問26 インスリン受容体はどれに分類されるか。 1つ選べ。 1 Gq タンパク質共役型受容体 2 Gi タンパク質共役型受容体 3 イオンチャネル内蔵型受容体 4 酵素内蔵型受容体 5 核内受容体 インスリン受容体は、細胞表面に存在します。 ほとんどの細胞に発現していますが、その数は、組織により様々です。 インスリン受容体は4量体タンパク質です。 インスリンが受容体α-サブユニットに結合すると、膜貫通領域の構造が変化します。 すなわち、細胞内β-サブユニットにおけるチロシンキナーゼが活性化され、受容体の一部のチロシン残基をリン酸化します。 その結果、細胞内において、IRS(insulin receptor substrate)タンパクなどのチロシン残基がリン酸化され それを認識する、SH2ドメインを持つPI-3キナーゼ等のタンパク質が結合し、情報伝達が様々な経路を通じて下流へと 伝わると考えられています。 その結果として、糖の取り込みの促進などが引き起こされます。 このような受容体は、酵素内蔵型受容体と呼ばれます。 問27 プロプラノロールは、気管支ぜん息患者において気管支狭窄を起こすことがある。 この作用機序はどれか。 1つ選べ。 1 ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断 2 アドレナリンα1 受容体遮断 3 アドレナリンβ2 受容体遮断 4 ヒスタミン H1 受容体遮断 5 ロイコトリエン受容体遮断 プロプラノロールは、β遮断薬です。 β遮断薬の、それぞれの代表的な臓器への作用は以下の通りです。 眼→縮瞳 心臓→収縮力低下 無理をさせない効果がある。狭心症に薬として用いられる。 気管支平滑筋→収縮 喘息患者には、禁忌です。 泌尿器→尿道を引き締める 尿を溜める方に作用します。 以上より、正解は 3 です。 問題へ戻る 問28 コリンエステラーゼを可逆的に阻害するのはどれか。 1つ選べ。 1 アトロピン 2 カルバコール 3 エドロホニウム 4 ブチルスコポラミン 5 プラリドキシム(PAM) アトロピンは、抗コリン薬です。 ムスカリン受容体に結合することで、受容体を遮断する薬です。 コリンエステラーゼには作用しません。 カルバコールは、コリン作動薬の一つです。 コリンエステラーゼに分解されにくいという特徴があります。 エドロホニウムは、持続時間の短い、コリンエステラーゼ阻害薬です。 重症筋無力症の診断に使用されます。 ブチルスコポラミン(ブスコパン)は、4級アンモニウム塩である、抗コリン薬です。 4級アンモニウム化することにより、血液脳関門の透過性を低め、中枢性の副作用を軽減した薬物です。 胃腸など、内蔵のけいれん性の痛みをとるお薬です。 プラリドキシムは、コリンエステラーゼ賦活薬です。 コリンエステラーゼ阻害薬による中毒の、特異的解毒剤として用いられます。 問題へ戻る 問29 リドカインの局所麻酔作用発現に関わる作用点はどれか。 1つ選べ。 1 ヒスタミン H1 受容体 2 セロトニン 5-HT 3 受容体 3 電位依存性 Na+ チャネル 4 アデニル酸シクラーゼ 5 GABAB 受容体 リドカインは、局所麻酔薬として用いられます。 又、抗不整脈薬としても用いられます。 作用機序は、Na+チャネル遮断です。 神経細胞の興奮を妨げます。 問題へ戻る 問30 ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断により 抗パーキンソン病作用を示すのはどれか。 1つ選べ。 1 アマンタジン 2 トリへキシフェニジル 3 セレギリン 4 エンタカポン 5 ブロモクリプチン アマンタジンは、ドパミン放出を促進することで作用し パーキンソン病の症状改善に用いられます。 又、A型インフルエンザ治療薬としても用いられます。 トリヘキシフェニジルは、抗コリン薬です。 ドパミン作動性神経と、コリン作動性神経のバランスを整えることで 抗パーキンソン病作用を示します。 セレギリンは、MAO-B阻害薬です。 ドパミン代謝酵素であるMAO-Bを阻害することにより作用し パーキンソン病の症状改善に用いられます。 エンタカポンは、COMT阻害薬です。 パーキンソン病治療薬であるレボドパと併用されます。 レボドパの抹消における代謝を阻害することで、中枢移行を助けることで 間接的な、パーキンソン病の症状改善に用いられます。 ブロモクリプチンは、麦角アルカロイドです。 ドパミン作動薬です。パーキンソン病治療薬として用いられます。 問題へ戻る 問31 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害により 抗うつ作用を示すのはどれか。 1つ選べ。 1 パロキセチン 2 ミアンセリン 3 アモキサピン 4 トラゾドン 5 ミルナシプラン パロキセチン(パキシル)は、SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)です。 