図の器官は、甲状腺です。 以下、各選択肢を検討します。 選択肢 1 ですが 成長ホルモンが放出されるのは 下垂体前葉です。 甲状腺では、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は、正しい選択肢です。 チロキシンが放出されるのは 甲状腺です。 選択肢 3 ですが グルカゴンが放出されるのは 膵臓のランゲルハンス島 α 細胞です。 甲状腺では、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが 甲状腺刺激ホルモンが放出されるのは 下垂体前葉です。 甲状腺では、ありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが アルドステロン (別名 硬質コルチコイド)が放出されるのは 副腎皮質です。 甲状腺では、ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2 です。 問11 気管の内面を覆う上皮組織を表す模式図はどれか。 1つ選べ。 気管の内面を覆う上皮組織は 大部分が多列円柱上皮細胞です。 選択肢 1 は 単層扁平上皮細胞です。 この構造は、うすっぺらく かきむしるといった少しの刺激ですぐはがれます。 保護機能は弱いけれど 物質交換機能に優れる形態です。 血管内皮細胞などに見られます。 気管の内面の模式図としては、不適当です。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は 単層円柱上皮細胞です。 この構造は ロケット弾を装てんするために 細長く筒状になっている構造と考えるとよいです。 ロケット弾にたとえたのは消化液です。 消化液は、細胞の外に分泌されます。 胃や腸といった消化管の内壁などに見られる構造です。 気管の内面の模式図としては、不適当です。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は 重層扁平上皮細胞です。 この構造は 次から次へと生まれては消費されている構造 と考えるとよいです。 一番表面は、単層扁平上皮細胞と同様に 軽くかきむしっただけでぼろぼろはがれます。 これがフケなどの実体です。 皮膚上皮が代表例です。 気管の内面の模式図としては、不適当です。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は 重層立方上皮細胞です。 外部からの刺激が多く、保護機能を高めるために多層構造であり かつ、分泌液を放出するため、表面の細胞の体積が大きくなっている という構造と考えるとよいです。 唾液腺が代表例です。 (口の中なので、異物がたくさんだから、保護機能が必要 かつ、唾液の分泌を行うような器官であるためと考えられます。) 気管の内面の模式図としては、不適当です。 よって、選択肢 4 は誤りです。 (選択肢 3,4 は 見た目が重層であることに注目して誤りであると 判断すると、分かりやすいと思われます。) 選択肢 5 は 多列円柱上皮細胞です。 選択肢 5 は正しいです。 以上より、正解は 5 です。 ちなみに、この問題について それぞれの上皮細胞の分類を知っていることは おそらく期待されていなかったと思われます。 むしろ、1つの考え方としては 気管が分泌液を排出している点に注目し そのような機能を有するのであれば 「ところどころ穴が開いている」 ような模式図であるのではないか と推測するとよいのではないかと考えられます。 他の考え方としては 「表面には毛があるはず」と考えて 「表面が一番つるっとしていない」模式図はどれか と推測しても、正解を選べたのではないかと考えられます。 (もちろん 代表的な組織と器官の対応を 思い出すことができたのであれば それで問題ありません。) 参考) (肺、気管支の機能と構造) 問11 心臓に関する記述のうち、誤っているのはどれか。 1つ選べ。 1 全身から集まってきた血液は、右心房に流入する 2 三尖弁は、左心房と左心室の間に存在する。 3 洞房結節は、拍動のペースメーカーとして働く。 4 冠状動脈は、心筋に酸素と栄養素を供給する。 5 心筋の収縮には、Ca2+が関与する。 選択肢 1 , 3 , 4 , 5 はその通りの記述です。 三尖弁は、右心房と右心室との境にある、3枚からなる薄い弁膜です。 左心室と左心室の間にあるのは、僧帽弁と呼ばれる、二枚からなる尖弁です。 問11 ホルモンとその作用との対応のうち、誤っているのはどれか。 1つ選べ。 