問91 分子間相互作用に関する記述のうち、 正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 酸素原子の電気陰性度は 硫黄原子より大きいため 分子間に働く水素結合は H2O の方が H2S よりも強い。 2 静電的相互作用による ポテンシャルエネルギーは 距離の 2 乗に反比例する。 3 分散力は、ロンドン力とも呼ばれ そのポテンシャルエネルギーは 距離の 4 乗に反比例する。 4 ファンデルワールス相互作用は 分子間の距離により 引力として働く場合と 斥力として働く場合がある。 5 疎水性相互作用は ファンデルワールス相互作用により 説明される。 選択肢 1 は、正しい選択肢です。 選択肢 2 ですが 静電的相互作用(クーロン相互作用)による ポテンシャルエネルギーは 距離に反比例します。 距離の 2 乗に反比例するわけでは、ありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが ロンドン力によるポテンシャルエネルギーは 距離の 6 乗に反比例します。 距離の 4 乗に反比例するわけでは、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は、正しい選択肢です。 選択肢 5 ですが 疎水性相互作用は 周囲の水の水素結合ネットワークへの影響を 小さくするようにしている、と説明されます。 ファンデルワールス相互作用で説明される わけではありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1,4 です。 問91 90Sr は以下に示す放射壊変により、放射性核種 90Y を経て、 90Zr の安定核種になる。 90Y の放射能の時間推移を示す曲線はどれか。 1つ選べ。 但し、時間ゼロにおける 90Sr の放射能は 5 × 104 Bq とする。 まず、t = 0 の時 90Y はまだ無いはずです。 つまり、放射能の強さは 0 のはずです。 よって、正解は 3 , 4 のどちらかです。 次に、今回の放射壊変は 親の半減期(90Sr の半減期:28.8 年)が 娘の半減期よりも、圧倒的に長いため 永続平衡です。 永続平衡では、ある程度時間がたつと 娘核種の放射能と、親核種の放射能が 等しくなります。 ある程度時間が経った時、半減期が数年かかる 親核種の 90Sr の放射能は、ほぼ 50000 と考えてよいです。 よって、時間が経つにつれ 50,000 Bq 付近に近づく曲線が正解です。 以上より、正解は 3 です。 問91 熱力学に関する記述のうち、誤っているのはどれか。 1つ選べ。 1 系の内部エネルギーは、その系の現在の状態だけで決まり、その状態に 至る経路は関係しない 2 孤立系で不可逆変化が起これば、エントロピーは増大する。 3 状態量には示強性と示量性があり、温度は示量性の状態量である。 4 熱力学第三法則でいう純物質の完全結晶のエントロピーは、絶対零度では ゼロである。 5 ギブズ自由エネルギーは、エントロピー、エンタルピー及び温度の関数である。 状態量(状態関数)とは、系の状態だけで一意的に定まる物理量のことです。 示量性状態関数とは、物質量に依存する量です。 言い換えると、物が多くなった時に増える量です。 体積や質量が代表例です。 温度は、示量性の状態量ではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 その他の選択肢は、その通りの記述です。 選択肢 5 について補足をすると 自由エネルギーをG、エンタルピーを H 、エントロピーを S とおくと G = H - TS と表されます。 ※Tは絶対温度です。 以上より、正解は 3 です。 問91 放射線及び放射能に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 1 娘核種の半減期が親核種の半減期よりも十分長い場合には 放射平衡を利用したミルキングにより娘核種を得ることができる。 2 軌道電子捕獲では、中性子が放出される。 3 Nal (Tl) シンチレーションスペクトロメ一ターは γ線のエネルギーを測定し、γ線放射核種の推定に利用される。 4 γ転移では、原子番号が1減少するが、質量数は変化しない。 5 γ線は、α線及びβ線に比べ透過性が高い。 ミルキングとは、放射平衡にある系から、娘核種を化学的に分離して採取する操作のことです。 