101回 問166 薬物の生体膜透過機構に 関する記述のうち 正しいのはどれか。2 つ選べ。 1 単純拡散では 薬物は濃度勾配に従って透過し その透過速度は Michaelis-Menten式により 表すことができる。 2 促進拡散は トランスポーターを介した輸送であるため 構造の類似した化合物の共存により 透過速度が低下する場合がある。 3 一次性能動輸送は ATP の加水分解により得られる エネルギーを直接利用する。 4 膜動輸送による 高分子の細胞内取り込みでは 生体膜自体の形態的変化は起きない。 選択肢 1 ですが 前半部分は正しい記述です。 後半部分が、透過速度は 「Fick の式」で表すことができます。 Michaelis-Menten式は 酵素反応の速度式における 反応速度を表す式です。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2,3 は、正しい記述です。 ちなみに、二次性能動輸送は ATP を利用して得たエネルギーで まず、イオン濃度勾配を作ります。 その後、イオン濃度の差を用いて 物質輸送を行います。 選択肢 4 ですが 膜動輸送とは、細胞膜が 変形することによる輸送です。 細胞膜とは、生体膜なので 形態変化が起きています。 よって、選択肢 4 は誤りです。 以上より、正解は 2,3 です。 100回 問166 薬物の吸収に関する記述のうち 正しいのはどれか。2 つ選べ。 1 口腔粘膜から吸収される薬物は 肝初回通過効果を回避できるが 小腸と比較して口腔の粘膜が非常に厚いため 速やかな吸収が期待できない。 2 肺からの薬物吸収は 一般に、Ⅰ型肺胞上皮細胞を介した 単純拡散によるものである。 3 皮膚の角質層の厚さには部位差があることから 薬物の経皮吸収も部位により大きく異なることがある。 4 鼻粘膜は、主に吸収を担う 多列繊毛上皮細胞が密に接着していることから バリアー機能が高く、一般に薬物吸収は不良である。 5 坐剤の適用は、即効性は期待できるものの 経口投与時と同程度に肝初回通過効果を受ける。 選択肢 1 ですが 口腔粘膜からの吸収は 肝初回通過効果を回避し、速やかに行われます。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2,3 は、正しい選択肢です。 選択肢 4 ですが 胃での分解を避けるために 点鼻薬を用いることがあることなどをふまえると 一般に薬物吸収が不良であるとは いえないと考えられます。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが 坐剤を使用すると 直腸下部(おしりに近い方)からの吸収において 肝初回通過効果を避ける事ができます。 (直腸上部からの吸収は 肝初回通過効果を受けます。) ちなみに 吐き気止めであるナウゼリン坐剤や 解熱薬であるジアゼパム坐剤などが 代表的な薬です。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2,3 です。 99回 問166 薬物の生体膜輸送についての記述のうち 正しいのはどれか。2つ選べ。 1 単純拡散による輸送速度は 薬物濃度差に比例するが 促進拡散及び能動輸送では飽和性が見られる。 2 単純拡散による輸送は 生体エネルギーを必要としないが 促進拡散及び能動輸送では 生体エネルギーを必要とする。 3 単純拡散及び促進拡散の場合 薬物の濃度勾配に従って輸送されるが 能動輸送では 濃度勾配に逆らって輸送される場合がある。 4 能動輸送はトランスポーターを介して起こるが 単純拡散及び促進拡散には トランスポーターは関与しない。 5 単純拡散及び促進拡散の場合 構造類似体の共存による影響は受けないが 能動輸送では影響を受ける場合がある。 選択肢 1 は、正しい記述です。 選択肢 2 ですが 生体エネルギーを要するのは、能動輸送です。 促進拡散では、生体エネルギーは必要ありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は、正しい記述です。 選択肢 4 ですが 促進拡散には、トランスポーターが関与します。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが 構造類似体の共存を受けるとは 輸送にトランスポーター(担体)が 関与していると読みかえる事ができます。 促進拡散は、トランスポーターが関与しており 構造類似体の影響を受けるといえます。