問98-101~110 解説一覧



問101

以下の日本薬局方収載医薬品の構造式と化学名の組合せとして、正しいのはどれか。
1つ選べ。


  3 - ( 6 - Methoxynaphthalen - 2 - yl ) propan - 2 - one


  ( 4S ) - 4 - Aminoisoxazolidin - 3 - one




  2 - ( Diethylamino ) ethyl 4- ( butylamino ) benzoate monohydrochloride




  ( 2RS ) - 3 - ( 2-Methoxyphenoxy ) propane-1,2 - diol




選択肢 1 の化合物は、ナブメトンという、NSAIDsの一種です。
正式な化学名は、4-(6-Methoxynaphthalen-2-yl)butan-2-one
です。
よって、選択肢 1 は誤りです。

実際の試験の時には、()の中身を飛ばして、主鎖部分にだけ注目して名前を読むと
選択肢 1 は3-プロパン-2-オンとなっていて
2-オンだから、右端のCからナンバリングして、3番目には何もないから違うんじゃないかなと
考えるとよいと思います。


選択肢 2 の化合物は、サイクロセリンという、抗結核性の抗生物質です。
正式な化学名は、(4R)-4-Aminoisoxazolidin-3-one です。
SではなくRなので、選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 の化合物は、テトラカインという、局所麻酔薬の1つです。
正式な化学名は、2-(Dimethylamino)ethyl 4-(butylamino)benzoate monohydrochloride
です。
Dietylではなく、Dimethylなので、選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 の化合物は、グアイフェネシンという、鎮咳作用を持つ薬です。


以上より、正解は 4 です。





問102

以下の芳香族置換反応のうち、主生成物の構造を正しく示しているのはどれか。
2つ選べ。
ただし、すべての反応は終了後、適切な後処理を施してある。
解説

選択肢1では、-OH基と-CH3基があります。
どちらも o,配向性を示しますが、-OH 基のほうがその影響力はずっと強いです。
よって、選択肢 1 の反応は、-OH 基からみて 位で置換反応が起きているので誤りです。

選択肢 2 について、OHは優れた求核試薬、-Cl は優れた脱離基なので求核置換反応が進行します。
よって選択肢 2 は正解です。

選択肢 3 では、-CH基は o,配向性、-NO基は 配向性を示します。
反応によりニトロ化された位置がちょうどその両方を満たしているので、これは正解です。

選択肢 4 はナフタレンのブロモ化ですが、生成物は 2-ブロモナフタレンではなく 1-ブロモナフタレンです。
ナフタレンの求電子置換反応は 2 位よりも 1 位よりも起こりやすいのですが
それは中間体の共鳴構造からわかります。


 1位への求核置換

    

2位への求核置換

    


上図をみると、1 位の中間体は 5 つのうち 2 つほど、芳香環を保っている構造があります。
一方、2 位の中間体では芳香環が成立しているものが 1 つしかないので、より不安定といえます。
以上より、より安定な 1 位への反応が優先されることになり、選択肢 4 が誤りであることがわかります。


よって、正解は 2,3 です。



問103

AとBはそれぞれ互いに異性体である。以下の反応のうち、主生成物がAになるものはどれか。
2つ選べ。


mCPBA : m-クロロ過安息香酸




二重結合にハロゲン化水素が付加する時は、マルコフニコフ則により
置換基の多い方にハロゲンが付加します。
よって、主成分は A です。


二重結合にハロゲンが付加する時は、anti 付加です。
よって、主成分は B です。


二重結合に Pt 触媒下で H2 を付加する時は、syn 付加です。
よって、主成分は、B です。


二重結合に、m-クロロ安息香酸のような過酸を反応させる時は、syn 付加で、元の立体は
保持されます。
よって主成分は A です。

二重結合に四酸化オスミウムを反応させる時は、syn 付加です。
よって、主成分は B です。


以上より、正解は 1,4 です。


参考) 有機化学まとめました 2-2 2)2-2 3)2-2 4)






問104


解説

選択肢1は、ヒドリド還元反応です。
アルデヒドを還元すると第一級アルコールが生成しますが、この選択肢ではメチル基となっています。
よって、誤りです。

選択肢2は、NaCNを用いて基質にシアノ基(ニトリル基)を導入する反応です。
しかし、選択肢2のようにカルボニル酸素が取れてシアノ基が導入されるわけではなく、
シアン化物イオンによる求核攻撃の結果、カルボニル基はアルコールに変わります。

    

選択肢 3 は、ケトンとアルデヒド間で起こる aldol 縮合であり、この反応式は正しいです。
aldol 縮合については有機化学まとめました 3-5 4) を参照してください。

