問246-247
66歳男性。内科で処方された以下の薬剤(処方1、2)を指示通りに服用していた。 別の病院の泌尿器科を受診し、前立腺肥大症と診断された。 泌尿器科で処方された前立腺肥大症治療薬を自宅で服用したところ、ひどい立ちくらみが起こり救急車で搬送され、血圧降下が原因と診断された。
(処方1) オルメサルタンメドキソミル錠20mg 1回1錠(1日1錠) シタグリプチンリン酸塩水和物錠50mg 1回1錠(1日1錠) アスピリン腸溶錠100mg 1回1錠(1日1錠) ラベプラゾールナトリウム錠5mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 28日分
(処方2) イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg 1回1包(1日2包) 1日2回 朝夕食後 28日分
問246
泌尿器科から処方された前立腺肥大症治療薬で、上記処方薬との併用で強い血圧降下の原因となった可能性があるのはどれか。1つ選べ。
1.ナフトピジル 2.デュタステリド 3.アリルエストレノール 4.セルニチンポーレンエキス 5.ビカルタミド
正解 (1)
処方1はそれぞれ AT1受容体拮抗薬で降圧薬 DPP-4阻害薬、血糖降下薬 血栓予防 PPI 胃酸抑制薬 です。
処方2は EPA製剤で、高脂血症等に用いられます。
前立腺肥大症治療薬の中でも 血圧降下の副作用の原因となりうるものは α1 遮断薬です。 従って、問 246 の正解は 1 です。
ちなみに 問246の他の選択肢ですが 選択肢 2 のデュタステリドは 5α還元酵素阻害薬です。
選択肢 3,5 は 共に抗アンドロゲン薬です。
選択肢 4 は 植物エキス薬です。
問247
この患者で立ちくらみの原因となった薬の作用点はどれか。2つ選べ。
1.アドレナリンα1受容体 2.アンギオテンシンⅡAT1受容体 3.H+,K+-ATPase 4.シクロオキシゲナーゼ 5.アンドロゲン受容体
正解 (1)、(2)
問 247 ですが 立ちくらみの原因は血圧降下 とのことです。 降圧薬であるオルメサルタンの作用点は AT1 受容体です。
また ナフトピジルの作用点は α1 受容体です。
従って、問 247 の正解は 1,2 です。
問248-249
62歳女性。毎日午前1時に就寝し、午前6時に起床する規則的な生活をしている。 最近寝付きが悪い日が続いた。薬局で睡眠改善薬の一般用医薬品を購入して服用したが、改善されなかった。 そこで専門医を受診し、すぐに眠れて朝すっきり起きられるような薬を希望し、睡眠薬が処方されることになった。
問248
処方される薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1.アモバルビタール錠 2.スボレキサント錠 3.エスタゾラム錠 4.フルニトラゼパム錠 5.ゾルピデム酒石酸塩錠
正解 (5)
すぐに眠れて朝すっきりを希望なので 「超短時間作用型」がよいと考えられます。
選択肢 1 ですが アモバルビタールは バルビツール酸系薬です。 あまり最近は睡眠薬として 用いられません。
選択肢 2 ですが スボレキサント(ベルソムラ)は 選択的デュアルオレキシン受容体拮抗薬です。 覚醒を維持するオレキシンの受容体を遮断することで 寝つきをよくし、眠りを維持します。
この睡眠薬の処方もあると思われますが 「すぐに」という希望により適切な薬として ゾルピデムが正解と考えられます。
選択肢 3,4 ですが エスタゾラム、フルニトラゼパムは 共にBz系「中間型」に分類される薬です。
選択肢 5 は、正しい記述です。 ゾルピデムは 非Bz系 超短時間型に分類される薬です。 処方される薬剤として最も適切と考えられます。
以上より 問248の正解は 5 です。
問249
前問の選択肢1~5に挙げた薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.視床下部のヒスタミン作動性神経を抑制する。 2.大脳辺縁系に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAA受容体のGABAに対する親和性を高める。 3.視交叉上核に分布するメラトニン受容体を刺激する。 4.脳幹網様体に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のGABA結合部位に結合し、GABAA受容体の機能を亢進する。 5.オレキシン受容体を遮断することで脳内におけるモノアミン神経系を抑制する。