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1,3 です。 98回 問166 薬物の消化管吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。 1つ選べ。 1 弱酸性薬物を経口投与した場合胃で溶解した後、小腸で析出し、吸収が不良となることがある。 2 弱塩基性薬物の単純拡散による吸収は一般に、溶液のpH が低い方が良好である。 3 多くの薬物は、胃で良好に吸収されるため胃内容排出速度の変化により吸収が影響を受けることはない。 4 リボフラビンは脂溶性が高く、小腸全体から良好に吸収される。 5 アンピシリンは、親水性が高く膜透過性が低いため吸収改善のための脂溶性プロドラッグが開発されている。 小腸内のpHはややアルカリ性です。 よって、弱酸性薬物は、イオン型の割合が増える、つまり、より溶解するはずです。 小腸で析出し、吸収が不良になるとは考えられず、選択肢 1 は誤りです。 単純拡散による吸収は、分子型の薬物分子においてのみおきます。 弱塩基性薬物は、 pH が低いと、よりイオン型になると考えられるため 一般に、吸収が不良になると考えられます。 よって、選択肢 2 は誤りです。 多くの薬物は、小腸で吸収されます。 よって、一般に、胃内容排出速度が速ければ、より速く吸収されます。 選択肢 3 は誤りです。 リボフラビンは、十二指腸で吸収されます。 小腸全体から吸収されるわけではないので、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 はその通りの記述です。 アンピシリンのプロドラッグとして、バカンピシリンなどがあります。 以上より、正解は 5 です。 97回 問166 薬物吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 1 鼻粘膜は、全身作用を目的としたペプチド性薬物の投与部位として利用されている。 2 吸入されたステロイドは、その大部分が全身循環血に吸収され治療効果を示す。 3 ニトログリセリンの経皮吸収型製剤は、胸の近傍に貼付しなければならない。 4 ウィテプゾールを基剤とする坐剤は、体温で基剤が融解し主薬が吸収される。 鼻粘膜は、全身作用を目的としたペプチド性薬物の投与部位として利用されています。 代表例は、デスモプレシン点鼻液です。 デスモプレシンはバソプレシンの誘導体で、9つのアミノ酸からなるペプチドです。 そのため、経口投与では、分解されてしまいます。 中枢性尿崩症や、夜尿症の治療に用いられます。 吸入されたステロイドは、気道や肺において局所作用を示します。 量がとても少ない上に、気道や肺粘膜から吸収されにくく、全身作用は ほとんど見られません。 よって、大部分が全身循環血に吸収され治療効果を示すわけではないので 選択肢 2 は誤りです。 ニトログリセリンの経皮吸収型製剤は、胸、腰、腕などに貼って使用します。 新しい薬に貼り替える時に、皮膚のかぶれなどを避けるために、貼っていた所とは 異なる場所に貼るよう、指導が必要な薬です。 よって、胸の近傍に貼付しなければならないわけではないので 選択肢 3 は誤りです。 ウィテブゾールは、坐剤の基剤の1つです。 疎水性基剤に分類されます。 体温で溶解し、薬物が放出されます。 以上より、正解は 1,4 です。 101回 問167 薬物の組織分布に関する記述のうち 正しいのはどれか。2 つ選べ。 1 組織移行性の大きい薬物の分布容積は 血漿容積に近い値となる。 2 組織成分との結合が強い薬物の分布容積は 総体液量を超えることがある。 3 薬物の組織分布が平衡に達すると 血漿中と組織中の非結合形分率は等しくなる。 4 組織中非結合形分率に対する 血漿中非結合形分率の比が大きい薬物ほど 分布容積は大きい。 5 炎症性疾患時には α1 - 酸性糖タンパク質の血漿中濃度が低下し 塩基性薬物の分布容積が増大する。 分布容積とは、Vd = D/C0 です。 (1-コンパートメント。 つまり注射したら すべて一瞬で全身へ薬が広がる と仮定。 現実的には、静注と仮定。) 極端な例を考えると イメージしやすいので 以下、極端な分布を考えます。 1:「薬は、全て血中に残る。 組織に分布しない。」 全く組織に分布しなかったとしたら 血中に全ての薬があるはずです。 この時、血中濃度は D/血の量(詳しくいうと、血漿の量) です。 そして、分布容積は D/(D/血の量) なので 「血の量」 と等しくなります。 つまり 分布容積が、血の量( 5L 付近)に近い場合 「投与した薬は、結局血管にとどまった」 というイメージでOKです。 