この操作により、娘核種を得るには、親核種の半減期が娘核種に比べて、十分長い必要があります。 そのため、選択肢 1 は誤りです。 軌道電子捕獲とは、陽子が、軌道電子1個をつかまえて、中性子1個になるような壊変のことです。 この壊変では、軌道電子が1個つかまるため、軌道上に空の部分ができます。 その空の部分を埋めるために、軌道電子が移動し、その際X線が放出されるのを観測することができます。 このECに伴って放出されるX線は、特性X線と呼ばれます。 よって、放出されるのは、X線であるため、選択肢 2 は誤りです。 シンチレーションカウンタは、励起作用(=蛍光作用)を利用した測定器の代表例です。 低エネルギーβ線の測定は、液体シンチレーションカウンタが用いられます。 高エネルギーβ線の測定は、GM計数管が用いられます。 γ線の測定は、NaIシンチレーションカウンタが用いられます。 よって、選択肢 3 は正解です。 γ転移とは、励起した状態が、γ線放出を伴い、エネルギーの低い状態へ転移することです。 特に、励起した状態の半減期が長い場合は、核異性体転移と呼ばれます。 この時、原子番号は変化しません。よって、選択肢 4 は誤りです。 γ線は、α線、β線に比べてはるかに透過性が高いです。 α線は、紙一枚で遮蔽でき、β線は、アルミ1枚で遮蔽できますが、γ線は、大体1.5cmの鉛が遮蔽に必要です。 よって、選択肢 5 は正解です。 以上より、正解は3,5です。 問92 下の図は マクスウェル・ボルツマン分布則に基づいた 温度の異なる ある理想気体の運動の速さ分布である。 図中の曲線 A は 温度 T1 = 150 K の場合 曲線 B は 温度 T2 の場合を示す。 気体の運動に関する記述のうち 正しいのはどれか。 2 つ選べ。 ただし、図中の分子運動は 並進運動のみを表しているものとする。 1 T2 は、約 300 K である。 2 各曲線における最大確率速度 (頂点における速度)は それぞれの平均の速さより小さい。 3 分子量が 2 倍、温度 T1 の 理想気体における分布曲線は 曲線 A と比べて 右側にシフトし広がる。 4 温度が高くなれば、速さ分布は広がる。 選択肢 1 ですが 最大確率速度(最確速度)は 温度 T の平方根に比例します。 つまり、最確速度が 2 倍になる時 温度は 4 倍です。 T1 が 150 ℃なので、T2 は、600 ℃になります。 300 ℃では、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は、その通りの記述です。 選択肢 3 ですが 分子量が大きくなると、分布曲線は 左にシフトし、シャープになります。 イメージとしては 同じ温度であっても 軽いものなら、激しく動くこともあるけれど 重たいものだと、みんなほとんど動かない ということです。 また別のたとえとして 温度が低い→素人の微妙なコントが放送されている。 温度が高い→名人のとてもおもしろいコントが放送されている。 分子量が小さい→お笑いをほとんど知らない集団が聞いている。 分子量が大きい→お笑い通の集団が聞いている。 ある分子の速度→コントを聞いて、うけた度合い とした時に 温度が低い=微妙なコント でも まだお笑いを知らない集団の中には めちゃくちゃうける人も、案外いる。 (速度が大きい分子も、案外いる。) しかし お笑い通の集団では、まぁうけない。(分布が左による。) 微妙なコントでめちゃくちゃうける人なんてめったにいない。 (分布に広がりはなくなる。シャープになる。) というイメージです。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は、その通りの記述です。 以上より、正解は 2,4 です。 問92 1×105 N/m2, 107℃で 水素 1.0 mol と酸素 0.50 mol を反応させ 水(気体)を合成した。 この反応に伴い 243 kJ の熱が発生した。 水素と酸素はすべて反応し、温度及び圧力は一定であった。 この反応に伴う内部エネルギー変化(kJ)に 最も近いのはどれか。1つ選べ。 ただし、気体定数 R=8.31(Jmol-1K-1)とする。 1 - 360 2 - 240 3 - 120 4 120 5 240 6 360 問題の反応を熱化学方程式で表すと です。 温度及び圧力が一定であったということから 内部エネルギー変化分が熱として放出されていると 考えられます。 発熱反応であれば、生成物ができる過程において エネルギーは減少しているはずです。 