問252-253
76歳女性。狭心症。大学病院の紹介で、自宅近くの診療所を初めて受診し、以下の処方箋を薬局に持参した。 薬剤師が、初回来局である患者の聞き取りを行ったところ、歯科治療中であった。
(処方1) リシノプリル水和物錠10mg 1回1錠(1日1錠) アスピリン腸溶錠100mg 1回1錠(1日1錠) ボノプラザンフマル酸錠10mg 1回1錠(1日1錠) ジルチアゼム塩酸塩徐放カプセル100mg 1回1カプセル(1日1カプセル) 1日1回 朝食後 28日分
(処方2) ロスバスタチンカルシウム錠2.5mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 夕食後 28日分
(処方3) ニコランジル錠5mg 1回1錠(1日3錠) 1日3回 朝昼夕食後 28日分
(処方4) 硝酸イソソルビドテープ40mg 1回l枚(1日1枚) 1日1回 起床時 28日分
問252
薬剤師がこの患者に行う指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.咳が続く時は、医師又は薬剤師に相談してください。 2.テープ剤は、必ず、心臓の真上に貼ってください。 3.抜歯の際は、ボノプラザンフマル酸錠の服用を中止してください。 4.頭痛、立ちくらみが起こることがあるので注意してください。
正解 (1)、(4)
処方1について リシノプリルはACE阻害剤 降圧剤 アスピリン腸溶錠は血栓予防目的の薬 ボノプラザン(タケキャブ)はPPI ※ただし K+競合型というメカニズム。 ジルチアゼムは、Ca拮抗薬。
処方 2~4 ロスバスタチンは HMG-CoA還元酵素阻害薬。 ニコランジル、硝酸イソソルビドは 共に硝酸薬。
狭心症治療中という情報と 符号する処方といえます。
後は低用量アスピリン投与時における 胃潰瘍等の再発抑制のための タケキャブだろうと考えられます。
問252の 選択肢 1 は、正しい記述です。 ACE阻害薬の副作用についての指導として 適切であると考えられます。
選択肢 2 ですが 心臓の薬だからといって心臓付近に貼る必要は ありません。 かぶれないように、毎日貼る場所を変えるよう おすすめします。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが 抜歯の際中止する必要はありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。 血管拡張作用による副作用として 頭痛、立ちくらみがあります。 以上より 問252 の正解は 1,4 です。
問253
処方された薬物のうち、サイクリックGMP(cGMP)依存性プロテインキナーゼを活性化して血管拡張作用を示すのはどれか。2つ選べ。
1.リシノプリル 2.アスピリン 3.ジルチアゼム 4.ニコランジル 5.硝酸イソソルビド
正解 (4)、(5)
硝酸薬を選べという問であると 解釈できます。
硝酸薬を服用すると 体内でNO(一酸化窒素)が遊離されます。 NOは、血管平滑筋のグアニル酸シクラーゼを活性化します。 その結果 GTPからのcGMP生成が促進されます。
そして、cGMP依存性プロテインキナーゼが 活性化されることにより 血管拡張が引き起こされます。
従って 問253 の正解は 4,5 です。
問254-255
42歳女性。食後、みぞおちに差し込むような痛みが続いたため内科を受診し、胆石症による痛みと診断された。
問254
この患者の治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.ウルソデオキシコール酸 2.カモスタットメシル酸塩 3.ランソプラゾール 4.フロプロピオン 5.シメチジン
正解 (1)、(4)
(解説は問255と合わせて、以下に示します。)
問255
前問で適切と考えられた薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.胆石表面のコレステロールをミセル化することで胆石を溶解する。 2.胆嚢からの胆汁排泄を抑制する。 3.カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害することでOddi括約筋を弛緩させる。 4.タンパク質分解酵素を阻害する。 5.H+,K+-ATPaseを阻害する。