2:「薬が、どんどん組織へ分布。 投与した薬は、血中にほとんど残らない・」 この場合、血中濃度は、限りなく 0 に近い 小さな値です。 0.01 とかにしてみます。 すると、分布容積は D/0.01 = 100D とかになります。 つまり、分布容積が 100 L とか 1000 L とかだったら 「投与した薬は、あっという間に 体の組織に分布した」 というイメージでOKです。 以上をふまえて 選択肢 1 を検討します。 分布容積が、血漿容積と等しい ということは 投与した薬 D が、血漿にしか分布しなかった という解釈ができます。 ということは、組織移行性は、低いです。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は、正しい記述です。 極端な例として 組織との結合がとてつもなく強くて 投与した薬のほぼ全てが組織に移行し 結合したとしたら C0がとても少なくなるので どんな大きな値もとれます。 よって、総体液量 を超えることが あるだろうと考えられます。 選択肢 3 ですが、極端な例として 血漿中でアルブミン (薬物と結合するタンパク質の一種)が たくさんあって 組織内は アルブミンも、他のタンパク質もあまりない という環境だったとすれば 薬物濃度が平衡に達したとしても タンパク質と結合していない率である 非結合分率は、等しくならないと考えられます。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は、正しい記述です。 血中から、組織に分布するのは 「非結合型」です。 血中において、より非結合型になるなら いっぱい組織に移行する、ということです。 よって、分布容積は大きいと考えられます。 選択肢 5 ですが α1 酸性タンパク質は、感染症などによる 炎症時に増えるタンパク質です。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2,4 です。 100回 問167 薬物代謝に関する記述のうち 正しいのはどれか。2 つ選べ。 1 シトクロムP450(CYP)による 酸化的代謝と比較して 抱合代謝やアルコールの酸化は 肝疾患による影響を受けにくい。 2 高齢者では、CYP による酸化的代謝と グルクロン酸抱合代謝が同程度に低下する。 3 喫煙はCYP1A2の誘導を引き起こし トリアゾラムの血中濃度を低下させる。 4 CYP の遺伝子多型では 代謝活性が上昇する場合や低下する場合がある。 選択肢 1 は、正しい選択肢です。 選択肢 2 ですが 通常、年齢は 抱合による代謝を受ける薬物のクリアランスに 大きく影響しません。 一方で、CYP 3A4 などは 加齢により活性低下が見られます。 同程度に低下するとは、いえません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが 喫煙が、CYP 1A2 の誘導を引き起こします。 しかし、トリアゾラムの代謝は 主に CYP 3A4 で行われます。 そのため、血中濃度は ほとんど変化しないと考えられます。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は、正しい選択肢です。 以上より、正解は 1,4 です。 99回 問167 薬物の経口吸収動態についての記述のうち 正しいのはどれか。2つ選べ。 1 インドメタシンファルネシルは 高脂肪食を摂取した後に服用すると 脂肪成分と結合するため、吸収量が減少する。 2 リファンピシンの反復投与により 小腸上皮細胞の P -糖タンパク質の発現が誘導され ジゴキシンの吸収量が増大する。 3 リボフラビンは 十二指腸付近のトランスポーターにより吸収されるので プロパンテリン臭化物の併用により吸収量が増大する。 4 セファレキシンの吸収は ペプチドトランスポーター PEPT1 を介した Na+ との共輸送により行われる。 5 グリセオフルピンは その粒子径が小さいほど有効表面積が大きく 溶解が速いため、吸収速度が大きい。 選択肢 1 ですが インドメタシンファルネシル(インフリー)は 高脂肪食摂取後服用で、作用が増大します。 これは、薬剤が脂肪とミセルを形成することで 吸収が増大するからです。 吸収量が減少するわけでは、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが 小腸上皮細胞の P -糖タンパク質(P-gp)は 薬物を小腸側へと排出するトランスポータです。 