選択肢 4 は、エステルと Grignard 試薬とのアルキル化反応です。
この反応では、選択肢 4 のように Grignard 試薬が 1 分子反応するのではなく、2 分子反応し第三級アルコールを生成します。
カルボン酸誘導体(エステルなど)を Grignard 試薬との反応は 有機化学まとめました 3-6 4) を参照してください。

選択肢5は、酸無水物に対するアルコールの求核置換反応です。この反応式も正しいです。
カルボン酸誘導体(酸無水物など)の求核置換反応については 有機化学まとめました 3-6 3)を参照してください。


以上から、正解は 3,5 です。






問105


アミンに関する記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。


1 第一級アミンをケトンと反応させると、イミンが生成する。
2 第二級アミンを無水フタル酸と反応させると、フタルイミドが生成する。
3 第三級アミンを酸塩化物と反応させると、カルボン酸アミドが生成する。
4 エチルメチルアミンはAとBの平衡混合物として存在する。



解説

選択肢1について、イミンの合成方法は酸触媒下、アミンとカルボニル化合物との脱水縮合です。
よって、第一級アミンとケトンを用いてイミンを生成するというこの記述は合っています。

選択肢2について、フタルイミドは無水フタル酸と第一級アミン(またはアンモニア)との反応で生成します。
選択肢2では第二級アミンとなっているので、これは誤りです。

選択肢3について、カルボン酸アミドはアミンとカルボン酸エステルを用いた置換反応によって得られます。
実際にはカルボン酸エステルよりも反応性の高いカルボン酸ハロゲン化物を用いることも多いので、
選択肢の酸塩化物という部分は合っています。
しかし、第三級アミンでは置換反応に使える部分(H原子)がないので、置換反応が進行しません。
よって、この選択肢は間違いです。

選択肢4について、エチルメチルアミンは非共有電子対も含めるとN原子が不斉中心となります。
しかし、選択肢4の化合物Aの状態から、3つの置換基が平面に並ぶ中間体を経て、化合物Bの状態に変わることができます。
これを立体反転といい、アミンはこの反転速度が速く、絶えず化合物AとBが行き来しているため、
不斉アミンは一方のエナンチオマーを単離することが難しいです。
よって、選択肢4は正しいです。


以上より、正解は 1,4 となります。






問106

日本薬局方収載医薬品クロルジアゼポキシド (A) と
オキサゾラム (B) に関する記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。 



1 A に炎色反応試験を行うと緑色を呈するのは、A に N-O が含まれるからである。
2 A の合成原料は、C に NH
2OH を作用させて得られるオキシム誘導体である。
3 B に希塩酸を加え、水浴中で 10 分間加熱後冷却して得た液は、芳香族第二級アミンの定性反応を呈する。
4 B は D の第二級アミンとケトンのカルボニル基が縮合して生じるイミニウムを経て合成できる。




炎色反応で緑色を呈するのは、Cl が含まれるからと考えられます。
よって、選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 はその通りの記述です。


Bに希塩酸を加えると、アミド結合部分が加水分解されて
芳香族第一アミンの定性反応を呈すると考えられます。
よって、選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 はその通りの記述です。


以上より、正解は 2,4 です。
(本当の試験では、選択肢 1,3 が明らかな誤りとみつけて
2,4 を消去法で選ぶのが現実的だと思います。)





問107

プロプラノロールは、エナンチオマー間で交感神経のアドレナリンβ受容体遮断作用に差があることが知られている。
プロプラノロールの受容体結合部位との相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。



1 ファーマコフォアでは、三次元的な構造が重要である。
2 側鎖上のイソプロピル基は、結合部位と水素結合を形成する。
3 側鎖上のNHは、結合部位と疎水性相互作用する。
4 側鎖上のOHは、結合部位と水素結合を形成する。
5 エーテル結合の酸素は、結合部位とイオン結合を形成する。



ファーマコフォアとは「特定の生物学的標的との、、、相互作用を確実にし、、、生物学的反応を
引き起こすために必要な、立体的、電子的特徴の集合体」と定義されています。
よって、立体的な構造、すなわち三次元的な構造が重要です。
選択肢 1 はその通りの記述です。


イソプロピル基は、疎水相互作用を担いますが、水素結合は形成しません。
よって、選択肢 2 は誤りです。


側鎖上のNHは、結合部位と水素結合を形成しますが、疎水相互作用は担いません。
よって、選択肢 3 は誤りです。

(選択肢 2 と 3 は、記述が入れ替わっていると思われます。)