つまり 反応に伴うエネルギー変化は -243 kJ です。 最も近い数字は -240 です。 よって、正解は 2 です。 問92 図は、水素分子のモル熱容量(定容熱容量 (Cv,m))と温度との関係を表す。 Cv,m の温度依存性に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 ただし、この温度依存性に、水素分子における電子運動は関与しないと仮定する。 Rは気体定数(J・mol-1・K-1)を表す。 1 100Kより低い温度では、水素分子が液化しているため 定容熱容量は低い値を示す。 2 100Kより低い温度での定容熱容量は、水素分子の並進運動のみが寄与する。 3 298Kにおける定容熱容量は、水素分子の並進運動エネルギー、回転運動エネルギー 振動運動エネルギーより求められる。 4 温度の上昇にともない水素分子が、回転運動、振動運動のエネルギー準位へと 分布できるようになり、定容熱容量が増大する。 5 10,000Kにおいては、水素分子の開裂が起こるため、定容熱容量が高い値を示す。 定容熱容量とは、体積を一定にした時の熱容量です。 熱容量とは、物体の温度を 1 ℃ 高めるのに必要な熱量(いいかえれば、エネルギー)のことです。 ※物質が気体の場合は、体積一定の条件で熱が流入した時 その熱量は全て系のエネルギーに蓄えられると考えます。 温度が上昇するとは、気体の平均エネルギー準位が高くなるということです。 本問では、2原子分子である水素分子が対象なので エネルギーは、並進エネルギー、振動エネルギー、回転エネルギーとして 分配されます。 ※エネルギー均分束と呼ばれます。 ※もしも希ガスのような、単原子分子なら、系のエネルギーには、並進運動のみを考慮します。 又、振動エネルギー、回転運動エネルギーは、取りうる値が量子化されています。 それぞれ、振動エネルギーは約 4 ~ 40kj/mol、回転エネルギーは約0.0004 ~0.04kj/molです。 並進エネルギーは、やはり量子化された値をとりますが、その幅が極めて小さいため(約4×10-21kJ/mol) ほぼ連続と考えてよいです。 そして、温度の上昇に伴い、水素分子が、だんだんエネルギー幅の大きい回転エネルギーや、振動エネルギーの 準位へと分布することができるようになります。 すると、温度の上昇に、よりエネルギーが必要になるため、定容熱容量は大きくなります。 又、温度が低い時には、並進運動のみが、定容熱容量に寄与しているということになります。 イメージとしては、以下のような図になります。 以上より、正解は 2,4 です。 問92 次の化学反応式に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。
△HOがマイナスであることから、反応エネルギーのイメージが下図です。 つまり、アンモニアが生成すると、エネルギー的により安定であるということです。 これは、エネルギー差の分だけ、アンモニアが生成すると、熱が出る反応であるということです。 さて、系が平衡状態にある時、微小な変化がおきると、系は平衡状態に戻ろうとします。 (ルシャトリエ・ブラウンの原理と呼ばれます。) 例えば、温度が少し低下すると、温度を上げようとします。 つまり発熱反応がおきる方向に偏ります。つまり、この系では、アンモニア生成の方向に偏ります。 よって、反応は右方向に進行するといえ、選択肢1は正解です。 次に、圧力を少しあげると、圧力を下げる方向に偏ります。 この式では、左辺の項が2つ、右辺の項が1つであるため 圧力を下げる方向とは、右方向です。 なぜなら、2つの分子が1つになる=物質量が減るということだからです。 物質量が減ると、圧力が減ります。 これは、気体の状態方程式 pv = nRT において、v,Tが一定である状態を考えると n が減少すれば、p も減少することからわかります。 よって、選択肢 2 は、左方向という部分が間違いです。 触媒の添加は、イメージとしては下図のように反応に必要なエネルギーを変化させる行為です。 反応の生成エンタルピーとは、反応の始点と終点のエネルギー差なので 触媒の添加では、生成エンタルピーは変化しません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 ファントホッフプロットとは、横軸に温度の逆数、縦軸に平衡定数の対数を取ってプロットすると 傾きが-⊿H/R となり、反応のエンタルピーを求めることができるプロットです。 本問では、⊿H が負なので、傾きは正となります。 