P-gp の発現が誘導によって増加すると ジゴキシンの吸収量は、減少します。 吸収量が増大するわけでは、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は、正しい記述です。 選択肢 4 ですが ペプチドトランスポーター PEPT 1 は H+ 濃度勾配を駆動力とする 二次性能動輸送体です。 Na+ との共輸送ではありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 は、正しい記述です。 以上より、正解は 3,5 です。 98回 問167 薬物の経皮吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 表皮の最も外側は角質層と呼ばれ、薬物の皮膚透過のバリアーとなる。 2 汗腺や毛穴などの付属器官は有効面積が小さいので、薬物吸収への寄与は少ない。 3 経皮投与では薬物の肝初回通過効果を回避できない。 4 皮膚組織には代謝酵素が存在しないため、経皮吸収改善を目的としたプロドラッグ化は有効ではない。 5 皮膚をフィルムで密封すると角質層が水和し、薬物の皮膚透過性は低くなる。 選択肢 1,2 はその通りの記述です。 経皮投与では、薬物の肝初回通過効果を避けることができます。 すなわち、吸収後、すぐに循環血へと薬物が移行します。 よって、選択肢 3 は誤りです。 皮膚組織にも代謝酵素は存在します。 よって、選択肢 4 は誤りです。 皮膚をフィルムで密封すると、薬物の皮膚透過性は高くなります。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1,2 です。 97回 問167 単純拡散による薬物の生体膜透過に関する記述のうち、正しいのはどれか。 1つ選べ。 1 イオン形薬物は、非イオン形薬物と比べて透過性が高い。 2 脂溶性薬物は、水溶性薬物と比べて透過性が高い。 3 高分子薬物は、低分子薬物と比べて透過性が高い。 4 透過速度はMichaelis-Menten式で表される。 5 構造類似薬物の共存により、透過速度が低下する。 単純拡散においては、脂溶性が高い、分子形薬物ほど、透過性が高くなります。 つまり、非イオン薬物の方が、イオン形薬物よりも透過性が高いです。 これはFickの法則と呼ばれます。 よって、イオン形薬物の方が、非イオン形薬物とくらべて透過性が高いわけではないので 選択肢 1 は誤りです。 単純拡散においては、脂溶性が高いほど、透過性が高くなります。 よって、脂溶性薬物は、水溶性薬物と比べ、透過性が高くなります。 単純拡散において、分子量は、透過性と関連がありません。 よって、高分子薬物が、低分子薬物とくらべて透過性が高いわけではないので 選択肢 3 は誤りです。 単純拡散の透過速度は、Fickの法則で表されます。 Michaelis-Menten式ではないので、選択肢 4 は誤りです。 ちなみに、Michaelis-Menten式は、酵素の反応速度に関する式です。 単純拡散において、構造類似薬物の共存は、透過性と関連がありません。 よって、構造類似薬物の共存により、透過速度が低下するわけではないので 選択肢 5 は誤りです。 ちなみに、構造類似薬物の共存により、透過速度が低下するのは 促進拡散や能動輸送といった、トランスポーターが介在する物質輸送と 考えられます。 以上より、正解は 2 です。 101回 問168 薬物A 10mg を静脈内投与した後の 血中濃度時間曲線下面積 (AUC)は250μg・h/L であり 尿中に未変化体として5mg が排泄された。 また、10mg を経口投与した後のAUC は 45μg・h/L であり 糞便中に未変化体として2mg が排泄された。 薬物Aの小腸利用率 (小腸アベイラビリティ)として適切なのは どれか。1 つ選べ。 ただし、薬物Aの消化管管腔中での 代謝・分解は無く 静脈内投与後は肝代謝と 腎排泄によってのみ消失し 消化管管腔中への分泌 胆汁中排泄は無いものとする。 また、薬物Aの体内動態には 線形性が成り立つものとし 肝血流速度は 80L/h とする。 1 0.04 2 0.2 3 0.3 4 0.6 5 0.9 薬物を 10mg 静注すると AUC が 250 ug・h/L だったのに 経口で 10mg 摂取すると AUC が 45 ug・h/L だった →「経口では、10mg のうち、一部しか 血流に入っていない。 」とわかります。 