SSRIとしては、他に、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、セルトラリン(ジェイゾロフト) などがあります。 セロトニンの再取り込みを選択的に阻害することにより、抗うつ作用を示します。 よく効いてくるまでに2~3週間以上かかることがあります。 又、飲み始めに吐き気がおきることがあります。この吐き気は、たいてい2週間ほどで軽くなってきます。 自己判断で服用を中止しないようによく指導する必要があります。 ミアンセリン(テトラミド)は、四環系抗うつ薬です。 四環系抗うつ薬としては、他に、マプロチリン(ルジオミール)、セチプチリン(テシプール) などがあります。 三環系抗うつ剤と比べて、抗コリン作用が弱いことが特徴です。 アモキサピン(アモキサン)は、三環系抗うつ剤です。 三環系抗うつ剤としては、他に、イミプラミン(トフラニール)、クロミプラミン(アナフラニール) アミトリプチリン(トリプタノール)などがあります。 抗コリン作用が強いことが特徴です。 トラゾドン(デジレル)は、非三環系抗うつ剤です。 セロトニン受容体の拮抗作用に加え、弱い取り込み阻害作用を示します。 ミルナシプラン(トレドミン)は、SNRIです。 セロトニン、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。 問題へ戻る 問32 ジゴキシンの強心作用の機序はどれか。1 つ選べ。 1 アドレナリンβ1 受容体刺激 2 Na+-K+-2Cl-共輸送系阻害 3 Na+,K+-ATPase 阻害 4 ホスホジエステラーゼⅢ阻害 5 アデニル酸シクラーゼ活性化 ジゴキシンは、強心配糖体です。 Na+、K+-ATPase を阻害することにより、心筋収縮力増強作用を持つ心不全薬です。 ちなみに、β1刺激薬は、ドブタミン、デノパミンなどです。 β1受容体を刺激することにより、Gsタンパク質を介してアデニル酸シクラーゼが活性化されます。 それにより、細胞内cAMPが増加することにより、心筋収縮力が増強されます。 Na+-K+-2Cl-共輸送系阻害薬は、ループ利尿薬で、フロセミドなどです。 降圧薬として用いられます。 ホスホジエステラーゼIII阻害薬は、ミルリノンなどです。 心筋と血管平滑筋のホスホジエステラーゼIIIという、cAMP分解酵素を 選択的に阻害することで、細胞内cAMPを増加させることで、強心薬として作用します。 アデニル酸シクラーゼ(AC)活性化は、コルホルシンダロパートです。 ACとは、cAMPを合成する酵素です。 AC活性化により、細部内cAMPを増加させることで、心筋収縮力が増強されます。 以上より、正解は 3 です。 問題へ戻る 問33 血管平滑筋のアドレナリンα1 受容体の選択的遮断により、降圧作用を示すのはどれか。 1 つ選べ。 1 べタキソロール 2 ロサルタン 3 フェントラミン 4 プラゾシン 5 クロニジン ベタキソロールは、β遮断薬です。 β1選択的遮断薬です。 心臓を休ませる作用があり、高血圧や狭心症などに用いられます。 ロサルタンは、ARBです。 降圧薬です。 フェントラミンは、α受容体拮抗薬です。 非選択的α遮断薬です。 褐色細胞腫の診断に用いられる薬です。 褐色細胞腫とは、副腎髄質などから発生する カテコラミン産生腫瘍です。 腫瘍細胞において、カテコラミンが過剰産生することで、各種の症状が発症します。 代表的な症状は、高血圧です。 プラゾシンは、α遮断薬です。 α1受容体を選択的に遮断します。 降圧薬、及び前立腺肥大による排尿障害に用いられます。 クロニジンは、α2刺激薬です。 ノルアドレナリンの分泌を抑制することで、降圧薬として作用します。 以上より、正解は 4 です。 問題へ戻る 問34 急性膵炎の治療に用いられるタンパク質分解酵素阻害薬はどれか。1 つ選べ。 1 プロパンテリン 2 ウルソデオキシコール酸 3 フロプロピオン 4 ニザチジン 5 ナファモスタット プロパンテリンは、抗コリン薬です。 胃腸など、内蔵のけいれん性の痛みをとるお薬です。 ウルソデオキシコール酸(ウルソ)は、胆汁の流れをよくする薬です。 又、肝臓の炎症を軽減するなどの、肝機能改善作用もあります。 フロプロピオンは、COMT阻害薬です。 COMTは、カテコラミン分解酵素です。 ノルアドレナリンの分解を防ぎ、β受容体を介して、Oddi括約筋という 十二指腸の下の方における、総胆管及び膵管の出口の筋肉を 弛緩させます。 その結果、胆汁や膵液の十二指腸への排出を促進します。 結果として、胆道や膵臓のけいれん性の痛みをとります。 ニザチジン(アシノン)は、ヒスタミン受容体拮抗薬です。 胃酸の分泌を抑えます。 ナファモスタットは、タンパク質分解酵素阻害薬です。 急性膵炎の治療に用いられます。 以上より、正解は 5 です。 問題へ戻る 問35 ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)αを刺激するのはどれか。 