1 ガストリン -------------- 胃酸分泌の抑制 2 セクレチン -------------- HCO3− を多く含む膵液の分泌促進 3 カルシトニン ----------- 血中Ca2+ の減少 4 インスリン -------------- 血中グルコースの減少 5 アルドステロン --------- 腎臓におけるNa+ 及びCl− の再吸収促進 ガストリンは、胃幽門部(出口の方)G細胞から分泌されるホルモンで 胃酸分泌を促進し、消化を助けます。 セクレチンは、十二指腸のS細胞から分泌されるホルモンで 膵液の分泌を促進させるホルモンです。 カルシトニンは、血中のCa2+濃度を低下させるホルモンです。 分泌は甲状腺傍ろ胞細胞が行います。 Ca2+濃度の低下は、骨吸収(骨=Ca貯蔵庫から血中へのCa移動)の抑制により実現されます。 インスリンは、血糖が上がった時に分泌されるホルモンで 血中グルコース濃度を減少させます。 アルドステロンは、腎臓の遠位尿細管においてNa+の再吸収を促進させることにより 血中Na+濃度を上昇させるホルモンです。 又、遠位尿細管におけるNa+の輸出機構はNa+/Cl-共輸送であるため Na+の再吸収を促進させることは同時にCl- の再吸収を促進させることになります。 以上により、正解は選択肢 1 です。 参考)生物化学まとめました (1) 3-2 2) 血糖の調節機構 問12 外胚葉を主な起源とする器官はどれか。 1つ選べ。 1 骨 2 心臓 3 肺 4 大腸 5 脊髄 受精卵が卵割した結果 規則的な配列を形成しますが これを胚葉と呼びます。 ヒトやウニの受精卵では 外胚葉、中胚葉、内胚葉という 3種の胚葉が形成されます。 外胚葉由来の代表的器官は 皮膚、神経系(脳、脊髄など) です。 中胚葉由来の代表的器官は 心臓、血液、骨 です。 内胚葉由来の代表的器官は 消化管、肝臓・膵臓、肺 です。 以下、各選択肢を検討します。 選択肢 1,2 は、中胚葉由来です。 選択肢 3,4 は、内胚葉由来です。 選択肢 5 は、外胚葉由来です。 以上より、正解は 5 です。 問12 下半身のリンパ液が集まる脈管はどれか。 1つ選べ。 1 右リンパ本幹 2 胸管 3 右鎖骨下動脈 4 腹大動脈 5 下大静脈 体の右上半身からのリンパ液は 右リンパ管に集まり それ以外のリンパ液は 胸管に集まります。 よって、正解は 2 です。 (リンパ系の機能と構造) 問12 血小板の前駆細胞はどれか。 1つ選べ。 1 赤芽球 2 肥満細胞 3 巨核球 4 マクロファージ 5 形質細胞 血小板の前駆細胞は、巨核球です。 よって、正解は 3 です。 前駆細胞に関しては、以下の図がよくまとまっています。 ![]() ちなみに、赤芽球は、赤血球の前駆細胞です。 肥満細胞は、造血幹細胞由来の細胞です。 前駆細胞として、循環血中を経由した後、浸潤した組織において、最終的な分化をとげます。 マクロファージは、単球から分化します。 形質細胞は、Bリンパ球が分化した細胞です。 問12 原核生物はどれか。 1つ選べ。 1 赤痢アメーバ 2 黄色ブドウ球菌 3 インフルエンザウイルス 4 皮膚糸状菌 5 マラリア原虫 生物は、原核生物と真核生物に大別されます。 原核生物に分類される代表的生物は 細菌(大腸菌など)及びラン藻類です。 細菌は、その形から主に、球菌、桿菌、らせん菌に分類されます。 ラン藻類は、主にクロオコッカス目、ユレモ目、ネンジュモ目などに分類されますが 統一された見解が今のところ存在しないようです。 真核生物に分類される代表的生物は、動物、植物、真菌、原虫です。 赤痢アメーバは、アメーバです。 アメーバは原生生物の一種です。 原生生物とは、真核生物の一種であり 真核生物において動物にも植物にも菌にも属さない生物の総称です。 黄色ブドウ球菌は、細菌です。 細菌は原核生物です。 インフルエンザウイルスは、ウイルスです。 ウイルスは、生物に分類されません。 皮膚糸状菌は、真菌です。 真菌は真核生物です。 マラリア原虫は、原虫です。 原虫は真核生物です。 以上より、正解は 2 です。 問13 ヒトの細胞でパルミチン酸 (C16 : 0) がβ酸化を受けるのはどこか。 1つ選べ。 1 細胞質 2 核 3 小胞体 4 ミトコンドリア 5 ゴルジ体 パルミチン酸は 脂肪酸の一種です。 脂肪酸は β酸化と呼ばれる C 2 単位ごとの酸化を受けて代謝されます。 β酸化が行われるのは ミトコンドリアです。 よって、正解は 4 です。 (脂肪酸のβ酸化反応) 問13 一酸化窒素合成酵素(NOシンターゼ)により 一酸化窒素(NO)を生成するアミノ酸はどれか。