つまり、右上がりの直線となります。 よって、選択肢 4 は正解です。 以上より、正解は 1,4 です。 問93 次の文章の ①、② に入る 数値及び記号の正しい組合せはどれか。 1つ選べ 理想溶液がその気相と平衡にある場合 各成分の蒸気圧は 溶液中のモル分率に比例する。 成分 X と Y から成る液体を 理想溶液とみなすとき 成分 X のモル分率 0.5 の溶液と 平衡にある蒸気の成分 X のモル分率は ① となる。 ただし、成分 X と Y の蒸気圧を それぞれ 500 hPa 、1000 hPa とする。 また、成分 X、Y が理想溶液とみなせず X と Y の分子間に反発がある場合の圧力は ② のようなグラフになる。 成分 X の蒸気圧(Px)、及び 成分 Y の蒸気圧(Py) は、ラウールの法則より Px : 500 ✕ 0.5 = 250 Py : 1000 ✕ 0.5 = 500 です。 よって、全圧は 250 + 500 = 750 です。 全圧が 750 で、そのうち 250 が 成分 X の分圧ですので ドルトンの法則より 250 / 750 ≒ 0.33 が、X のモル分率です。 以上が、① についての解説です。 次に、X と Y に反発がある場合ですが 例えば 蒸気の成分が X,Y 共に ちょうど 半分ずつの場合を考えます。 反発するということは X は Y に対して Y は X に対して 反発力を与えるということです。 すると蒸気は、より早く飛び回ることになります。 つまり、圧力が大きくなると考えられます。 グラフでいうと Y の モル分率が 0.5 付近で 上に凸 となる と考えられます。 以上が、②についての解説です。 従って、正解は 7 です。 問93 ある薬物Aの水に対する溶解度は 5w/v % であり 1次反応速度式に従って分解し その分解速度定数は 0.02 h-1である。 この薬物 1.5g を水 10 mL に懸濁させたとき 残存率が90%になる時間(h)に最も近い値はどれか。 1つ選べ。 ただし、溶解速度は分解速度に比べて十分に速いものとする。 1 2.5 2 7 . 5 3 1 3 . 5 4 1 5 5 7 5 溶解度が 5w/v % とは 水100 ml 中に 5g までしか溶けないということです。 水10 ml 中には 0.5 g までしか溶けないことがわかります。 残存率が 90 % ということは 元が 1.5 g なので、0.15 g が分解する時間を考えれば よいということです。 薬物 1.5 g を 10 mL に入れると 溶解度である 0.5 g が溶けます。 1次反応速度式に従い分解する、ということなので 時間 t が経過した時の濃度は で表されます。 k 、つまり分解速度定数が 0.02 C0、つまり初濃度に 0.5 Cに、0.15 g 溶けた時の濃度、つまり 0.35 を代入すると 両辺の 自然対数 ln をとると です。 ここで、e ≒ 2.8 なので 1.4 を、e/2 と考えれば 右辺を と変形することができます。 ここで、ln2≒0.7 なので 1-0.7=0.3 です。 つまり 0.02 t = 0.3 となります。 よって、t = 15 です。 正解は 4 です。 問93 式は、相転移温度と圧力の関係を表したクラペイロンの式である。 相転移に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 固体と液体が共存する状態では、純物質は圧力をかけると固体から液体へと変化する。 2 純物質は、圧力が高くなると沸点が上昇する。 3 純物質の状態図における昇華曲線の傾きは負となる。 4 相転移に伴うエンタルピー変化と相転移温度から、相転移に伴う エンタルピー変化を求めることができる。 一般的な相図は、横軸に温度T、縦軸に圧力Pをとると 以下のようになります。 固体と液体が共存するのは、固液境界線におけるようなTとPの時です。 (一例として、グラフにおける◯の部分) ここでPが増加すると、点で表している状態は、上に移動するので 物質は固体になると考えられます。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 はその通りの記述です。 すなわち、圧力が高いと、より状態は上に移動するので、固体と液体や 液体と気体の境界線は、より右側になります。 つまり、気体になるための温度がより高くなるので、圧力が高くなると 沸点が上昇するといえます。 (相図でわかりにくければ、圧力が高い→ぎゅっと押し付けられている →気体になるというのは、粒子がそれぞれ自由に動けるということ →よりエネルギーが必要になる →より温度が高い必要がある ぐらいで考えてもよいと思います。) 昇華曲線とは、固体と気体の境界線のことです。 一般的に傾きは正です。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 はその通りの記述です。 エンタルピー変化ΔSは、エントロピーの定義から ΔS = q/T です。 ここで、qは、相転移に伴う熱量なので、すなわち相転移に伴うエンタルピー変化といえます。 よって、qとTがわかればSが求められます。 つまり、相転移に伴うエンタルピー変化(q)と、総転移温度(T)から 相転移に伴うエントロピーを求めることができます。 以上より、正解は 2,4 です。 問93 図は、3種類の電解質 (NaOH, CH3COOH, NaCl) 溶液のモル伝導率 (Λ) と濃度 (c) の平方根との関係を示している。図中のa 〜 cと電解質の正しい組合せはどれか。 1つ選べ。
強電解質では、縦軸にΛ、横軸に 直線減少になることが知られています。これは、コールラウシュの法則と呼ばれます。 3種類の電解質のうち、強電解質(つまり電離度が1に近い。)のは、NaOH、NaClです。 弱電解質(つまり、電離度が小さい)のは、CH3COOH です。 よって、直線関係になっている、a,b はそれぞれ NaOH か NaCl であり 曲線関係になっている、c は、CH3COOH です。 又、このグラフの y 切片は、c が限りなく 0 に近づいた状態、すなわち 無限希釈状態におけるモル伝導率です。 これは極限モル伝導率(Λ∞)と呼ばれ、電解質に固有の値です。 そして、Λ∞ は、陽イオン、陰イオンそれぞれの極限モル伝導率の和で表されます。 NaOH と、NaCl は、電離した時の陽イオンは同じであるため、陰イオンの極限モル伝導率によって y 切片が決まります。 本問では、代表的な陰イオンの極限モル伝導率の 大雑把な順位を知っている もしくは 推測することが求められていると考えられます。 OH- は、陰イオンの中で特に高い極限モル伝導率を持ちます。 そのため、NaOH の方が、Λ∞は高くなります。 よって、正解は 2 です。 ※推測する方法としては、陽イオンの極限モル伝導率についてよく知られている事実である 「H+の極限モル伝導率が、陽イオンの中で特異的に高い」 ことからの推測が有効かと思います。 すなわち、H+がなぜイオン伝導率が高いのかといえば、H+が周囲の水分子間を連鎖的に とんでいくからと学ぶと思います。 となれば、OHが周囲の水分子の一部として存在している環境において OH-も、周囲の水分子間を、同様に連鎖的にとんでいくのではないかと推測することで 正答を予測できるのではないかと考えられます。 問94 タンパク質の構造に関する記述のうち 正しいのはどれか。 2 つ選べ。 1 円二色性スペクトル法により タンパク質の一次構造を決定することができる。 2 α ヘリックスや β シートは タンパク質中に見られる二次構造である。 3 基質が酵素分子に結合する際に生じる 誘導適合(induced fit)とは 酵素分子を堅固な剛体として仮定したときに 生じる変化をいう。 4 酵素の等電点とは その酵素の至適 pH のことである。 5 ヘモグロビンと酸素との結合は 協同性を示し この協同現象はヘモグロビンの 四次構造変化により説明される。 選択肢 1 ですが 円二色性スペクトル法でわかるのは タンパク質の二次構造です。 一次構造が決定できるわけでは、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は、その通りの記述です。 選択肢 3 ですが 誘導適合とは 基質に合わせて酵素分子が形を変えることです。 一方、堅固な剛体と仮定するとは 形が変わらないと仮定する、ということです。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが 等電点とは 正の荷電と負の荷電が等しくなる pH のことです。 酵素の性質としては 水などの溶媒に可溶化しにくくなる pH といえます。 いいかえると、沈殿しやすくなります。 沈殿しやすい pH かどうか、と 酵素の働きが至適となる pH であるかどうかは 同一ではありません。 従って 等電点が 酵素の至適 pH である ということはできません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 は、その通りの記述です。 