問126
図は、1955年から2015年までの全悪性新生物及び部位別にみた悪性新生物の年齢調整死亡率の年次推移を示したものである。 A~Fは、乳房、肺(気管、気管支及び肺)、胃、肝臓、大腸及び子宮のいずれかに対応している。 これらの年次推移に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.Aの年齢調整死亡率が低下し続けている要因として、がんの早期発見や食生活の変化が考えられる。 2.Bの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した主な要因として、飲酒やウイルス感染の関与が考えられる。 3.Cの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した要因の1つとして、食事内容の欧米化が考えられる。 4.Eの年齢調整死亡率の低下の主な要因として、ワクチンの定期接種によるEの罹患率の低下が考えられる。 5.近年、全悪性新生物の年齢調整死亡率が男女とも低下しているが、粗死亡率も同様に低下している。
正解 (1)、(3)
選択肢 1 は、正しい記述です。 減少傾向とあり かつ、男女ともに かつての圧倒的1位なので Aは 胃がんと判断します。
検診の普及による 早期発見・早期治療や 塩分を控える食生活の浸透などが 理由と考えられています。
選択肢 2 ですが、Bは 2015 年時点での 男性1位なので、肺がんと判断します。 記述は飲酒、ウイルスとあるので 肝がんについての記述と考えられます。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい記述です。 C は、増加傾向にある点から大腸がんと 判断します。
選択肢 4 ですが がんの話なので ワクチンの定期接種による罹患率の低下 というのは明らかに誤りです。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが がんによる粗死亡率、つまり 単純に年間 10 万人あたり何人亡くなるか は 増加し続けています。 これは高齢化が背景にあります。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,3 です。
問127
表は、福岡県の久山町研究において65歳以上の住民826名を15年間追跡し、65歳の時点での高血圧と耐糖能異常が、その後の脳血管性認知症とアルツハイマー病の発症に及ぼす影響について調べたものである。 この結果から導き出される結論として誤っているのはどれか。2つ選べ。 (※ この問題には正解の選択肢(誤りの記述)が3つあるため、そのうち2つを選べば正解となりました。)
a 収縮期血圧140mmHg以上、又は拡張期血圧90mmHg以上、又は降圧薬内服者を(+)とした。 b 空腹時血糖値115mg/dL以上、又は食後2時間以後の血糖値140mg/dL以上、又は随時血糖値200mg/dL以上、又は糖尿病の病歴ありの者を(+)とした。 c 高血圧及び耐糖能異常がいずれも(-)の群を基準群(1.0)として表示した。 * 基準群と比較して有意差あり。相対危険度の95%信頼区間が1.0を含まない場合に有意とした。
1.耐糖能異常は、単独でアルツハイマー病の危険因子となる。 2.耐糖能異常がない場合、高血圧はアルツハイマー病を抑制する因子となる。 3.高血圧及び耐糖能異常は、いずれも単独で脳血管性認知症の危険因子.となる。 4.脳血管性認知症は高血圧の危険因子となる。 5.高血圧はアルツハイマー病に対する耐糖能異常の影響を解析する上で、交絡因子となる。
正解 (2)、(4)、(5)
選択肢 1 ですが 表の1行目と2行目を比較すれば 耐糖能異常の有無により アルツハイマー病の相対危険度に 有意差が見られます。 よって、単独で危険因子となると 考えられます。
選択肢 2 は誤っています。 1行目と3行目を比較すると 高血圧の有無により、相対危険度に 有意差は見られません。
選択肢 3 ですが 表の1行目と2行目 及び 1行目と3行目を比較すれば 高血圧 及び 耐糖能異常 は それぞれ単独で、脳血管性認知症の 危険因子となると考えられます。
選択肢 4 は誤りです。 この表から判断することはできません。
選択肢 5 ですが 交絡因子とは 因果関係「AならばB」という関係を考えた時に AにもBにも影響を与えるような 別の因子Cのことです。
つまり 「耐糖能異常があれば アルツハイマー病に発症しやすい」 という関係において
高血圧ならば耐糖能異常、かつ 高血圧ならばアルツハイマー病に発症しやすい という場合、「高血圧」が交絡因子です。
高血圧であれば耐糖能異常とはいえません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2,4,5 です。
類題 98-126
問128
