問97-41~97-55 解説一覧





問41
経口投与された薬物が吸収される過程はどれか。1つ選べ。

 1 小腸→全身循環系→肝臓→門脈
 2 小腸→門脈→肝臓→全身循環系
 3 小腸→肝臓→門脈→全身循環系
 4 小腸→全身循環系→門脈→肝臓
 5 小腸→門脈→全身循環系→肝臓
 6 小腸→肝臓→全身循環系→門脈


経口投与された薬物は、崩壊・分散→溶解され、主に小腸から吸収されます。小腸から吸収されると、門脈血液→肝臓→全身循環系という流れで吸収されます。まずはじめに肝臓を通過する過程を、初回通過効果と呼びます。

以上より、正解は 2 です。


問42
薬物の生体膜透過機構のうち、トランスポーターを介するが、ATPの加水分解で産生されるエネルギーを必要としないのはどれか。1つ選べ。

 1 単純拡散      2 促進拡散      3 一次性能動輸送
 4 二次性能動輸送   5 膜動輸送

細胞膜を介した物質の輸送形式は大きく受動輸送と能動輸送に分類されます。
受動輸送は、更に単純拡散と促進拡散に分類されます。まとめると以下の表になります。


促進拡散とは、特定の物質を通すチャネルを介した拡散です。これは、トランスポーターを介するが、ATPのエネルギーを必要としないものといえます。

以上より、正解は 2 です。


問43
薬物の血漿タンパク結合の測定に際し、非結合形薬物を分離する方法として、一般的なのはどれか。1つ選べ。

 1 溶媒抽出法    2 塩析法     3 再結晶法
 4 逆浸透法     5 限外ろ過法

薬物の血漿タンパク結合の測定は、以下の図に示した平衡透析法により行われます。


非結合型薬物を分離するとは、ほかのタンパク質や、タンパク質と結合している薬物と分離するということです。
つまり、分子量に基づいて分離するということです。

溶媒抽出法は、溶媒への物質の溶けやすさを利用した分離法です。

塩析法は、主にタンパク質を対象とした分離法で、タンパク質が高濃度の塩溶液に溶解しないことを利用した分離法です。

再結晶法は、溶媒に対する溶解度の差を利用し、不純物を取り除く分離法です。

逆浸透法は、水は通すが、溶解している塩は通しにくいような半透膜を使った、塩の分離法です。

限外ろ過法は、分子ふるい効果に基づき、物質を分子量に基づき分離する分離法です。


以上より、正解は 5 です。


問44
ヒトの肝臓において、薬物の酸化、還元、加水分解、抱合の全ての代謝反応が行われる細胞内小器官はどれか。1つ選べ。

 1 核          2 ゴルジ体     3 小胞体
 4 ミトコンドリア    5 リソソーム

薬物代謝酵素反応に関する酵素は主に、細胞を破砕して遠心分離した際における、ミクロソーム画分と可溶性画分に存在します。

遠心分離による細胞の分画は、以下の図のように行います。


ミクロソーム画分に含まれる代表的な酵素は、シトクロムP450、UDP-グルクロン酸転移酵素です。
それぞれ、第I相、第II相反応に関与します。
ちなみに、ミクロソームとは、細胞小器官でいう小胞体です。

以上より、正解は 3 です。

ちなみに、可溶性画分に含まれる代表的な酵素は、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、その他の転移酵素(硫酸転移、グルタチオンS-転移、N-アセチル転移、メチル転移酵素)です。


問45
主として未変化体のまま体内から尿中に排泄されるのはどれか。1つ選べ。
 1 ゲンタマイシン    2 テオフィリン    3 ニフェジピン
 4 フェニトイン     5 リドカイン


未変化体のまま体内から尿中に排泄されるということは、腎排泄の薬です。

ゲンタマイシンは、アミノグリコシド系抗生物質です。
副作用として腎障害が知られており、腎排泄の薬です。

テオフィリンは、気管支喘息薬です。
CYP1A2により代謝されることが知られており、肝代謝を受ける薬です。

ニフェジピンは、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬です。
CYP3A4により代謝されることが知られており、肝代謝を受ける薬です。

フェニトインは、抗てんかん薬です。
CYP2C9により代謝されることが知られており、肝代謝を受ける薬です。

リドカインはクラスIbの抗不整脈薬です。局所麻酔薬としても用いられます。
CYP3A4により代謝されることが知られており、肝代謝を受ける薬です。

クラスIa,Ib,Icの影響をまとめた図



以上より、正解は 1 です。


問46
水酸化アルミニウムを含む制酸剤とともに経口投与すると、キレートを形成して吸収が低下するのはどれか。1つ選べ。

 1 オメプラゾール    2 ノルフロキサシン    3 フェノバルビタール
 4 リボフラビン     5 ワルファリン


水酸化アルミニウムを含む制酸剤とキレートを形成することで吸収が低下するのは、ニューキノロン系抗菌剤や、一部の抗生物質です。

ノルフロキサシンは、ニューキノロン系の抗菌剤です。DNAジャイレースを阻害することにより、DNA複製を阻害します。

以上より、正解は 2 です。


ちなみに、オメプラゾールは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)です。プロトンポンプを非可逆的に阻害することにより、胃酸分泌を阻害します。代表的な胃・十二指腸潰瘍治療薬の一つです。