OHは、水素結合を形成します。
選択肢 4 はその通りの記述です。


エーテル結合の酸素は、イオン結合を形成することはありません。
よって、選択肢 5 は誤りです。



以上より、正解は 1,4 です。






問108

生薬の抽出液Aに対する確認試験にはBが用いられる。
この試験で検出される成分Cとして正しいのはどれか。
1つ選べ。

       A                         B             C
1 オウレンの水抽出液           塩酸/過酸化水素水試液   トリテルペン
2 ウワウルシの熱湯抽出液        塩化鉄(III)試液        アントラキノン
3 ビャクジュツのエタノール抽出液    バニリン塩酸試液       アルカロイド
4 チンピの温メタノール抽出液      リボン状マグネシウム/塩酸  フラボノイド
5 オンジの無水酢酸抽出液        硫酸               クマリン




オウレンの確認試験で検出されるのは、ベルベリンです。
トリテルペンではないので、選択肢 1 は誤りです。


ウワウルシの確認試験で検出されるのは、タンニンです。
アントラキノンではないので、選択肢 2 は誤りです。


ビャクジュツの確認試験で検出されるのは、セスキテルペンです。
アルカノイドではないので、選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は、その通りの記述です。


オンジの確認試験で検出されるのは、サポニンです。
クマリンではないので、選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 4 です。






問109 

生物活性天然物とその生合成経路に関する記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。

1 カンプトテシンとフィゾスチグミンはトリプトファン由来のアルカロイドである。


2 チモールとレスベラトロールはイソプレノイド経路で生合成される。


3 ポドフィロトキシンとテトラサイクリンはシキミ酸経路で生合成される。


4 シアニジンとダイゼインはシキミ酸経路と酢酸-マロン酸経路の複合経路で生合成される。




選択肢 1 はその通りの記述です。


チモールは、テルペノイドに属する化合物です。
イソプレノイド経路で生合成されます。

レスベラトロールは、スチルベノイドに属する化合物です。
シキミ酸と酢酸-マロン酸の複合経路で生合成されます。
よって、イソプレノイド経路ではありません。
選択肢 2 は誤りです。


ポドフィロトキシンは、生合成経路が今の所よくわかっていないようです。
テトラサイクリンは、酢酸-マロン酸経路により生合成されます。
よって、シキミ酸経路で生合成されるわけではありません。
選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 はその通りの記述です。



以上より、正解は 1,4 です。






問110

図は、分子式 C10H12O3 の化合物 (A) のH-NMR スペクトル(500 MHz 、CDCl)と
と部分拡大図である。この図から推定される A の構造はどれか。
1つ選べ。
なお、6.00ppm 付近に現れる1H 分の幅広いシグナルは重水を添加した後に消失した。
また、7.26ppm のシグナルは CDCl3 に含まれる微量のCHCl3 に起因するものである。






解説

まず、6.8 ppmと 8.0 ppmあたりにそれぞれ 2H のピークがあり、これらは芳香環についたHです。
(問題文にあるとおり、7.26ppm のピークは溶媒のピークなので無視してください。)
この時点で、選択肢2は芳香環に H が 3 つしかついていないので、誤りとなります。

次に、4.3ppm あたりの 2H ですが、これは O や N などに隣接する C についた H のピークと推察されます。
選択肢 3 と選択肢 6 は、O に隣接する C に結合する H は 1 つです。ここでは 2H のはずなので、誤りです。
選択肢 1 では、O に隣接する C に結合する H が 4 つもあります( 2H×2箇所 )。よって誤りです。
選択肢 4 は、そもそも O に隣接する C に結合する H がありません。これも誤りです。

ここまでで残ったのが選択肢 5 だけなので、これが正解です。
確認のため、続きをみていきます。

1.8ppm あたりのピークは 2H 分で、拡大図をみるとピークが 6 つに割れているのがわかります。
つまり、ここに該当する H に結合した C の隣接する C につく H の合計が 5 つということになります。
選択肢5はこれを満たしています。

1.0ppm 付近のピークは 3H 分で、ピークは 3 つに割れています。
ということは隣接する H が 2 つということになり、やはり選択肢 5 がこの条件を満たします。

最後に、6.0ppm 付近に幅広いピークを持つ 1H がありますが、これは -OH 基の H に該当します。
-OH 基の H は幅広いピークとなるのが特徴的なので、ぜひ覚えていてください。
また、今回は 6.0ppm にピークがありますが、-OH 基の出現範囲は広いので、6ppm という数字は覚えてもあまり意味がありません。
問題文では重水を添加するとこのピークが消えたとありますが、これはフェノール性水酸基(-OH)が重水(D2O)で置換されて-OD になっていることを示しています。


以上より、正解は 5 です。