問174 薬物の溶解及び製剤からの放出に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 ヒグチ (Higuchi) の式において、放出される薬物の累積量は時間の平方根に比例する。 2 ヒクソン−クロウェル (Hixson−Crowell) の式は、粒度分布を持つ粉体の溶解現象を表す式である。 3 固体分散体中の薬物は、その薬物結晶に比べて溶解速度が小さい。 4 安定形の結晶は、準安定形の結晶に比べて溶解速度が大きい。 5 無水物は、水和物に比べて水中での溶解速度が大きい。 ヒグチ(Higuchi)の式とは、以下で表されるような マトリックス型製剤における 薬物の放出量と、時間の間に成り立つ関係式です。 イメージとしては、表面から放出されるため、だんだん放出量が少なくなり 放出量が、時間の平方根に比例する(単純に、時間に比例するわけではない)という 関係式です。 ※Q:単位面積当たりの累積薬物放出量 ※D:拡散定数 ※A:マトリックス中の薬物の全濃度、Cs:溶解度 ※t:時間 一般に、「固体」の薬物がマトリックス全体に分散している時は はるかに溶解度よりもAが大きい、すなわち A>>Cs なので、近似した、以下の式が用いられます。 ヒクソン-クロウェルの式は、溶解における固体薬物の表面積の減少を 考慮に入れた、溶解現象における質量と時間の関係を表す式です。 式は、以下で表されます。 ※W0:固体粒子の初期質量、W:時間tにおける固体粒子の質量 ※k:みかけの溶解速度定数 すなわち、初期濃度が溶解度よりはるかに小さいこと(シンク条件と呼ばれます)と 粒子径一定の粒子が、球状を保ちつつ溶解するという仮定です。 よって、粒度分布を持つ粉体の溶解現象を表す式ではないので、選択肢 2 は誤りです。 難溶性の物質を、固体分散体とすることで、溶解性が飛躍的に向上することが 知られています。 よって、固体分散体中の薬物の方が溶解速度が一般的に速いので 選択肢 3 は誤りです。 準安定系の方が、安定系よりも溶解速度は大きくなります。 (イメージとしては、準安定系の方が、エネルギー的に不安定であり 溶液に解けた状態というのは、とても安定な状態なので より速く安定になりたいため、速く解けるイメージです。 就職活動で、何社も落ちている状態の人(準安定系のたとえ)が どんな所でもいいからとりあえず内定1つもらいたくなる(速く安定したい)心理 と対比すると、記憶しやすいかもしれません。) よって、選択肢 4 は誤りです。 無水物の方が、水和物に比べて水中での溶解速度が大きいです。 (イメージとしては、準安定系と同様に、無水物の方が、エネルギー的に不安定であり 溶液に解けた状態というのは、とても安定な状態なので より速く安定になりたいため、速く解けるイメージです。 補足として、なぜ水和物の方が安定かといえば、溶媒に取り囲まれることによる 溶媒和の影響が大きな要因と考えられます。) 以上より、正解は 1,5 です。 |