問170
腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.一般に、通常成人の腎血流量は100~130mL/minである。 2.糸球体ろ過は、加圧ろ過であり、毛細血管内圧がボーマン嚢内圧よりも高いために起こる。 3.サリチル酸は、尿がアルカリ性になると尿細管での再吸収が増加し、その腎クリアランスは小さくなる。 4.パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って大きくなる。 5.尿細管において再吸収を受けない薬物の血中濃度が定常状態にある時、尿中の薬物濃度は血漿中の非結合形薬物濃度に比べて高くなる。
正解 (2)、(5)
選択肢 1 ですが 約 1L/分、つまり 1000mL/分です。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
選択肢 3 ですが 中和反応がおきやすくなると イオン形が増えるので 再吸収されにくくなると考えられます。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが パラアミノ馬尿酸は 代表的(能動的)分泌を受ける物質です。 ある程度濃度増加すると飽和現象が見られます。
つまり、腎CLが 血漿中濃度の増加に伴い ずっと大きくなるわけではありません。 従って、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 2,5 です。
問171
経口投与時において、薬物Aの体内動態に薬物Bの併用が及ぼす影響として正しいのはどれか。2つ選べ。
正解 (1)、(4)
選択肢 1 は、正しい記述です。 ニューキノロン+金属イオンによる 相互作用です。
選択肢 2 ですが オメプラゾールの胃酸抑制作用により イトラコナゾールの溶解性が減少し 血中濃度が減少することがあります。 肝取り込みの阻害ではありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが メトクロプラミドの作用により 胃内容排出速度が上昇します。 その結果、吸収速度が上昇します。 尿細管分泌の阻害ではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。 フェブキソスタットが キサンチンオキシダーゼを阻害することで メルカプトプリンの代謝を阻害します。
選択肢 5 ですが シクロスポリンにより OATP1B1 が阻害されることで ピタバスタチンの肝臓への取り込みが減少し、その結果血中濃度が上昇します。 代謝の亢進では、ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,4 です。
参考 薬理 1-1 6)
問172
各グラフの実線は、肝でのみ消失する薬物を経口投与したときの血中濃度推移を表す。 肝固有クリアランスが2倍に増加したときの血中濃度推移(破線)を表す最も適切なグラフはどれか。1つ選べ。 ただし、この薬物の肝での消失は血流律速で、well-stirred modelに基づくものとする。
正解 (4)
血流律速であるため 言い換えると 肝臓の代謝能力は大きい ということです。 これは抽出率 Eh が大きいと 言い換えることができます。
「経口投与」においては 肝固有クリアランスが増加するとは 初回通過効果の増大と 読み替えることができます。 この結果、Cmax は低下します。 つまり、正解は 3 or 4 です。
一方 血流律速なので、肝クリアランスは 特にかわりません。 クリアランスが変わらないので ke も変化せず 半減期もそれほど変化しないはずです。
以上より 適切なグラフは 4 と考えられます。
問173
ある薬物100mgを被験者に急速静脈内投与した後に血中濃度及び尿中排泄量を測定したところ、未変化体の血中濃度時間曲線下面積(AUC)は1.0mg・h/L、代謝物の尿中総排泄量は20mg(未変化体換算量)であった。 一方、この薬物200mgを同一患者に経口投与したときのAUCは0.8mg・h/Lであった。 この薬物の体内動態の説明として誤っているのはどれか。1つ選べ。 ただし、この薬物は肝代謝及び腎排泄でのみ消失し、代謝物は全て尿中に排泄されるものとする。また、体内動態は線形性を示し、肝血流速度は80L/hとする。
1.生物学的利用率は40%である。 2.全身クリアランスは100L/hである。 3.静脈内投与後の未変化体の尿中排泄率は80%である。 4.肝抽出率は25%である。 5.経口投与された薬物のうち、門脈に移行する割合は75%である。
正解 (5)
選択肢 1 は、正しい記述です。 静脈投与で 100mg → AUC 1.0 だから 静脈投与で 200mg なら、AUC 2.0 です。
一方 経口投与で 200mg の時、AUC 0.8 と 問題文からわかります。
よって、生物学的利用率は 0.8/2.0 × 100 = 40 % です。
選択肢 2 は、正しい記述です。 CL = D/AUCiv です。 従って、100 mg/1.0(mg・h/L) = 100 L/h です。
選択肢 3 は、正しい記述です。 静脈投与で 100mg →肝代謝を受けて排泄された代謝物が 20mg 相当 →未変化体で排泄されたのが 80mg となります。 従って、 80 % です。
選択肢 4 は、正しい記述です。 肝抽出率は Eh=CLh/Qh です。 すなわち、肝クリアランス/肝血流量 です。
全身クリアランスが 100 で これが肝クリアランス+腎クリアランスです。 100mg 投与して、20mg が代謝を受けているのだから 肝クリアランスが 20 とわかります。 従って、Eh = 20/80 × 100 = 25% です。
選択肢 5 ですが、これが正しいとすると 経口投与 200mg → 門脈移行 150mg →肝抽出率 25 % だから、120mg が肝臓から体循環へ流入します。 これは言い換えれば、 120mg 静脈注射したのと同じことです。 100mg 静脈注射で、AUC が 1.0 だったので 120mg の場合、 AUC が 1.2 となってしまいます。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 5 です。
問174
固形製剤中における医薬品の分子集合体の性質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.結晶多形間では、結晶構造は異なるが真密度は等しい。 2.医薬品の結晶形は変化せず結晶表面に水分が吸着したものを水和物という。 3.非晶質(アモルファス)状態の医薬品を高湿度下に保存したとき、水分の収着によって結晶化することがある。 4.シクロデキストリンによる包接化には、医薬品の安定性を改善する効果はない。 5.医薬品を分子状態で水溶性高分子に分散させた粉体から医薬品を溶出させるとき、医薬品のみかけの溶解度が過飽和を示すことがある。
正解 (3)、(5)
選択肢 1 ですが 結晶多形とは 同一化学物質で、結晶構造の 異なるもののことです。
密度、融点、溶解度などの 物理化学的性質が変化します。 真密度が等しいとはいえません。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが 水和物とは 水分子を取り込んだ結晶です。 「表面に吸着」ではありません。
選択肢 3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが アルプロスタジルアルファデクスなど 医薬品の安定性を改善した例があります。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 3,5 です。
参考 製剤学 1-3 5)
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