10mg 経口摂取して x mg 血流に入ったとすると AUC が 45 ug・h/L だったのだから 10 : 250 = x : 45 と考えられるので x = 1.8 です。 一方 「CLtot = D/AUC (これは、公式)」 単位を合わせて 10 mg = 10 × 1000 μg として CLtot = 10 × 1000 / 250 = 40 L/h です。 また 本問では、薬物消失が 肝代謝と腎排出だけとあり かつ、10 mg 静注した時に 腎排出が半分の 5 mg つまり 半分が腎によるクリアランスだから CL腎 = CL 肝 = 20 L/h とわかります。 後は 肝血流速度が与えられているので 「CL肝=肝抽出率 × 肝血流 (公式)」 より 20 = 肝抽出率 × 80 だから 肝抽出率は、1/4 です。 さて、経口投与した時の薬物は 10mg 投与 → 2mg は、そのまま糞便へ。 これは吸収すらされていません。 そして 8mg のうち、ある程度が 「小腸を通過(小腸利用率 を掛ける)」 →「肝初回通過をクリア(1-肝抽出率 を掛ける)」 →「血中へ(これが、1.8 mg)」 という関係です。 以上より 8 × (小腸利用率) × (1-1/4) = 1.8 です。 小腸利用率は 0.3 です。 正解は 3 です。 100回 問168 肝臓で一部が代謝され 一部は未変化体のまま胆汁排泄される薬物について その肝クリアランスが低下する要因となり得るのはどれか。 2 つ選べ。 1 心拍出量の増大 2 血中タンパク結合の阻害 3 肝取り込みの阻害 4 肝代謝酵素の誘導 5 胆汁排泄の阻害 肝クリアランスは 血流量 Q × 抽出率 Eh で表されます。 (これは、覚えている必要はなくて 「肝クリアランス=肝臓でどれくらい薬物が除かれるか」 であり 薬物を運んでくるのは血液だから、Q に比例 して 肝臓が薬をどれだけ取り除くかが抽出率 と考えれば思い出せるのではないでしょうか。 ちなみに 抽出率 は、より具体的に考えると 肝代謝酵素 だったり 血中タンパク質との薬物の結合が関与します。 それらを含んだ式も見たことがあると思います。) 選択肢 1 ですが 心拍出量が増加すると 心臓がバクバク動くので 血流量が増加すると考えられます。 すると、肝臓へ流れ込む血液量も増加し 肝臓へ流れ込む薬物量も増加します。 よって、肝クリアランスは増加すると考えられます。 低下する要因では、ありません。 イメージとしては 舞台がスーパーなどのお会計で 肝臓を、「レジ」 血液を、「レジに並ぶ人」 薬を、「人が持っているカゴの中身」 肝クリアランスを、「レジで商品バーコードをスキャンした量」 とたとえまして レジに並ぶ人(=血液量)がどんどん増えてくれて レジがフル回転して どんどんカゴの中身をスキャンすることができ スキャンした商品の量、すなわち肝クリアランスは 増加するというイメージです。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが 血中タンパク結合の阻害 がおきると 薬物は血中でフリーになります。 すると、肝臓へとより分布するので 肝クリアランスは増加すると考えられます。 低下する要因では、ありません。 イメージとしては 先のレジのたとえに加えて 「商品が、盗難防止目的で 棚から取り出せなくなっている状態」が 血中タンパク質と結合している薬物 と考えるとよいかもしれません。 血中タンパク結合が阻害される とは 店員さんを呼んで商品をわざわざ 取り出してもらわなくても大丈夫になる →商品をさくさくとれる →どんどんとってレジにもっていける →レジにもっていく商品の量が多くなる →スキャンする商品の量が多くなる というイメージです。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は、正しい選択肢です。 肝取り込みが阻害されるとは 先のたとえでいうと 数台あるレジのうち、何台かにおいて レジトラブルがおきた ようなものです。 急にこむし、流れは滞って スキャンする商品の量は減少する イメージです。 選択肢 4 ですが 肝代謝酵素が誘導されると 肝臓でどんどん薬が代謝されるようになり 肝クリアランスは増加すると考えられます。 低下する要因では、ありません。 先のたとえでいうと レジ応援がいっぱいきてくれて 各レジに2人ついてくれて がんがんスキャンしてくれて スキャンする商品の量は増加する イメージです。 選択肢 5 は、正しい選択肢です。 胆汁排泄の阻害がおきるとは 先のたとえに加えて レジスキャンしないで、テープだけ貼って処理する ドリンクの箱ケース買い が 胆汁排泄であると考えるとよいかもしれません。 (この場合は、テープを貼れば スキャンした商品の量に加わっていると考えます。) そして、阻害がおきるとは ちょうどテープが切れてしまい、わたわたしている状態のようなものです。 ひとまず 他の商品はスキャンして通すことができますが ドリンクが処理できず 全体としては、スキャンする商品の量が減少します。 以上より、正解は 3,5 です。 99回 問168 下図は 薬物と血漿タンパク質との結合実験の結果から得られた 両逆数プロットである。 この薬物の血漿タンパク質に対する結合定数 K ((μ mol/L)-1)として 最も近い値はどれか。1つ選べ。 ただし、図中の r は 血漿タンパク質1分子あたりに結合している薬物の分子数を [Df](μ mol/L) は非結合形薬物濃度を示す。 1 25 2 50 3 100 4 125 5 250 両逆数プロットとは、以下の式のグラフです。 ※ r : タンパク1分子あたり結合分子数 ※ n : 結合部位数 ※ K : 結合定数 ※ [ Df ] : 非結合形薬物濃度 横軸は、 1 / [ Df ] 、縦軸は 1 / r です。 よって、1 /n ・ k が傾きを表します。 又、1 / n が、y 切片です。 グラフを見ると y 切片が 1 なので、 n = 1 です。 傾きは、大体 1/125 なので 最も近い選択肢は 4 です。 以上より、正解は 4 です。 98回 問168 血液脳関門に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 血液脳関門の実体は、脈絡叢上皮細胞である。 2 分子量の大きな薬物は、血液脳関門を透過しやすい。 3 血液脳関門には種々の栄養物質の輸送系が存在し、一部の薬物はこの輸送系によって脳内へ分布する。 4 薬物の水溶性が高いほど、単純拡散による脳への移行性は大きい。 5 脳毛細血管内皮細胞に存在するP-糖タンパク質は、一部の薬物の脳内移行を妨げている。 血液脳関門の実体は、脳毛細血管内皮細胞です。 よって、脈絡叢上皮細胞ではないので、選択肢 1 は誤りです。 分子量 500 を超える分子は、ほぼ通過できません。 よって、分子量が大きな薬物が通過しやすいというわけではないので 選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 はその通りの記述です。 血液脳関門の通過のしやすさは、脂溶性とよく相関します。 つまり、脂溶性が高いほど、よく拡散します。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 はその通りの記述です。 以上より、正解は 3,5 です。 97回 問168 薬物の組織移行に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 皮膚、筋肉、脂肪などの組織では、組織単位重量あたりの血流量が小さいために、一般に血液から組織への薬物移行が遅い。 2 脈絡叢では上皮細胞どうしが強固に結合し、血液脳脊髄液関門を形成している。 3 分子量5,000以下の薬物は、筋肉内投与後、リンパ系に選択的に移行する。 4 組織結合率が同じ場合、血漿タンパク結合率が低い薬物に比べ高い薬物の分布容積は大きい。 薬物が組織に移行する速度は、組織への血流速度などに依存します。 血液の流れに乏しい組織(例として、皮膚や筋肉や脂肪)では、分布が一般に遅くなります。 脈絡叢とは、脳脊髄液を産生する部位です。 上皮細胞同士が密着結合をした、血液脳脊髄液関門が形成されています。 皮下投与や、筋肉内投与を行った薬物は、分子量が5000以上になると リンパ管系へと移行する傾向が見られます。 よって、分子量5000以下の薬物が、筋肉内投与後、リンパ系に選択的に移行するわけではないので 選択肢 3 は誤りです。 まず、血漿タンパクと結合している薬物は、組織へと移行することができません。 又、分布容積とは、投与した薬物量と、血中濃度の比です。 言い換えると、投与した薬物がどの程度組織へと移行したかを示す量であり 分布容積が大きいほど、組織へと移行したことを示します。 よって、血漿タンパク結合率が高い薬物の方が、組織へと移行しづらく 分布容積は小さい値を示すはずなので、選択肢 4 は誤りです。 以上より、正解は 1,2 です。 101回 問169 薬物の腎排泄に関する記述のうち 正しいのはどれか。2 つ選べ。 1 糸球体の基底膜は 陽性に帯電しているため 酸性薬物は塩基性薬物より ろ過されやすい。 