4) 沈殿滴定




沈殿滴定とは
沈殿反応を利用した定量法です。

液体だけでなく、固体も相に現れるという点において
特徴的な定量法である、といえます。


代表的な方法として
Fajans (ファヤンス) 法
Volhard (フォルハルト) 法
Mohr (モール) 法

が知られています。


どの方法も、銀イオンと
何かによる沈殿が生成します。

終点の判断方法として加える試薬 及び
終点の判断できる原理の違いによる分類です。



ファヤンス法は、主な対象として
塩素含有化合物 か ヨウ素含有化合物
を対象とします。


塩素含有化合物に対しては
指示薬として
フルオレセインナトリウム を加えます。
色の変化は、黄緑→紅 です。

ヨウ素含有化合物に対しては
指示薬として
テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル
を加えます。
色の変化は 黄→緑 です。


滴定の際、ビュレットなどで加えていくのは
AgNO 液 です。


指示薬の色の変化が
できる沈殿に、吸着するイオンによるものなので
吸着指示薬法とも呼ばれます。




フォルハルト法は、主な対象として
銀含有化合物 を対象とします。(直接法)
銀(や水銀)を、直接測定する方法です。

※ 銀を含有しない試料でも
銀イオンと沈殿する陰イオンが含まれる場合は
OK です。この場合、間接法と呼ばれます。


指示薬としては
硫酸アンモニウム鉄 (ポイントは、Fe3+) を使います。


滴定の際加えるのは、NH
4SCN 液です。



まず、直接法について説明します。

直接法では
対象となる溶液中の銀イオンと SCN- が
まず、白色沈殿 AgSCN を生成します。
→当量点後は、SCN-が過剰となり
指示薬として加えた
鉄イオンと、赤色錯イオン(可溶性)を形成し
液が赤くなります。



次に、間接法について説明します。

まず、硝酸銀を過剰に加えます。
→対象中の、塩化物イオンなどが、沈殿として生成します。
これにより、加えた銀イオンが、ある程度消費されます。

次に、直接法と同じことをして
銀イオンの量を測定します。

すると、始めに加えた銀イオンの量と
測定量の差を計算することにより
測定対象の陰イオンの量を求めることが
できます。




モール法は、主な対象として
塩素含有化合物を対象とします。


指示薬が、クロム酸カリウムです。
指示薬の濃度が、とても重要です!

Clイオンとの沈殿として 
AgCl と、Ag2CrO4 の 溶解度の違いを利用して
色の違いにより終点を判断するのですが

指示薬の濃度が薄すぎると
当量点になっても沈殿が始まらないし

濃すぎると
共沈してしまうため、濃度が重要になります。


また、pH にも注意が必要です。
大体 6.5 ~ 10.5 ぐらいの pH でないといけません。

というのも、アルカリが強すぎると
Ag2O が沈殿してしまうし

酸性が強いと
クロム酸カリウムが Cr2O72- になって
Ag
2CrO4 が溶解してしまい
感度が低下してしまうからです。


モール法は、食塩の代表的滴定法なのですが
日本薬局方では、クロム酸イオンが有害であるため
使用が中止されています。。




ちなみに、モール法でもファヤンス法でも
塩素含有化合物の滴定ができるといったように

同種の化合物に対して、複数の分析方法が存在する意味は
何か、という点について、少し補足をしていきます。


これらの分析方法は
歴史的な、改良の結果です。

より簡便な方法や、より安価な方法などが
発達してきた結果といえます。


さらに、近年では、環境への配慮という新たな観点や
分析における分光技術の発達に伴う
種々の測定方法も発達してきました。


そういった技術の進歩もあり
ドラマの CSI とか見ていると
こんな沈殿滴定なんてめったに出てこず
大概 LC/MS とか GC/MS とかで
分析してるじゃないか。。。
→沈殿滴定なんて、いつ使うの?
考えてしまうかもしれません。。


とはいえ、例えば大規模停電の時や
被災地における、簡易分析のために など
目的に応じて、まだまだ現役の分析法 である
という意義があります。


さらには、それぞれの代表的な分析方法と
その分析方法を根拠付ける理論の違いを学ぶことにより
新たな理論が生まれた時に、それをどのように応用としての
分析技術に適用するか という観点における
重要な先行研究 としての意義もあると考えられます。
以上、補足でした。