1 つ選べ。 1 フルバスタチン 2 エゼチミブ 3 コレスチラミン 4 フェノフィブラート 5 コルヒチン フルバスタチン(ローコール)は、スタチン、すなわちHMG-CoA還元酵素阻害剤です。 コレステロールの生合成における律速段階である、メバロン酸を合成する酵素を 阻害することにより、コレステロールの合成を抑制します。 脂質異常症に対して用いられます。 横紋筋融解症に注意が必要な薬です。 初めて飲む人には、初期症状である、筋肉痛や、赤みがかった尿がでたら、直ちに 服用を止め、受診することを伝える必要があります。 エゼチミブ(ゼチーア)は、小腸コレステロールトランスポーター(NPC1L1)阻害薬です。 主にコレステロール値を下げますが、中性脂肪の低下作用もあります。 コレスチラミンは、陰イオン交換樹脂です。 胆腸管内で、胆汁酸と結合することにより、胆汁性コレステロールの再吸収をおさえ、排出を促進します。 中性脂肪は下げません。 フェノフィブラート(リピディル)は、フィブラート系高脂血症治療薬です。 核内受容体であるPPARα(peroxisome proliferator - activated receptor)に結合することで PPARαを活性化し、様々な作用を介して、主に中性脂肪を低下させます。 コルヒチンは、対症療法に用いられる、痛風治療薬です。 微小管タンパクである、チュブリンに結合することで、細胞分裂を抑制させます。 主に好中球に作用し、抗炎症作用を示します。 問36 トラネキサム酸の止血作用の機序はどれか。1 つ選べ。 1 トロンビン阻害 2 アンチトロンビンⅢ阻害 3 組織因子阻害 4 第Ⅹa 因子阻害 5 プラスミン阻害 トラネキサム酸は、プラスミノーゲンや、プラスミンのリシン結合部位に結合します。 その結果、プラスミンによるフィブリン分解を阻害することで、止血作用を示します。 ちなみに、フィブリンが、止血を担う繊維状タンパク質です。 プラスミンが、フィブリンを分解する酵素です。 以上より、正解は 5 です。 問37 シクロスポリンの免疫抑制作用の機序はどれか。 1 つ選べ。 1 カルシニューリンの阻害 2 ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害 3 ピリミジン合成経路の阻害 4 プリン合成経路の阻害 5 インターロイキン-6(IL-6)受容体の遮断 シクロスポリンは、T細胞細胞質内の FK binding protein(FKBP)に結合し カルシニューリンの機能を阻害することで NF-AT(Nuclear factor of activated T-cell)の核内移行を抑制することにより作用します。 NF-ATは、転写因子です。IL-2の分泌を引き起こします。 カルシニューリンの機能阻害とは、より具体的にいうと、Ca2+依存性セリン/トレオニンホスファターゼ活性の阻害です。 問38 セラトロダストの抗アレルギー作用の機序はどれか。 1 つ選べ。 1 ロイコトリエン受容体遮断 2 トロンボキサンA2 受容体遮断 3 シクロオキシゲナーゼ-2 阻害 4 5-リポキシゲナーゼ阻害 5 ホスホリパーゼA2 阻害 セラトロダスト(ブロニカ)は、トロンボキサンA2 受容体拮抗剤です。 即時型及び遅発型喘息反応並びに、気道過敏性の亢進を抑制します。 以上より、正解は 2 です。 代表的な気管支喘息治療薬については を参照してください。 問39 核酸合成を阻害し、抗真菌作用を示すのはどれか。 1 つ選べ。 1 ナイスタチン 2 フルシトシン 3 ミカファンギン 4 ミコナゾール 5 テルビナフィン ナイスタチンは、ポリエン系抗生物質のひとつです。 細胞膜のエルゴステロールと結合し、膜に小孔を作り、殺菌的に作用します。 フルシトシンは、真菌細胞内に取り込まれた後、シトシン脱アミノ酵素により 5-FUとなり、核酸合成の阻害を介して、抗真菌作用を示します。 ミカファンギンは、キャンディン系抗生物質です。 1,3-β-D-グルカンの合成を非競合的に阻害することにより、抗真菌作用を示します。 ミコナゾールは、細胞膜構成成分であるエルゴステロールの合成阻害により 抗真菌作用を示します。 テルビナフィンは、スクアレンエポキシダーゼを選択的に阻害することで 細胞膜構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害し、抗真菌作用を示します。 以上より、正解は 2 です。 問40 閉経後乳がん治療薬レトロゾールの作用機序はどれか。 1 つ選べ。 1 アロマターゼ阻害 2 トポイソメラーゼⅡ阻害 3 ジヒドロ葉酸還元酵素阻害 4 アンドロゲン受容体遮断 5 エストロゲン受容体遮断 レトロゾール(フェマーラ)は、アロマターゼの活性を競合的に阻害することにより アンドロゲンからエストロゲンの生成を阻害します。 その結果、乳がんの増殖を抑制します。 適応は、閉経後乳がんです。 よって、正解は 1 です。 |