2 投与された薬物のすべてが 腎排泄によって消失するとき その腎クリアランスは クレアチニンクリアランスにほぼ等しい。 3 フェノールスルホンフタレインは 主に尿細管分泌により体内から消失するため 腎機能測定に用いられる。 4 OAT1は近位尿細管上皮細胞の 刷子縁膜に存在し 細胞内の有機カチオンを 管腔内へ排出する。 5 尿細管における 弱塩基性薬物の再吸収は 尿のpH が大きくなると増大し その腎クリアランスは低下する。 選択肢 1 ですが 糸球体の基底膜は ネガティブチャージです。 陰性に帯電です。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが クレアチニンクリアランスは 糸球体ろ過 を反映します。 そして 腎排泄の経路は、糸球体ろ過 の他に 尿細管分泌 もあります。 全てが腎排泄 であっても 全てが糸球体ろ過 とは限りません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は、正しい記述です。 選択肢 4 ですが OAT とは organic 「anion」 transporter の略です。 排出するのは、有機「アニオン」です。 カチオンでは、ありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 は、正しい記述です。 pH が大きい → 塩基性薬物は、より分子 → 膜 通過しやすいから、再吸収増加 → 再吸収されると、血中に戻るから 腎からの排出は、少なくなる。 つまり、腎クリアランス低下 です。 以上より、正解は 3,5 です。 100回 問169 新生児・小児の薬物動態に関する 記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。 1 新生児では成人に比べ 体重当たりの総体液量が多いので 水溶性薬物であるセフェム系抗生物質などは 体重当たりの投与量が 成人より多めに設定されることが多い。 2 新生児の体表面積当たりの 糸球体ろ過速度は成人の20~ 30%であり 成人と同程度になるには5~7年を要する。 3 フェニトイン代謝能は、生後、急激に上昇する。 4 一般に、硫酸抱合と比較して グルクロン酸抱合代謝能の発達は早い。 5 1~3歳児における テオフィリンの体重当たりのクリアランスは 成人より低い。 選択肢 1 は、正しい選択肢です。 赤ちゃんの方が みずみずしくプリっとしていることから 前半の記述(体重当たりの体液量が多い)を イメージするとわかりやすいかもしれません。 選択肢 2 ですが 新生児の糸球体ろ過速度は 生後半年弱で成人と同程度になります。 5~7年は要しません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は、正しい選択肢です。 選択肢 4 ですが 硫酸抱合と、グルクロン酸抱合が逆です。 新生児の抱合能に関して グルクロン酸抱合能の発達は遅い という点を 特に意識して覚えておくとよいです。 (サリチル酸やアセトアミノフェンが 成人では、グルクロン酸抱合体として排泄されるが 10歳未満では、硫酸抱合体として排泄される といった違いに反映されます。) よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが 低いではなく、高いです。 小児の方が代謝活性が高い 代表的な薬物として フェノバルビタール、フェニトイン カルバマゼピン、テオフィリンなどがあります。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1,3 です。 99回 問169 イトラコナゾールによるシトクロム P450 (CYP) の 阻害機構はどれか。1つ選べ。 1 CYP のアポタンパク質に配位結合する。 2 CYP のアポタンパク質に共有結合する。 3 CYP のヘム鉄に配位結合する。 4 CYP のヘム鉄に共有結合する。 5 CYP の分解を促進する。 イトラコナゾールは アゾール系抗真菌薬です。 アゾール系は、CYP のヘムに配位結合する事で 阻害します。 よって、正解は 3 です。 98回 問169 薬物の肝臓への分布及び胆汁中排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 肝実質細胞の血管側膜には種々の輸送担体が発現し、多くのアニオン性薬物やカチオン性薬物の肝取り込みに関与している。 2 肝実質細胞から毛細胆管への薬物輸送機構は、多くの場合、薬物の濃度勾配を利用した単純拡散である。 