フェノバルビタールは、GABA受容体に作用することにより、抗てんかん作用を示します。代表的な抗てんかん薬の一つです。

リボフラビンは、ビタミンB2です。口内炎などに用いられます。

ワルファリンは、ビタミンK拮抗薬です。血液凝固因子合成を阻害することにより、凝固系の働きが抑制され、抗血栓効果を発揮する薬です。


問47
薬物を除去する能力を表すパラメーターで、血流速度と同じ単位を持つのはどれか。1つ選べ。

 1 分布容積
 2 消失半減期
 3 消失速度定数
 4 血中濃度−時間曲線下面積
 5 クリアランス


血流速度の単位は、mL/minです。
分布容積の単位は、L/kg です。
消失半減期の単位は、hです。
消失速度定数の単位は、/hです。
血中濃度-時間曲線下面積(AUC:area under the blood concentration-time curve)の単位は、mg・h/Lです。
クリアランスの単位は、mL/minです。

よって、正解は 5 です。


問48
Fickの第一法則に従う膜透過において、薬物の透過速度と反比例するのはどれか。1つ選べ。

 1 ドナー側(高濃度側)の薬物濃度
 2 レシーバー側(低濃度側)の薬物濃度
 3 薬物の拡散係数
 4 膜の厚さ
 5 薬物の膜への分配係数


Fickの法則は、以下の式で表されます。



※Jは、流束(単位時間あたりに単位面積を通過する量)
※Dは、拡散係数
※dc/dxは、濃度勾配

よって、薬物の透過速度と反比例するのは、dxです。
dxは、膜の厚さを表します。

以上より、正解は 4 です。


問49
o/w型エマルションの性質として、正しいのはどれか。1つ選べ。

 1 水に滴下したとき、水表面で容易に広がる。
 2 スダンIIIを少量添加すると全体が着色される。
 3 w/o型エマルションよりも電気伝導度が小さい。
 4 半透膜を透過する。
 5 水を加えると粘度が増加する。


o/w とは、oil in water です。つまり、全体は基本的には水です。
そのため、水にo/w型のエマルションを滴下すると、水表面で容易に広がります。
よって、正解は 1 です。

ちなみに、スダンIIIは親油性の染色剤です。そのため、o/w型エマルションに滴下すると、弾かれるため、全体は着色されません。

水と油では、水の方が電気伝導度が大きいため、o/wの方が電気伝導度は大きいです。

エマルションは、コロイド粒子の一種です。コロイド粒子は、半透膜を通過することはできません。

水を加えると、粘度は減少します。


問50
沈降法によって粒子径を求めるときに用いる式はどれか。1つ選べ。

 1 コゼニーカーマン式    2 ラングミュアー式    3 BET式
 4 ストークス式       5 ブラッグ式

沈降法とは、粒子の沈降速度を測定し、ストークス式により粒子径を算出する方法です。
ストークス式とは、以下の式です。



※ρは、固体の密度です。ρ0は、液体の密度です。
※ηは、溶液の粘度です。ネバネバした液体ほど、沈降は遅いイメージです。
※dは粒子の直径です。2乗に比例します。粒子が大きいほど速く沈むイメージです。

以上より、正解は 4 です。

ちなみに、コゼニーカーマン式とは、粉体層の中を流体が通過する時の抵抗の大きさを測定することにより、粒子の比表面積を測定する時に用いる式です。以下の式です。




※μ0は、通過させる気体の平均流速
※⊿pは、圧力損失、gc,kは定数。
※μが流体の粘度、Lが通過させる層の長さ
※εは、粉体の空隙率
※S0は、比表面積

ラングミュア-式とは、単分子層の吸着量に関する方程式です。以下の式です。


※fは最大吸着量に対する吸着量の割合
※aは定数、pは圧力

BET式とは、ラングミュア-式を多分子層にまで拡張させた、吸着量に関する方程式です。以下の式です。


但し

※Vは、吸着気体の堆積。Vmは、1層覆うのに必要な気体の体積
※Cは吸着熱及び液化熱をパラメータとして含む、系により定まる定数。
※pは気体の圧力。psは、飽和蒸気圧