以上より、正解は 2,5 です。 問94 表面・界面張力に関する記述のうち正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 表面・界面張力は 表面・界面過剰ギブズ自由エネルギーとして表すことができ その単位は J/m2 で表される。 2 油滴が水中に存在するとき サイズが小さい油滴ほどエネルギー的に安定である。 3 界面活性剤とは 表面・界面過剰ギブズ自由エネルギーを 増大させる化合物の総称である。 4 食塩水は 純水に比べて表面張力が大きい。 5 ヘキサンは 純水に比べて表面張力が大きい。 選択肢 1 ですが 表面張力の単位は J/m2 もしくは N/m が用いられます。 ※ 仕事の単位である 1J は 1N × 1m であるため J/m2 だけ覚えておくと十分だと思います。 選択肢 2 ですが サイズが小さい油滴は サイズが大きい油滴よりも 水と接する割合が大きくなります。 (これは、おもち(油滴のたとえ)に きなこ(表面=水と接している部分 のたとえ) をつけて食べる時を想像するとわかりやすいと思います。 すごく小さなおもちに、きなこをたっぷりつけると まるできなこを食べているような感じになりますね。 つまり、きなこの割合がすごく大きくなります。 一方、すごく大きなおもちに、きなこをたっぷりつけても 結局表面しかきなこはついておらず きなこがついていない部分が大部分になりますよね。) 油滴は疎水性なので、水と接する割合が大きいほど エネルギー的に不安定です。 つまり、サイズが小さい油滴ほど、エネルギー的に 不安定です。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが 界面活性剤とは、表面・界面張力を減少させる 化合物の総称です。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが NaCl のような表面不活性物質を加えると 界面張力は溶質の濃度上昇に伴い 少しずつ増加します。 よって、選択肢 4 は正しいです。 選択肢 5 ですが 表面張力とは、過剰エネルギーとして表すことができ 過剰エネルギーがなぜあるかといえば 水であれば、周りの一部が表面では水でないから であり ヘキサンであれば、周りの一部がヘキサンではないからです。 ここで、水同士は、水素結合という 特徴的な強い力で結合しているため 水の表面における過剰エネルギー、すなわち 水の表面張力の方が ヘキサンの表面張力に比べて大きいと考えられます。 (文献値によれば 水 約72、n - ヘキサン 約18 です。) ※ n - とは、「枝分かれのない」ぐらいの意味です。 異性体との区別のため、つけられます。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1,4 です。 参考) 問94 互いに混ざり合わない2つの液相間における分配平衡に関する 記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 1 溶質の分配係数は、溶け込んでいる溶質の濃度に比例して大きくなる。 2 一定温度、一定圧力下での分配係数は、それぞれの液相における溶質の 標準化学ポテンシャル差により決まる。 3 有機相と水相を利用した親油性化合物の抽出では、誘電率の低い有機溶媒の方が 抽出率は高い。 4 それぞれの液相における溶質の標準化学ポテンシャルが温度に依らず一定の時 定圧下で液相の温度を上昇させると、分配係数は低下する。 溶質の分配係数は、溶質の種類、及び2つの溶液の種類に依存します。 溶け込んでいる溶質の濃度に比例するということはありません。 依存するパラメータは、温度です。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2,3 はその通りの記述です。 温度の変化により 普通は標準化学ポテンシャルも変化しますが この選択肢では、変化しない という条件があるため 定圧なので、圧力の影響がなく 温度が変化しても標準化学ポテンシャルが変わらない →標準化学ポテンシャルの差も変わらない →分配係数も変わらない と考えられます。 よって、選択肢 4 は誤りです。 正解は 2,3 です。 問94 反応 A → B は、反応物Aの濃度 C に関して 2 次反応である。 