、スピンと呼ばれる固有の角運動量が
逆でなければならないという法則が、自然界においての原理として成り立っています。
(Pauli(パウリ)の排他原理と呼ばれる原則です。)

スピンが逆でなければならないということを、喩え話で説明すると
電子1つ1つが自転しており
1つの部屋(=1つの軌道)に入れる電子は2つだが
2つは必ず逆向きにくるくる回っているというイメージになります。
1つの部屋に入った、スピンの向きが逆である2つの電子のことを
電子対と呼びます。

電子がいくつかある時は、エネルギーが一番低い軌道から順に電子が入っていきます。
そして、等しいエネルギーの、複数の軌道がある時は
次の様なルールに従い、電子が入っていきます。

まず、それぞれの軌道に1つずつ同じ方向のスピンを持った電子が
軌道に1つずつ入った後
逆方向のスピンを持った電子がそれぞれの軌道に入って電子対になっていきます。
(これはHund(フント)の規則と呼ばれます)


ここまでの話は、1つの原子における電子の軌道に関してでした。
次に2つの原子がつくり上げる共有結合について考えます。

例として、1つのH(電子が1つ)と1つのH(電子が1つ)が
共有結合を作り上げることを考えます。
1つの電子は、エネルギーが最低の軌道である s 軌道(sはsharpの略。)に入っています。
そして、軌道はまだ2つ電子が入りきっていません。

2つの H 原子が近づく時、2つの s 軌道も近づきます。
この時、軌道というのは、波っぽい関数であったことを考えると
うまく2つの関数が重なりあうと、波が大きくなったり、小さくなったりすると考えることができます。

少し堅苦しい言葉で表すと、位相がそれぞれの軌道において同じであれば互いに強め合い
位相がそれぞれの軌道において異なれば、互いに弱め合います。

互いに強め合う
=その場所に電子が存在する確率が高くなる
=2つの電子が、強め合う領域にいる
=必然的に2つの原子が近くにいる
→これを「共有結合が生成している」と呼びます。


この話は、2つの原子における電子の軌道に関してです。
最後に、多原子における電子の軌道に関して例をあげます。

例として BeH
を上げます。Be には電子が 4 個、H には電子が 1 個あります。

エネルギーが低い方から軌道をあげていくと、1s,2s,2p,2p,2p、、、です。
(2pが3つあるのは、同じエネルギ-のため同じ名前。よく便宜上x,y,zが下付き文字でついてる。)
(参考:続きは3s,3p,3p,3p,4s,3d,3d,3d,3d,3d,3d,4p,4p,4p,5s・・・です。pはprincipal,dはdiffuse、fはfundamentalの略)

すると、Be の電子は1s,2s軌道に2つずつ入っています。
開いている軌道がなく、このままでは「BeとHの接近」
→「軌道の重なりあいによる新たな軌道生成」がおきたとしても
電子が入りきらず、結合は生じません。

ここで、2s軌道と2p軌道はそれほどエネルギーが変わらないことから
2s軌道に入っている2つの電子の内1つを、2p軌道に渡してしまうことで
]2つ軌道を空けることができます。(参考図1)






参考図1


こうすれば、H との結合を生じることができます。
すると、Be の 2s 軌道と H の 1s 軌道との強めあいによる結合が1つと
Be の 2p 軌道と H の 1s 軌道との強めあいによる結合 1 つが生成されると予想されます。
さらに、2s 軌道及び 2p 軌道の形から、結合は 90 度であると予想されます。

しかし、実際には、BeH
は直線上の分子であることが測定によりわかっています。
これはなぜかといえば、電子と電子は共に負電荷を持っており
反発しあうためできるだけ離れようとするからです。
つまり、軌道という概念だけでは分子の結合を説明しきれないといえます。


そこで、説明するための便利な概念として考えだされたのが混成軌道です。

すなわち、一つの原子の原子軌道と他の一つの原子軌道により、分子軌道ができるように、
同一原子状のいくつかの原子軌道を混ぜあわせても、新しい軌道(=混成軌道)ができると考える概念です。

先程のベリリウム上の、2s軌道と、2p軌道を混ぜ合わせることで
s性50%、p性50%のsp混成軌道ができます。





参考図2



このsp混成軌道の形も又
方程式を解いた式をグラフにしたものであり
2つの非対称なローブが180°の角度で
互いに反対方向を向いているものとなります。


同様に、BH
3において、まず、Bは電子5つであり
1s軌道に2個、2s軌道に2個、2p軌道に1個電子が入っています。

ここで、2s軌道の2つの電子のうち1つが、2p軌道に行き
2s,及び2p軌道2つの併せて3つの軌道が混成することで
sp2混成軌道と呼ばれる3つの軌道ができます。

この形はそれぞれの非対称なローブが120°ずつの角度を成します。
一つ余った2p軌道は、sp2軌道とは、垂直な軌道となり、π結合の生成に関与することになります。


最後に、CH
4 において、Cは電子6個であり
1s軌道に2個、2s軌道に2個、2p軌道に2個電子が入っています。

ここで、2s軌道の2つの電子のうち1つが、2p軌道に行き
2s、及び2p軌道3つの併せて4つの軌道が混成することで
sp3混成軌道と呼ばれる4つの軌道ができます。
4つの軌道は、それぞれ正四面体を構成するような軌道となります。



まとめ : 同じ原子上の軌道を混ぜ合わせることで、違った形をもつ新しい混成軌道ができる。
      s軌道1つ、p軌道1つからは、sp混成軌道2つができる。
      s軌道1つ、p軌道2つからは、sp2混成軌道3つができる。
      s軌道1つ、p軌道3つからは、sp3混成軌道4つができる。