問116
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.HIVは、ゲノムとして二本鎖RNAをもつ。 2.HIVは宿主細胞表面のToll様受容体に結合し、細胞内に侵入する。 3.ウイルスがもつ逆転写酵素により生成したDNAは、宿主細胞の染色体に組み込まれる。 4.ウイルス表面に発現するノイラミニダーゼが、宿主細胞への吸着に必要である。 5.HIVは、CD4陽性T細胞に感染する。
正解 (3)、(5)
選択肢 1 ですが HIV は 「一本鎖RNA」をゲノムとして保有するウイルスです。 二本鎖ではありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが HIVは、細胞表面のCD4という糖タンパク質に結合します。 Toll様受容体ではありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。
ちなみに Toll 様受容体とは、動物の細胞表面にある受容体で 自然免疫機構における、異物の感知を担っています。 好中球、マクロファージ、樹状細胞などで発現しています。 ちなみに、Toll はドイツ語で”規格はずれな”の意味とのことです。
選択肢 3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが ノイラミニダーゼは 「インフルエンザウイルス」が保有する酵素です。 ウイルス増殖プロセスの中でも遊離する際に 細胞表面の糖タンパク質を切断する役割を持つ酵素です。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 3,5 です。
問117
結核菌に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.結核菌は、外毒素を菌体外へ分泌する。 2.結核菌の細胞壁には、ペプチドグリカンやミコール酸が存在する。 3.気道から侵入した結核菌は、肺で肺胞マクロファージに貪食され、そのマクロファージ内で増殖する。 4.結核菌感染の既往の有無を調べるためのツベルクリン反応は、典型的なⅡ型アレルギーである。 5.結核予防に用いられている生ワクチンBCG株は、ヒト型結核菌の弱毒株である。
正解 (2)、(3)
選択肢 1 ですが 結核菌は、外毒素を分泌しません。 ※ただし、結核菌はグラム陽性菌の一種である 抗酸菌に属します。意識して覚えておくとよいです。
選択肢 2,3 は、正しい記述です。 ミコール酸の存在については 抗結核菌薬であるイソニアジドのメカニズムが ミコール酸の生合成阻害である点からも 判断できるのではないでしょうか。
また、結核菌はマクロファージ内で増殖 というのはぜひ覚えておくとよいです。
選択肢 4 ですが ツベルクリン反応は、Ⅳ型アレルギー反応です。 Ⅱ型ではありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。
ちなみに Ⅱ型は細胞傷害型、細胞融解型です。 代表例は、溶血性貧血などです。
選択肢 5 ですが BCGは、ウシ型結核菌の弱毒株です。 ヒト型ではありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
問118
サイトカインに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.IFN-γ(インターフェロン-γ)は、マクロファージを活性化して、その貪食能を増強させる。 2.エリスロポエチンは、主に脾臓で生合成・分泌される。 3.IL-2(インターロイキン-2)は、キラーT細胞の増殖及び分化を抑制する。 4.IL-4(インターロイキン-4)は、Th0細胞(0型ヘルパーT細胞)からTh1細胞(1型ヘルパーT細胞)への分化を促進する。 5.TGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)は、免疫抑制作用を示す。
正解 (1)、(5)
サイトカインとは 免疫系細胞から分泌されるタンパク質の総称です。
選択肢 1 は、正しい記述です。
選択肢 2 ですが エリスロポエチンは 腎臓で産生される糖タンパク質です。 脾臓ではありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 ですが インターロイキンとは 白血球により分泌される サイトカインの一種です。
その中で インターロイキン2は T細胞、B細胞、NK細胞などを 「活性化」させる作用を持ちます。
また インターロイキン 4 は Th「2」 細胞への分化に 大きく寄与するとされています。
よって、選択肢 3,4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 1,5 です。
類題 99-119
問119-120
未知タンパク質Xを分離精製し、その特性を解析した。
問119
タンパク質Xを含む細胞抽出液(試料ア)をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。 SDS-PAGEに際し、試料アにSDSと2-メルカプトエタノールを添加して前処理した(試料イ)。 図1のレーンAは分子量が25kDa、35kDa、40kDa、55kDaの4種の分子量マーカータンパク質を示し、レーンBは試料イを分離したときの泳動結果である。 図2は精製したタンパク質X溶液(試料ウ)と上記の4種の分子量マーカータンパク質を混合して分離したときのクロマトグラムである。 以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.SDS-PAGEでは、試料イのようにタンパク質をSDSと2-メルカプトエタノールで酸化的に前処理することで分子量に基づいた分離が可能になる。 2.SDS-PAGEにおいて、タンパク質は陰極から陽極に向かって移動する。 3.タンパク質Xの分子量は、40kDaから55kDaの間である。 4.SECの固定相として、プロテインA固定化シリカゲルが用いられる。 5.SECによりタンパク質Xが単量体として溶出されるとき、そのピークは④である。
正解 (2)、(3)
選択肢 1 ですが 2ーメルカプトエタノールは、「還元」剤です。 酸化的ではなく、還元的前処理です。 この前処理で分子量に基づいた分離が可能になる という部分は適切です。
選択肢 2,3 は、正しい記述です。 SDS-PAGEでの泳動方向と極については頻出ですが 前処理で負電荷をタンパク質に付加する という点を イメージできると思い出しやすいです。
選択肢 4 ですが プロテインA固定化ゲルは 免疫沈降法で用います。 SECでの固定相ではありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが SECでは、分子量が小さい方が遅く出てきます。 つまり、保持時間が長いということです。 従って、順に 1が55k、2がX、3が40k 4が35k、5が25k のピークと考えられます。
よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
問120
精製したタンパク質Xは単量体で酵素活性をもち、その活性発現には補因子を必要としないことが判明した。 次に、タンパク質Xに対する1種類のモノクローナル抗体(anti-X)をマウスを用いて作製した。 タンパク質Xの酵素活性、抗体作製及び細胞内局在の解析に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 ただし、精製の過程で酵素活性が失われることはなかった。
1.試料イにおけるタンパク質Xの酵素活性は、試料アよりも高い。 2.タンパク質Xの比活性*は、試料アよりも試料ウにおいて高い。 3.anti-Xを産生するハイブリドーマの作製には、マウス骨髄腫細胞が用いられる。 4.anti-Xは、タンパク質X中の複数の異なるエピトープ(抗原決定基)を認識する。 5.anti-Xと試料イを用いたウエスタンブロット法により、タンパク質Xの細胞内局在を同定することができる。
* 比活性:試料中のタンパク質の単位重量当たりの酵素活性
正解 (2)、(3)
選択肢 1 ですが 試料イは、前処理済なので SDSで変性しています。 精製の過程で失活はしていないとありますが 一般的に、活性は低下すると考えられます。
少なくとも この処理により酵素活性が高くなるとは いえません。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが anti-X はモノクローナルです。 モノクローナルとは 認識するエピトープが単一 ということです。 記述はポリクローナルに関するものです。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが 細胞内局在の同定には、例えば 目的タンパク質をコードする部分の遺伝子に 蛍光タンパク質(GFP等)のコードを挿入した上で
遺伝子を細胞内に導入し 細胞培養した上で、蛍光を測定する といった手法を取ります。
ウエスタンブロットは 試料からタンパク質 X のみを検出する方法です。
これでわかるのは 「確かに試料には、タンパク質 X があるよ」 ということです。 細胞内のどこにあったか はわかりません。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
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