ブラッグ式とは、入射X線による回析がおこる条件を表す式のことです。以下の式です。


※dは、結晶面の間隔
※nは、回析の次数
※λは、波長


問51
直接打錠用の結合剤はどれか。1つ選べ。

 1 結晶セルロース
 2 ヒプロメロース
 3 ショ糖
 4 ポビドン
 5 ヒプロメロースフタル酸エステル


結合剤として用いられるのは、結晶セルロース、及びヒプロメロースです。
そして、直接打錠用の結合剤とは、結晶セルロースのことです。

以上より、正解は 1 です。

(脇道の話です。1962年に結晶セルロースがアメリカンビスコース社の研究者によって報告されたのだが、当初は用途が解らず、ダイエタリー・フード素材等の用途探索をしていたそうです。そこで、丁度スミスクライン社の研究者が直接打錠の研究をしており、試してみたところ、直接打錠用素材として素晴らしい機能を持つことがわかり、日本にも輸入され、発達したという歴史があるそうです。  

参考)医薬品製剤化方略と新技術 より 
※google books により、本文が読めます。)

選択肢の中で、他に添加剤として用いられるのは、ボビドンと、ヒプロメロースフタル酸エステルです。

ボビドンは、ポリビニルピロリドンの略称です。水やアルコールに溶解し、湿式で顆粒を調製する場合の結合剤として用いられます。また、懸濁化剤としても用いられます。

ヒプロメロースフタル酸エステルは、代表的な腸溶性コーティング剤です。


問52
空気で吹き上げた原料粉体に結合剤溶液を噴霧して造粒する方法はどれか。1つ選べ。

 1 噴霧乾燥造粒法    2 撹拌造粒法    3 流動層造粒法
 4 押出し造粒法     5 乾式造粒法



造粒法は大きく乾式造粒法と湿式造粒法に分類されます。
結合剤溶液を加えていることから、本問題における造粒法は、湿式造粒法です。


選択肢 1 の噴霧乾燥造粒法は、原料粉体を
適当な溶媒で溶解し(ここで結合剤を入れておくこともあります。)
その溶液又は懸濁液を(スラリーと呼びます)
噴霧し、乾燥室で乾燥させる、という方法です。

原料に、結合剤を噴霧するわけではありません。


選択肢 2,4 の造粒法は、名前の通り
色々混ぜて撹拌したり、ぎゅっと押し出して造粒する方法です。

原料に、結合剤を噴霧するわけではありません。



選択肢 5 の乾式造粒法は、乾式造粒法の一種です。



ちなみに、「結合剤を噴霧する」造粒法は
転動造粒法もしくは流動層造粒法です。



以上より、
正解は 3 です。

問53
点眼剤に適用される日本薬局方一般試験法はどれか。1つ選べ。

 1 アルコール数測定法      2 製剤均一性試験法  
 3 エンドトキシン試験法     4 発熱性物質試験法 
 5 無菌試験法

点眼剤に適用される日本薬局方一般試験法は、鉱油試験法、不溶性微粒子試験法、不溶性異物検査法、無菌試験法です。

よって、正解は 5 です。

ちなみに、アルコール数測定法は、チンキ剤又は、その他のエタノールを含む製剤について行われます。

製剤均一性試験法は、質量偏差試験法と、含量均一性試験法をあわせたものです。
錠剤やカプセル剤などについて行われます。

エンドトキシン試験法は、カブトガニの血球抽出成分より調製されたライセート試薬を用いて、グラム陰性菌由来のエンドトキシンを検出又は定量する方法です。
注射剤などについて行われます。

発熱性物質試験法は、健康なウサギに試料溶液を静脈注射し、投与後3時間にわたり体温を測定し、異常な体温上昇を示さないことを確認する試験法です。
エンドトキシン試験法が適用できない注射剤などについて行われます。


問54
薬物の経口徐放性製剤化の目的として、誤っているのはどれか。1つ選べ。

 1 薬効の持続
 2 コンプライアンスの改善
 3 副作用の軽減
 4 肝初回通過効果の回避
 5 血中濃度の急激な上昇の回避


薬物の経口徐放性製剤化により、血中濃度を有効域で、長時間保つことができます。これにより、1日数回だった服用を、1日1回といった服用にすることが可能になります。これは薬効の持続及び、服薬コンプライアンスの改善を可能にします。

さらに、血中濃度の急激な上昇を、徐放化によって避けることで、副作用の軽減を図ることもできます。

しかし、経口投与である以上、肝初回通過効果は不可避です。

以上により、正解は 4 です。


問55
脂質二分子膜から成る微粒子はどれか。1つ選べ。

 1 リピッドマイクロスフェア    2 リポソーム
 3 高分子ミセル          4 デンドリマー
 5 シクロデキストリン

リピッドマイクロスフィアとは、大豆油をレシチンで乳化した、o/w型のエマルションである脂肪微粒子のことです。

リポソームとは、脂質二重膜構造の小胞のことです。

高分子ミセルとは、親水性のポリマーと、疎水性のポリマーのブロック共重合体(Aを親水性、Bを疎水性のモノマーとした時に、A-A-A-A-B-B-B-Bのような分子)によるミセルのことです。

デンドリマーとは、中心から規則的に枝分かれした構造を持つ、枝状高分子のことです。

シクロデキストリンとは、環状オリゴ糖のことです。糖の分子がいくつか連なって環状になった分子のことです。

以上より、正解は 2 です。