正解 (1)、(3)
ウルソデオキシコール酸は コレステロール系胆石の 溶解目的で用いられます。
カモスタットメシル酸は タンパク質分解酵素阻害薬です。 すなわち、消化酵素阻害薬です。 自己消化を防ぐことで膵炎の症状を緩和します。 カモスタットは、主に慢性の膵炎に使用されます。 胆石症には用いられません。
ランソプラゾールは、PPIです。 胆石症には用いられません。
フロプロピオンは 排胆薬です。 COMT :catechol-O-methyltransferase を阻害することにより 胆管平滑筋や Oddi 括約筋を弛緩させます。 胆石の排出を促す目的で用いられます。
シメチジンは H2 ブロッカーです。 胆石症には用いられません。
以上より、 問254 の正解は 1,4 です。 問255 の正解は 1,3 です。
ちなみに 問255 の選択肢 1 が ウルソの作用機序です。
選択肢 3 がフロプロピオンの作用機序です。
選択肢 4 がカモスタットの作用機序です。
選択肢 5 がランソプラゾールの作用機序です。
問256-257
50歳女性。頻尿、排尿痛があり泌尿器科を受診し、尿道炎と診断され処方(処方1)が出された。 同日、歯科にて抜歯し処方(処方2)が出され、近くの薬局にて処方1と2の薬を受け取った。 4日後薬局に電話をかけ、「もらった薬は決められたように飲んでいる。痛み止めは昨日まで7回飲んだ。昨日から太ももが痛く、今日は、手足がだるく、足に力が入らず歩けないため仕事を休んだ。このまま薬を服用していいか。」と相談した。 来局時、お薬手帳は持参しておらず、聞き取りでは「薬の名前は覚えていないが、他の薬局でもらった骨の薬と、コレステロールの薬と、胃薬を飲んでいる。」とのことであった。 そこで、薬剤師が電話口でこの女性にお薬手帳を確認してもらったところ、1年ほど前から他の薬局にて調剤された薬剤を継続服用していることが明らかになった。 薬剤師は薬物相互作用を疑い、直ちに処方医に連絡をした。
(処方1) クラリスロマイシン錠200mg 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後 5日分
(処方2) ロキソプロフェンナトリウム水和物錠60mg 1回1錠 疼痛時 15回分
他の薬局で調剤された薬剤 アルファカルシドールカプセル0.25μg ポラプレジンク口腔内崩壊錠75mg シンバスタチン錠10mg
問256
次の作用様式のうち、この患者が服用した5つの薬物のいずれかの作用機序に当てはまるのはどれか。2つ選べ。
1.核内受容体刺激 2.Gタンパク共役型受容体遮断 3.DNA複製阻害 4.細菌のリボソームでのタンパク質合成阻害 5.タンパク分解酵素阻害
正解 (1)、(4)
(解説は問257と合わせて、以下に示します。)
問257
薬剤師が薬物相互作用の原因と考えた薬剤はどれか。2つ選べ。
1.アルファカルシドールカプセル 2.ポラプレジンク口腔内崩壊錠 3.シンバスタチン錠 4.クラリスロマイシン錠 5.ロキソプロフェンナトリウム水和物錠
正解 (3)、(4)
クラリスロマイシンは マクロライド系抗生物質です。 タンパク合成阻害系の抗菌薬です。
ロキソプロフェンは NSAIDs です。鎮痛薬です。
アルファカルシドールは 活性型ビタミン D3 製剤です。 骨粗しょう症薬です。 ビタミンD受容体は 核内受容体の一種です。
ポラプレジンク(プロマック)は 亜鉛含有胃潰瘍治療剤です。
シンバスタチンは HMG-CoA 還元酵素阻害薬です。
女性の相談は 横紋筋融解症の初期症状と考えられます。
クラリスロマイシンが CYP3A4阻害するため 同酵素で代謝される シンバスタチンの血中濃度を上昇させ 副作用リスクが上がることが知られています。
以上より 問256 の正解は 1,4 です。 問257 の正解は 3,4 です。
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