この反応に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 ただし、反応物 A の初濃度を Co、反応速度定数を k、半減期を t1/2 とする。 1 圧力、温度が一定ならば、Co が変化しても k は一定である。 2 Co が 2 倍になれば、反応速度は 2 倍になる。 3 Co が 2 倍になれば、t1/2 は 1/2 になる。 4 濃度の逆数 1/C を反応時間に対してプロットすると、傾きが (ln2) /k の直線が得られる。 2 次反応であるということは と表現できるということです。 ここで、 k は定数です。 基質濃度以外の様々な要因により変化しますが 基質濃度、すなわち C には依存しない定数です。 よって、選択肢 1 は正解です。 又、2 次反応であるため、反応速度は、濃度の 2 乗に比例します。 つまり、C0 が 2 倍になれば、反応速度は 4 倍になります。 よって、選択肢 2 は誤りです。 次に、2 次反応における半減期は、以下のように表されます。 よって、Co が 2 倍になれば、t1/2 は 1/2 になります。 よって、選択肢 3 は正解です。 最後に、濃度の逆数 1/C を反応時間に対してプロットすると 2次反応の式より、傾き k の直線が得られます。 よって、選択肢 4 は誤りです。 以上より、正解は 1,3 です。 問95 NAD+ 及ぴ CH3CHO の還元反応及び 標準電位を以下に示した。 pH 7、25℃における、NAD+ / NADH 及ぴ CH3CHO / CH3CH2OH からなる 化学電池が放電するときの 標準ギブズエネルギ一変化(kJ・mol-1 )の値に 最も近いのはどれか。1 つ選べ。 ただし ファラデー定数 F = 9.65 × 104 C・mol -1 とする。 1 -49.9 2 -23.7 3 -11.9 4 11.9 5 23.7 電位差は、約 0.12 です。 公式である ΔG = -nFE に数値を代入して計算します。 ※ n は、電子の係数を揃えた時の係数です。 本問では、もともと係数が揃っているため 2 を、そのまま代入します。 ※ 選択肢から、それほど厳密な計算が必要ないので F = 10 ✕ 104 で近似します。 ※標準電極電位の差が起電力 E です。 E = 0.12 を代入します。 - 2 ✕ (10 ✕ 104 )✕ 0.12 ≒-24000 です。 標準ギブズエネルギ一変化の単位が kJ・mol-1 となっているため k を用いると -24000 = -24k となります。 従って、一番近い値は -23.7 です。 以上より、正解は 2 です。 問95 低分子やイオンの水溶液中における 拡散係数 D に関する記述のうち正しいのはどれか。 2つ選べ。 ただし、理想状態における拡散を仮定する。 1 D は水和による影響を受けない。 2 D は溶液の粘度に反比例する。 3 D は絶対温度に比例する。 4 D は溶質の半径に比例する。 5 D は溶質の濃度に比例する。 拡散係数とは、溶解速度に関する ネルンスト-ノイエス-ホイットニー (Nernst-Noyes-Whitney)の式におけるパラメータです。 ※左辺は溶解速度という意味です。 ※Dは拡散係数と呼ばれる数で さらに で表されます。 ηが、溶液の粘度です。 イメージとしては ネバネバしてる液では、溶解しにくいというイメージです。 r は粒子の半径です。 イメージとしては 粒子の半径が大きいほど溶けにくいイメージです。 Tは温度です。 温度が高いほうが溶けやすいイメージです。 R、N、πは定数です。 選択肢 1 ですが 水和すると、粒子の半径が大きくなったようなものと 考えられるので、r が変化します。 水和による影響がないとはいえません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが 粘度 η と、拡散係数 D は 式より、反比例します。 よって、選択肢 2 は正しいです。 選択肢 3 ですが 絶対温度 T と、拡散係数 D は 式より、比例します。 よって、選択肢 3 は正しいです。 選択肢 4 ですが 溶質の半径 r と、拡散係数 D は 式より、反比例します。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが 溶質の濃度 C と、拡散係数 D は 式にCが入っておらず、関係ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2,3 です。 