1つ選べ。 1 L-トリプトファン 2 L-アスパラギン 3 L-リシン 4 L-アルギニン 5 L-グルタミン酸 一酸化窒素の原料となるアミノ酸は L-アルギニンです。 よって、正解は 4 です。 ちなみに、知識として知らなくても 各アミノ酸の構造に注目すれば 側鎖に NH2 基 がたくさん末端に存在する L-アルギニンが、一番適切であると 考えることもできると思われます。 (アミノ酸の構造、性質) 問13 タンパク質の翻訳後修飾において、糖鎖による修飾を 受けるアミノ酸残基はどれか。 1つ選べ。 1 L-アラニン 2 L-システイン 3 L-トリプトファン 4 L-アスパラギン 5 L-グルタミン酸 N-グリコシル化と、O-グリコシル化があります。 N-グリコシル化は、アスパラギン側鎖の N 原子に、糖が付加します。 O-グリコシル化は、セリン、もしくはトレオニンの、OH基の O に糖が付加します。 よって、正解は 4 です。 問13 DNAの構造について、正しいのはどれか。 1つ選べ。 1 構成塩基は、アデニン、グアニン、シトシン及びウラシルである。 2 アデニンと対をなす塩基はグアニンである。 3 構成糖としてD-リボースを含む。 4 ヒトの染色体DNAは環状構造をとる。 5 生理的条件下では主に右巻きらせん構造をとる。 DNAの構成塩基は A:アデニン、G:グアニン、T:チミン、C:シトシンです。 AとT、GとCが対をなします。 構成する糖はデオキシリボースです。 構成する糖がリボースであるのは、RNAです。 DNA構造は二重らせん構造をとります。 生理的条件下において主に、右向きらせん構造をとります。 以上より、正解は 5 です。 問14 ヌクレオチドのピリミジン骨格の de nomo 合成に利用されるアミノ酸はどれか。 1つ選べ。 1 L-メチオニン 2 L-チロシン 3 L-バリン 4 L-アスパラギン酸 5 L-トリプトファン ヌクレオチドとは ヌクレオシドにリン酸が結合したものの総称です。 例は、ATP です。(リン酸3つ結合。) ヌクレオシドとは 塩基と糖が結合したものの総称です。 例は、アデノシン です。 塩基は 骨格により大きく2つに分類されます。 すなわち プリン塩基と、ピリミジン塩基に 分類されます。 ピリミジン骨格に利用されるアミノ酸は アスパラギン酸及び、グルタミンです。 ちなみに、プリン骨格に利用されるアミノ酸は グリシン、アスパラギン酸、グルタミンです。 選択肢に含まれているアミノ酸は アスパラギン酸だけなので 正解は 4 です。 問14 真核細胞におけるメッセンジャーRNA (mRNA) の 開始コドンに対応するアミノ酸はどれか。1つ選べ。 1 L-トリプトファン 2 L-アラニン 3 L-グルタミン酸 4 L-メチオニン 5 L-ヒスチジン 開始コドンに対応するアミノ酸は L-メチオニンです。 よって、正解は 4 です。 ちなみに、開始コドンは AUG です。 終止コドンは UAA UAG UGA です。 問14 ヒトの染色体に関する記述のうち、誤っているのはどれか。 1つ選べ。 1 23対の染色体から構成される。 2 男性は X、Yの性染色体をもつ。 3 DNA はヒストンと結合している。 4 分裂期の細胞で明瞭に観察される。 5 末端部分をセントロメアとよぶ。 選択肢 1 ~ 4 はその通りの記述です。 染色体の末端は、テロメアと呼ばれます。 染色分体どうしが結合する、真ん中の部分がセントロメアです。 選択肢 5 は誤りです。 よって、正解は 5 です。 問14 セロトニンの生合成の前駆体はどれか。 1つ選べ。 1 アラキドン酸 2 L-チロシン 3 コリン 4 L-トリプトファン 5 L-ヒスチジン アラキドン酸は、エイコサノイド(プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン等)の 前駆体です。 L-チロシンは、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン等)の 前駆体です。 コリンは、アセチルコリンの前駆体です。 L-トリプトファンは、セロトニンの前駆体です。 L-ヒスチジンは、ヒスタミンの前駆体です。 以上より、正解は 4 です。 問15 細菌の内毒素(エンドトキシン)に関する記述のうち 誤っているのはどれか。 1つ選べ。 1 グラム陰性菌外膜の成分である。 2 主成分はタンパク質である。 3 外毒素に比べ、加熱処理に対して安定である。 4 細菌の種類により、構造的な多様性がある。 