問192-193
医師から「2型糖尿病患者に脂質異常症治療薬Aを投与した際の、動脈硬化性疾患に対する予防効果(心血管疾患予防)について教えてほしい」と問合せがあった。 薬剤師が文献調査をした結果、動脈硬化性疾患の既往歴がない2型糖尿病患者(40~75歳)を、「A投与群」又は「A非投与群」の2群に無作為に割付し、心血管死、脳血管障害、急性冠症候群などの動脈硬化性の心血管イベントの発症率を比較した論文を得ることができた。 平均追跡期間は5年で、図に示した結果が得られている。
問192
得られた論文の批判的吟味に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.「情報の批判的吟味」はEBM実践のプロセスの最初のステップである。 2.臨床研究の手法が正しかったのか、得られた結果が信用できるのかといった研究成果の正確度や再現性について、外的妥当性を評価する。 3.この図の評価項目は、真のエンドポイントを用いていると考えられる。 4.この図から、ハザード比の95%信頼区間が1を挟んでいないこと及びp値から、両群間に統計学的に有意な差が見出されたといえる。 5.この図から、A投与群はA非投与群に比べ心血管イベントの発症リスクを81%減少させたと判断できる。
正解 (3)、(4)
選択肢 1 ですが EBM とは evidence - based medicine の略です。 「根拠に基づいた医療」と訳されます。
実践手順としては 1:問題の定式化 →2:情報の収集 →3:情報の批判的吟味 →4:患者への適用 →5:1~4の step の評価 という流れをとります。
よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが 記述は「内的妥当性」の評価についてです。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は、正しい記述です。 動脈硬化性疾患に対する予防効果を知りたい目的で この論文のエンドポイントが 動脈硬化性の心血管イベント発症率なので 真のエンドポイントを用いていると考えられます。
また、ハザード比が 0.81 とは 心血管イベントが 19% 減少した ということを意味します。
とはいえ、統計学的にこの値は誤差を含むので 95 % の確率で ハザード比が0.69~0.95 の間に入ります。 つまり 95 % の確率で 心血管イベントが 31%~5% 減少しており 統計学的に有意な差が見出されたといえます。
p 値は たまたま今回の実験の差が出る確率です。 p = 0.011 とあるから たまたまこれだけ心血管イベント発症率に差が出るのは 1.1% ということです。 やはり、統計学的に見て有意な差といえます。
選択肢 5 ですが さきほどの解説から明らかに誤りです。 イベント減少は 19 % です。
以上より、正解は 3,4 です。
問193
前問のデータ解析方法に関する文中の( )に入る適切な語句はどれか。1つ選べ。
心血管イベント発症までの時間曲線をカプラン・マイヤー法で推定し、( )を用いてハザード比とその95%信頼区間を推定した。
1.ログランク検定 2.Kruskal-Wallis検定 3.Cox回帰分析 4.ロジスティック回帰分析 5.重回帰分析
正解 (3)
選択肢 1 ですが ログランク検定は カプラン・マイヤー法で推定した後 2群の生存曲線に差があるかどうかを 推定する方法の一つです。 P値が得られます。
選択肢 2 ですが クラスカル・ウォリス検定は 「3つ以上のグループ間」に差があるかどうか 判定する際に用いる検定手法です。
選択肢 3 は、正しい記述です。 ハザード比や、95%信頼区間により 要因の影響の評価ができる手法です。
選択肢 4 ですが ロジスティック回帰とは 二値変数(好き、嫌い など)に対する 回帰分析のことです。 結果として、オッズ比などが得られます。
選択肢 5 ですが 重回帰分析とは 回帰分析の、変数が増えた場合です。
回帰分析とは y = ax + b のような 1次関数のような形で 2つの変数の関係を評価する分析法です。
重回帰分析は z = ax + by + c のような形で評価する分析法です。 重回帰分析において 扱う x や y は数字です。
以上より、正解は 3 です。 (過去問から2,4,5を切り 1は何か log とか使うのかなぁ、違う気がする、、、 聞いたことないけど 3といった流れが 現実的である印象です。)
類題 99-194,100-81、102-188、102-190 |