参考) 問95 0.10 mol/L リン酸 400mL と 0.20 mol/L 水酸化ナトリウム 300 mL を混合した 水溶液の 25℃における pH に最も近いのはどれか。 1つ選べ。 ただし、リン酸の pKa1 = 2.12、 pKa2 = 7.21、 pKa3 = 12.32 ( 各25℃ )とする。 また、 log2 = 0.30、 log3 = 0.48 とする。 1 4.7 2 6.9 3 7.2 4 7.7 5 9.8 H3PO4 + NaOH →NaH2PO4 +H2O ① H2PO4 + NaOH → NaHPO4 +H2O ② HPO4 + NaOH → NaPO4 +H2O ③ と段階的に中和がおきると考えられます。 0.10 mol/L のリン酸 400 ml は、0.10 × 0.4 = 0.04 mol です。 又、0.20mol/L の水酸化ナトリウム 300 ml は、 0.20 × 0.3 = 0.06 mol です。 だから、水酸化ナトリウムを全て加えた時点で 中和は、①は完全に終わって、②の丁度半分まで終わっていると考えられます。 ここで pH = pKa の時が、分子形とイオン形の比が 1:1 であることから (Henderson-Hasselbalch の式より) 丁度pH = pKa2 だと考えられます。 よって、一番近いのは、選択肢 3 です。 問95 日本薬局方フェニレフリン塩酸塩の定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 本品を乾燥し、その約 0.1 g を精密に量り、ヨウ素瓶に入れ、水 40 mLに溶かし、0.05 mol/L 臭素液 50 mLを正確に加える。更に塩酸 5 mLを加えて直ちに密栓し、振り混ぜた後、15 分間放置する。次にヨウ化カリウム試液 10 mLを注意して加え、直ちに密栓してよく振り混ぜた後、5 分間放置し、遊離したヨウ素を 0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液で滴定する(指示薬:デンプン試液 1 mL)。同様の方法で空試験を行う。 1 本品1モルに対して、3モルの臭素が反応する。 2 臭素1モルに対して、3モルのヨウ化カリウムが反応する。 3 ヨウ素1モルに対して、1モルのチオ硫酸ナトリウムが反応する。 4 チオ硫酸ナトリウム液による滴定は、中和滴定である。 5 チオ硫酸ナトリウム液の滴定量は、空試験の方が多くなる。 定量問題は、とっかかりにくい問題ではないかと思います。 勉強する時に、少し楽になったポイントは、実験的に大雑把な記述を読み飛ばすことでした。 この問題を例に上げると、「精密に」とか、濃度も含めて書いてある試薬にのみ注目するということです。 つまり、水、塩酸に関しては気にしません。ヨウ化カリウムは注意してとあるので、考慮に入れます。 すると、結局の所 「フェニレフリン + 臭素」 →「ヨウ化カリウムを加える」 →「ヨウ素が遊離する」 →「遊離したヨウ素を、チオ硫酸ナトリウムで滴定」 という実験になります。 ここで、臭素とヨウ化カリウムで、ヨウ素が遊離するのは 以下の化学式を考えると納得がいくのではないかと思います。 すなわち Br2 + 2KI → 2KBr + I2 です。 よって、臭素 1 モルに対して反応するのは 2 モルのヨウ化カリウムであるため 選択肢 2 は誤りです。 又、この実験では、最初にフェニレフリンと臭素が反応すると考えられます。 すなわち、存在する薬(フェニレフリン)の量だけ、臭素が少なくなり その分遊離するヨウ素が減るため、ヨウ素を滴定することで 間接的にフェニレフリンの量がわかると考えられます。 さて、フェニレフリンと臭素の反応ですが フェニレフリンの主要な官能基は、名前も含めて考えると フェノールではないかと推測されるのではないでしょうか。 すると、フェノールと臭素といえば 2,4,6-トリブロモフェノールが生じると考えられます。 つまり、本品 1 モルに対し、臭素 3 モルが反応します。 以上より、正解は 1、5 です。 ちなみに、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの反応は 以下の式で表される酸化還元反応です。 2S2O32− + I2 −→ S4O62− + 2I− 式の係数に注目すれば、選択肢 3 は誤りです。 又、中和反応ではないため、選択肢 4 は誤りです。 この式は国家試験で頻出なので、見慣れておくと よいかと思います。 |