問214-215
54歳女性。再発転移性乳がんに対する化学療法としてドセタキセル・シクロホスファミド療法(4コース)を外来通院で行っている。 2コース目で手指のしびれと痛みを訴えたため、牛車腎気丸エキス顆粒とブシ末の処方が追加された。
(追加処方) 牛車腎気丸エキス顆粒 1回2.5g(1日7.5g) ブシ末 1回0.5g(1日1.5g) 1日3回 朝昼夕食前 14日分
問214
追加処方の副作用として注意が必要な症状はどれか。1つ選べ。
1.腰痛 2.むくみ 3.動悸 4.冷感 5.排尿困難
正解 (3)
ブシ末の処方が追加されており 動悸に注意する必要があります。 よって、正解は 3 です。
問215
前問において副作用の主な原因となる生薬は、日本薬局方に収載されている。 この生薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.キンポウゲ科植物ハナトリカブト又はオクトリカブトの葉を基原とする。 2.加工調製(修治)によってブシジエステルアルカロイド含量が増加する。 3.加工調製法が異なると総アルカロイド含量の規格値も異なる。 4.純度試験としてブシジエステルアルカロイド含量の上限値が設定されている。
正解 (3)、(4)
ブシは キンポウゲ科 オクトリカブト/ハナトリカブトの 「塊根」が基原です。
加熱などの加工調整(修治)により 「ジエステルの加水分解」で 毒性が減じることが知られています。 つまり、ジエステル含量が 修治により「減少」します。
以上より、選択肢 1,2 は誤りです。 よって、正解は 3,4 です。
問216-217
45歳女性。4年前、2型糖尿病と診断され、グリメピリド錠とボグリボース錠による薬物治療を開始した。 最近の検査の結果より、主治医は以下の薬剤を追加した。 患者はその処方箋を薬局に持参した。
(処方) イプラグリフロジンL-プロリン錠50mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 14日分
問216
追加されたイプラグリフロジンは、Na+/グルコース共輸送体(SGLT)のうち、SGLT2の選択的阻害薬である。 SGLT及びグルコース輸送体(GLUT)によるグルコース輸送に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.SGLT2は、主に消化管におけるグルコースの吸収に関与する。 2.細胞膜にあるGLUTによるグルコースの輸送は、グルコースの濃度勾配に従う。 3.SGLT2は、Na+の濃度勾配を利用してグルコースを輸送する。 4.GLUTは、グルコースと同様にマルトースを輸送する。 5.血液中のグルコースは、尿細管においてSGLT2によって原尿中に分泌される。
正解 (2)、(3)
SGLTは Na+/グルコース共輸送体です。 代表的二次性能動輸送担体です。
SGLT2 は 腎臓の近位尿細管に局在しています。 グルコースの再吸収の大部分を担っています。
グルコースの再吸収を妨げることで 尿中に糖を排出してしまう というのが SGLT2阻害薬の作用機序です。
一方 GLUTは 促進拡散でグルコースを輸送します。
以上をふまえ 各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが 消化管ではなく、腎臓における再吸収です。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが マルトースは輸送しません。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが 尿細管において、グルコースは再吸収されます。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より 問216 の正解は 2,3 です。
問217
SGLT2選択的阻害薬の副作用として誤っているのはどれか。1つ選べ。 (※ 設問が不明瞭で正解が得られないという理由で、全員正解となりました。)
1.低血糖 2.尿路感染症 3.脱水 4.血圧上昇 5.体重減少
正解 なし
解なしのため、解説もなし。
問218-219
50歳男性。糖尿病(グリメピリド錠にて加療中)。10年前にS状結腸がんⅠ期T1軽度浸潤と診断され、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を受けた。 定期検診のため、かかりつけ医を受診し、以下の投薬指示が出された。
(投薬) 経口腸管洗浄剤(注)1袋(1袋を水に溶解して約2Lとし、溶解液とする)
前日21時より絶食し、検査当日7時より溶解液2Lを1時間あたり約1Lの速度で経口投与。
注:1袋を水に溶解して2Lとした溶解液の電解質濃度はNa+125mEq/L、K+10mEq/L、Cl-35mEq/L、HCO3-20mEq/L、SO4-80mEq/Lである。 pHは約8.0、浸透圧比は約1である。
問218
この経口腸管洗浄剤は等張な電解質溶液であり、大腸の機能を利用した薬剤である。 大腸の機能に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.大腸の粘膜には絨毛があり、そこから栄養の吸収が行われる。 2.大腸では水は吸収されるが、電解質は吸収されない。 3.結腸粘膜での水の吸収は、Na+の能動輸送で生じる浸透圧差により起こる。 4.大腸の運動は、副交感神経の興奮により抑制される。 5.大腸の内容物の肛門側への移送には、ぜん動運動が関わる。
正解 (3)、(5)
選択肢 1 ですが 記述は小腸についてです。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが 大腸は、水分やミネラル吸収を担います。 「電解質は吸収されない」というのは 明らかに誤りです。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが 「抗コリン剤で便秘」を思い出せば 明らかに誤りと判断できます。
大腸の運動が抑制される というのは 便秘につながると連想できます。
そして、抗コリン剤の作用は Ach受容体遮断です。 これは副交感神経系の抑制につながります。
以上より、副交感神経系の抑制で 大腸の運動が抑制されて便秘 とわかります。 副交感神経系の「興奮」で 大腸の運動抑制ではありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、問218 の正解は 3,5 です。
問219
この経口腸管洗浄剤を服用するにあたり、患者に対して薬剤師が服薬指導する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.可能であるならば、1時間あたり2Lの速度で服用してもかまいません。 2.服用しにくい場合でも、他の飲料水と一緒に服用しないでください。 3.2Lの溶解液が多いと感じる場合、1袋を水に溶解して約1Lとし、服用してもかまいません。 4.服用中に腹痛の症状が現れた場合には、服用を中止し、ただちに受診してください。 5.グリメピリド錠は、本剤と同時に服用してもかまいません。
正解 (2)、(4)
選択肢 1 ですが 本剤の投与により 腸管内圧上昇による腸管への負担があるため 短時間での投与は避けます。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。 他成分や香料が混ざると 浸透圧の変化などが起こりうるため避けます。
選択肢 3 ですが 濃度が変わってしまうので不適切です。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが 糖尿病薬については 血糖コントロールの観点から 検査当日の食事摂取後より服用を行います。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
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