5 宿主の免疫反応をかく乱し、ショック症状をおこす。 細菌の産生する毒素は、分泌されるかどうかで 大きく2つに分類されます。 すなわち、分泌される 外毒素 と 分泌されない 内毒素 です。 内毒素は グラム陰性菌の細胞壁成分です。 別名エンドトキシンです。 実体は、リポ多糖です。 実体が糖の一種であることから 明らかにタンパク質ではありません。 よって、選択肢 2 は誤りですので 正解は 2 です。 ちなみに 外毒素の実体はタンパク質です。 内毒素と比較すると 熱に弱いという特徴を持ちます。 問15 抗ウイルス活性を示すサイトカインはどれか。1つ選べ。 1 インターフェロン α (IFN-α) 2 インターロイキン2 (IL-2) 3 エリスロポエチン (EPO) 4 腫瘍壊死因子α (TNF-α) 5 顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) 選択肢 1 ですが インターフェロンとは、免疫系や炎症の調節を行う サイトカインの一種です。抗ウイルス活性をもちます。 選択肢 1 は正しいです。 選択肢 2 ですが インターロイキンとは、白血球により分泌される サイトカインの一種です。 その中で、インターロイキン2は T細胞、B細胞、NK細胞などを活性化させる作用を持ちます。 抗ウイルス活性を示すとは、証明されていません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが エリスロポエチンは 腎臓で作られる、赤血球の産生を促進するホルモンです。 抗ウイルス活性を示すとは、証明されていません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが 腫瘍壊死因子αは 固形がんに対し、出血性の壊死を生じさせる物質として 発見されたサイトカインです。 抗ウイルス活性を示すとは、証明されていません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが 顆粒球コロニー刺激因子とは 顆粒球産出の促進を行うサイトカインの一種です。 抗ウイルス活性を示すとは、証明されていません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1 です。 問15 マイコプラズマに関する記述のうち、正しいのはどれか。 1つ選べ。 1 一般細菌より大型である。 2 真核生物である。 3 増殖には生細胞への寄生が必要である。 4 細胞壁をもたない。 5 病原性は知られていない。 マイコプラズマは、細菌の一種です。 主に肺炎を引き起こします。 かなり小さな細菌です。 原核生物で、真核生物の細胞内に寄生します。 細胞外で、自己増殖可能です。増殖にはコレステロールなどが必要です。 特徴としては、細胞壁を持たないという特徴があります。 細胞壁を持たないため、細胞の形状が柔らかく変形します。 そのため、細胞壁を作用点とする抗菌薬、すなわちβ-ラクタム系の薬剤は意味がありません。 問15 抗原抗体反応を利用した測定法でないのはどれか。 1つ選べ。 1 ラジオイムノアッセイ (RIA) によるホルモンの定量 2 酵素免疫測定法 (ELISA) によるサイトカインの定量 3 赤血球凝集反応による血液型判定 4 ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 法によるDNAの検出 5 ウエスタンブロット法によるタンパク質の検出 ラジオイムノアッセイ(RIA:radio immunoassay)とは 放射性同位元素を利用した、抗原抗体反応による微量な抗原の測定法です。 酵素免疫測定法(ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay)とは 酵素反応に基づく発色や発光を利用した、抗原抗体反応による微量な抗原の測定法です。 赤血球凝集反応とは、赤血球どうしが互いにくっついて固まりをおこすことです。 赤血球表面の抗原に対する抗体が、複数の赤血球表面抗原と結合することによりおこります。 抗原抗体反応の一種です。 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)とは DNAの増幅法です。 酵素反応であり、抗原抗体反応ではありません。 ウエスタンブロット法とは、電気泳動により分離したタンパク質を膜に転写し タンパク質に対する抗体を用いて検出する手法のことです。 以上により、正解は 4 です。 |