予防接種に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.予防接種法のA類疾病に対する予防接種のみならず、B類疾病に対する予防接種も、国民の努力義務(勧奨接種)とされている。 2.先天性風疹症候群の予防のために、妊娠する前に予防接種により風疹に対する免疫を獲得しておくことが望まれる。 3.小学校における集団感染を防止するために、すべての小学生を対象にインフルエンザワクチンの予防接種が定期接種として行われている。 4.現在、定期接種において、ポリオに対するワクチンは、弱毒生ワクチンではなく不活化ワクチンが用いられている。 5.麻疹及び流行性耳下腺炎の予防接種には、MRワクチンが用いられている。
正解 (2)、(4)
選択肢 1 ですが 定期接種の対象疾病は A類とB類に分けられます。 A類は、主に集団予防が目的です。 B類は、主に個人予防が目的です。
B類とは 本試験時において具体的には インフルエンザワクチンと 高齢者に対する肺炎球菌ワクチンです。
A類 及び 臨時接種の対象者は 「予防接種を受けるよう努めなければならない」 (努力義務)とされています。
一方、B 類には 接種の努力義務はありません。 以上より、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
選択肢 3 ですが インフルエンザワクチンはB類です。 集団感染予防のために行われてはいません。
選択肢 4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが MRワクチンとは 麻しん・風しん混合ワクチンです。 ちなみに、生ワクチンです。
流行性耳下腺炎とは いわゆるおたふく風邪です。 おたふく風邪ワクチン(生ワクチン)で 予防を図ります。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
類題 102-236237
問129
我が国における性感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.新規HIV感染者の大半は男性であり、異性との性的接触によるものが最も多い。 2.2010年以降、性器クラミジア感染症の患者数は、性感染症の中で淋菌感染症に次いで多い。 3.2010年以降、梅毒の患者数が増加しているが、その治療には抗ウイルス薬ラミブジンが有効である。 4.B型肝炎ウイルスはキャリアとの性行為により感染するため、その予防にはコンドームの使用が有効である。 5.HIV感染症及び梅毒は、いずれも5類感染症の中で全数把握が必要な感染症である。
正解 (4)、(5)
選択肢 1 ですが 新規 HIV 感染者の大半は男性です。 また、同性間の性的接触が最も多いです。 異性間ではありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが クラミジアが一番多いです。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが 梅毒の原因は 梅毒トレポネーマです。細菌です。
治療はペニシリン系薬剤などが 用いられます。 抗ウイルス薬は用いられません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 4,5 です。
類題 99-128
問130
平成26年の特定化学物質等障害予防規則(特化則)の改正により、クロロホルムが特定化学物質に指定され、ベンゼンなどの発がん物質と同様の管理が必要となった。 クロロホルムを扱う作業者の労働衛生管理に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.作業者の健康を管理するため、特化則に基づく定期的な健康診断を実施する必要がある。 2.作業場に排気装置を設置すれば、作業環境中のクロロホルム濃度を定期的に測定する必要はない。 3.クロロホルムの発がん性を踏まえて、作業者の作業記録、健康診断の記録の保存期間は5年間とされている。 4.作業場には、物質名、有害作用、取扱い上の注意、保護具の装着などの掲示を行う必要がある。 5.クロロホルムへの曝露により、作業者の尿中へのメチル馬尿酸の排泄量が増加する。
正解 (1)、(4)
選択肢 1 は、正しい記述です。
選択肢 2 ですが 作業環境の定期的測定が必要です。
もしも排気装置設置で 定期的測定が不要となれば 排気装置が故障した時に 作業者の安全を確保できないため 誤りであると判断できると考えられます。
選択肢 3 ですが 発がん性を踏まえて 記録の保存期間は 30 年間です。 5 年ではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが 尿中メチル馬尿酸は キシレンの曝露指標です。
クロロホルムは 経口、吸入、経皮の いずれのルートで投与されても 急速に吸収されて体内各部に 分布し 未変化体あるいは二酸化炭素として 「呼気」から排泄されます。
よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,4 です。
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