3-2 5) イオンの輸率と移動度







電解質溶液において、溶液中のイオンが移動する際
全電流に対する陽イオンと陰イオンの寄与の割合のことを
イオンの輸率といいます。
(イオンの移動速度が異なるってことです!)


こんな値に注目したきっかけは
イオンの大きさの違いと言われています。

すなわち、高校の化学で学んだ電気分解を思い出すとよいのですが
電気分解において、陽極、陰極において酸化還元反応がおきます。

これにより、電子の流れが生まれて、電流が流れますが
この電子は、現実的にはイオンによって運ばれていると捉えることができます。



具体例として、水の電気分解をあげます。

負極において、2H + 2e → H

という還元反応がおきますが
これは水素イオンという溶液中にいる電子の運び手に
電子が乗り込んだというイメージで捉えることができます。


同様に、陽極において
2O2 → O2 + 2e
という酸化反応がおきますが
これは溶液における、金属板への電子の送り手であるO2
電子を金属板へと送り込んだというイメージで捉えることができます。



このように、電子の流れをイオンが担っているとした時
それぞれのイオンには大小の違いがあるのだから
それぞれのイオンが均等に電子の流れを担ってはいないだろうと
いうことで考えたのが、輸率という概念です。

(イメージとしては、電子という荷物を、色んな体の人間が運んでいたら

運んでいる人間によって速度が違うだろうぐらいのイメージです。)



すなわち、1Fの電流が流れた(1molのe-が流れた)時
その電流が流れるために
寄与した陽イオンの割合を陽イオンの輸率:t+
寄与した陰イオンの割合を陰イオンの輸率:t-
と考えたのです。


この輸率という概念を実際に測定しようとすると
単なる電気分解の装置では
多少の陽イオンと陰イオンの寄与の違いにより
溶液中にイオン濃度の勾配ができたとしても
すぐに拡散により均一な濃度になってしまいます。


そこで、イオンの移動する溶液部分を極端に細く
かつくねくねと曲がったものにすれば
移動の影響を測定することができると考え
M字型の試験管を用いて電気分解を行なって
陽極槽の塩濃度と陰極槽の塩濃度を測定することにより
初めて輸率を実際に測定したのがヒットルフです。


輸率は
ヒットルフが最初に測定法を開発したので、ヒットルフ数とも呼ばれます。