正解 (2)、(5)
選択肢 1 ですが 抗ヒスタミン作用は 前問選択肢の作用機序として 適切ではありません。
選択肢 2 は、正しい記述です。 Bz系薬の作用機序です。
選択肢 3 ですが メラトニン作動薬といえば ラメルテオン(ロゼレム)です。 前問選択肢の作用機序として 適切ではありません。
選択肢 4 ですが この記述はバルビツール酸系の作用機序との 混同を狙ったものと考えられます。
バルビツール酸系薬は GABA受容体の「バルビツール酸系」結合部位に 結合し、GABAA 受容体の機能を亢進します。 「GABA結合部位」ではありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。 スボレキサントの作用機序です。
以上より、正解は 2,5 です。
問250-251
45歳男性。「最近、肩こりや腰痛がひどく、寝付きも悪く、しだいに朝起きるのがつらくなった。不安感が強く、仕事が楽しいと感じることもなくなり、職場に行くことが苦痛である。」と訴え心療内科を受診し、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。
(処方1) ロラゼパム錠1mg 1回1錠(1日3錠) チザニジン塩酸塩錠1mg 1回1錠(1日3錠) 1日3回 朝昼夕食後 7日分
(処方2) ラメルテオン錠8mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 就寝前 7日分
お薬手帳記載事項(現在服用中の薬剤) ニフェジピン徐放錠40mg(24時間持続) 1回1錠(1日1錠) プラバスタチンナトリウム錠10mg 1回1錠(1日1錠)
問250
薬剤師の服薬指導の内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.眼圧低下が起こることがありますので、物がひずんで見えたり、視野が暗くなったりしたら、すぐに薬剤師に相談してください。 2.立ち上がる際は、ゆっくりと立ち上がり、めまいやふらつきに注意してください。 3.薬の影響で、尿や汗に赤い色がつくことがあります。 4.自動車の運転等の危険を伴う機械の操作は避けてください。
正解 (2)、(4)
ロラゼパムは Bz系抗不安薬です。
チザニジンは α2 受容体作動薬です。 筋弛緩薬として用います。
ラメルテオン(ロゼレム)は メラトニン受容体作動薬です。
ニフェジピンは Ca拮抗薬で降圧薬です。
プラバスタチンは HMG-CoA還元酵素阻害薬です。
降圧薬を飲んでいるため 今回の処方のチザニジンの作用により 血圧低下のおそれがあります。
起立性低血圧に注意してもらうために ゆっくり立ち上がり めまいやふらつきに注意するよう指導します。
また ロラゼパムを毎食後に飲む処方が 初めて出ているため 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の 低下が起こることがあるので 危険を伴う機械の操作を避けるよう指導します。
以上より 問250 の正解は 2,4 です。
問251
1週間後、以下の処方3が追加された処方箋を持って、再度薬局を訪れた。
(処方3) フルボキサミンマレイン酸塩錠25mg 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後 7日分
この患者が服用している薬剤の中に追加薬剤と併用禁忌のものが2つあるため、処方を追加した医師に疑義照会を行った。 併用によって生じる副作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.アドレナリンα2受容体が過剰に刺激され、著しい血圧低下が現れる。 2.Ca2+チャネルが過剰に阻害され、著しい血圧上昇が現れる。 3.γ-アミノ酪酸GABAA受容体が過剰に活性化され、著しい筋弛緩作用が現れる。 4.メラトニン受容体が過剰に刺激され、催眠作用が著しく増強される。 5.HMG-CoA還元酵素が過剰に阻害され、横紋筋融解症の発症リスクが高まる。
正解 (1)、(4)
チザニジン、及びラメルテオンが CYP1A2 により代謝されるので フルボキサミンと併用禁忌です。 フルボキサミンにより CYP1A2 が阻害されるため それぞれの薬効が過剰になることを避けます。
従って、問 251 の正解は 1,4 です。
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