問131
グルクロン酸抱合に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1.グルクロン酸抱合は解毒反応であり、未変化体に比べ活性が高い代謝物が生成されることはない。 2.UDP-グルクロン酸転移酵素は小胞体膜に局在する。 3.グルクロン酸抱合はウリジン二リン酸-β-D-グルクロン酸を補酵素とする。 4.シトクロムP450とは異なり、UDP-グルクロン酸転移酵素に酵素誘導は起こらない。 5.胆汁中に排泄されたグルクロン酸抱合体は、小腸上皮細胞に発現しているβ-グルクロニダーゼによって加水分解された後、アグリコンが再吸収される。
正解 (2)
選択肢 1 ですが モルヒネのグルクロン酸抱合体は 活性が高くなることが知られています。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
選択肢 3 ですが 必要な補酵素は UDP-α-グルクロン酸です。 βーグルクロン酸ではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが フェノバルビタールが グルクロン酸転移酵素を含む 複数種の薬物代謝酵素を誘導することが 知られています。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが グルクロン酸抱合された薬物が 胆汁中に排泄され
「腸内細菌叢」の β-グルクロニダーゼにより加水分解され 脱抱合体(アグリコン)として 腸管から再吸収されることがあります。
小腸上皮細胞に発現している βーグルクロニダーゼによって ではありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2 です。
類題 96-154,100-43
問132
以下に構造を示す2-アセチルアミノフルオレンの代謝と発がんに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1.2-アセチルアミノフルオレンはCYP3A4によりN-水酸化体に代謝される。 2.N-水酸化体はアセチル化されて解毒される。 3.N-水酸化体のアセチル化反応において、窒素原子にアセチル基が付加する。 4.N-水酸化体は硫酸抱合を介して代謝的活性化を受け、ニトレニウムイオンが生成する。 5.N-水酸化体から生じるメチルカチオンが、DNAに共有結合することにより、発がんに関わる。
正解 (4)
アセチルアミノフルオレンは 芳香族アミンの発がん性などの 陽性対照物質として用いられます。 N-水酸化されたのち 硫酸抱合をうけて、活性化されます。
選択肢 1 ですが CYP 3A4 ではありません。
CYP 3A4 で代謝される 発がん性物質といえば アフラトキシン B1 です。 3A4により、エポキシ化されます。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが アセチル化されて代謝活性化されます。 解毒されるわけではありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが N-OH→N-O-COCH3 となります。 すなわち、酸素原子にアセチル基が付加します。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが メチルカチオンが DNAを化学修飾するのは ジメチルニトロソアミンです。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
類題 98-131
問133
アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を示す農薬として、我が国で用いられているのはどれか。2つ選べ。
正解 (2)、(5)
「コリンエステラーゼ阻害」なので 有機リン系 及び カルバメート系を 探すとよいと思われます。
構造中に リン酸エステル 及び カルバモイル基(C=O)ーNHーを 含むものを探すと 選択肢 2,3,5 が正解の候補となります。
選択肢 3 はサリンです。 コリンエステラーゼ阻害作用はありますが 農薬ではないため誤りです。 (F を含む構造なので 見覚えがなく、有機リン系ではないと 判断するのが現実的かもしれません。)
ちなみに選択肢 1 ですが ペンタクロロフェノールです。 かつて除草剤などとして用いられていました。
また、選択肢 4 はグリホサートです。 除草剤に用いられる成分です。
以上より、正解は 2,5 です。
問134
ある野菜から農薬Aが0.020ppm(0.020mg/kg)検出された。この農薬Aの毒性試験データを下に示す。 体重20kgの子供が1日にこの野菜を10g食べたとき、子供が摂取した農薬Aの量は、この農薬の許容一日摂取量(ADI)の何%に相当するか。最も近い値はどれか。1つ選べ。 ただし、安全係数を100とする。
* NOAEL:無毒性量
1.33 2.3.3 3.0.33 4.0.033 5.0.0033 6.0.00033
正解 (4)
慢性毒性試験の中でも 「感受性が高い動物」のデータを使って ADI は算出します。 本問では、イヌのデータを用います。
イヌ 1kg は 1日に 3mg まで摂取OKです。
安全係数が 100 なので ヒト 1kg は、1 日に 0.03mg まで摂取OKです。 体重 20kg であれば、 0.6mg までOKです。 これが ADI となります。
農薬 A は 野菜に 0.020mg/kg すなわち 野菜 1 kg に 0.020 mg 含まれます。 1 kg = 1000g です。
であれば、野菜 10g であれば 野菜 10g に 0.0002 mg 農薬が含まれます。
以上より (0.0002/0.6) × 100 が求める % です。
0.02/0.6 =2/60 =1/30 ≒ 0.033 です。
従って、正解は 4 です。
問135
表は、放射性物質131I、134Cs、137Cs及び90Srの物理学的半減期並びに成人における生物学的半減期を示している。 これらの放射性物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.131Iは甲状腺、134Cs及び137Csは骨、90Srは筋肉組織に蓄積しやすい。 2.生物学的半減期は、壊変により親核種の放射能が半分になるまでの時間である。 3.乳児や幼児における131Iの生物学的半減期は、表に示した成人の半減期より短い。 4.物理学的半減期の値より、32日後における131Iの放射能は約4分のlになる。 5.実効(有効)半減期は、134Csに比べて137Csの方が長い。
正解 (3)、(5)
選択肢 1 ですが Cs と Sr の蓄積部位が逆です。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが 生物学的半減期とは だんだん「代謝」を受け 体外へ排出され 放射能が半分になるまでの時間です。
「壊変」による時間は 物理学的半減期です。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが 131I の物理学的半減期は 8 日とあります。 8 日が 1半減期 (放射能が半分になるまでの時間)なので 32 日は 4 半減期です。
つまり32日後には 半分の半分の半分の半分=1/16 には減少しています。 (生物学的にも代謝されるので 更に少なくなると考えられます。)
よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。 生物学的半減期が同じですが 物理学的半減期が圧倒的に 137Cs の方が長い点から判断できます。
以上より、正解は 3,5 です。
参考 物理まとめ 1-4 3)、薬剤学3-1 6)
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