3 分子量の小さい薬物ほど、胆汁中へ排泄されやすい。 4 血中においてアルブミンに結合している薬物もDisse腔に入り、肝実質細胞の近傍に到達することができる。 5 肝臓において抱合代謝を受け、胆汁中に排泄された薬物は、一般に分子量が大きく親水性が高いので、すべて糞便中へ排泄される。 選択肢 1 はその通りの記述です。 薬物の胆汁中への排泄は、主に能動輸送によるものです。 よって、選択肢 2 は誤りです。 胆汁中へ排泄されやすいのは、分子量が約 500 以上であり、脂溶性が高いものです。 よって、分子量の小さい薬物ほど胆汁中へ排泄されるわけではないです。 選択肢 3 は誤りです。 Disse (ディッセ)腔とは、肝臓における肝細胞と、類洞(毛細血管)の間の領域です。 血しょうが分布しており、記述の通り、血中においてアルブミンに結合している薬物も Disse腔に入り、肝実質細胞の近傍に到達することができます。 胆汁中に排泄された薬物の一部は、腸管から再度吸収され 門脈を経て肝臓に戻る循環を経ます。 これを腸肝循環と呼びます。 よって、すべて糞便中に排泄されるわけではありません。 選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1,4 です。 97回 問169 シトクロムP450 (CYP) に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 ヒト肝組織中の存在量が最も多い分子種はCYP2D6である。 2 エタノールの生体内での酸化反応に関与する。 3 グルクロン酸抱合反応を担う主な酵素である。 4 遺伝的要因によりCYP2C19の代謝活性が低い人の割合は、白人と比較して日本人の方が少ない。 5 セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含む健康食品の摂取で、CYP3A4の誘導が起こる。 存在量が最も多い分子種はCYP3A4です。 よって、2D6 ではないので、選択肢 1 は誤りです。 CYP2E1 は、エタノールをアセトアルデヒドに代謝する酵素です。 アルコールからアルデヒドへの変換は、酸化反応です。 CYPは酸化反応を担っています。 グルクロン酸抱合反応を担うのは、UDP-グルクロニルトランスフェラーゼです。 よって、選択肢 3 は誤りです。 遺伝的要因により、CYP2C19の代謝活性が低い人の割合は 白人が約3%、日本人が約20%です。 よって、遺伝的要因によりCYP2C19の代謝活性が低い人の割合は 日本人の方が多いので、選択肢 4 は誤りです。 セントジョーンズワートは、CYP3A4 の誘導を引き起こします。 そのため、CYP3A4 で代謝される薬物のいくつか(代表例はパロキセチン)と 併用に注意する必要のあるサプリメントです。 以上より、正解は 2,5 です。 101回 問170 薬物Aの血中濃度が 薬物Bの併用によって上昇する 組合せはどれか。2 つ選べ。 選択肢 1 は、正しい組合せです。 エリスロマイシンが CYP 3A4 阻害して シンバスタチン の血中濃度が上昇します。 選択肢 2 ですが リファンピシンは、CYP 3A4 を 誘導します。 そのため トリアゾラムの代謝を促進し 血中濃度を低下させる組み合わせです。 選択肢 3 ですが コレスチラミンが、陰イオン性薬物である プラバスタチンを吸着し、排泄を増加させます。 そのため プラバスタチンの血中濃度を 低下させる組み合わせです。 選択肢 4 は、正しい記述です。 共に有機カチオン輸送系で分泌されるので 排泄が阻害されることにより 血中濃度が上昇します。 選択肢 5 ですが ワルファリンとアスピリンは 共に血液サラサラ、抗血小板薬です。 血液凝固能が低下しすぎる懸念が ありますが、血中濃度に関しては 変化がないと考えられます。 以上より、正解は 1,4 です。 100回 問170 薬物を静脈内投与したとき、表に示すパラメータが得られた。 この薬物の全身クリアランスに関する記述として 最も適切なのはどれか。2 つ選べ。 ただし、この薬物は肝代謝と腎排泄によって体内から消失し 肝血流量は 100L/h とする。 1 肝血流量の変動の影響を顕著に受ける。 2 肝代謝酵素阻害の影響を顕著に受ける。 3 肝代謝酵素誘導の影響を顕著に受ける。 4 薬物が結合する 血漿タンパク質量の変動の影響を顕著に受ける。 5 腎機能の変動の影響を顕著に受ける。 全身クリアランスを、CLtot (表より、100 (L/h) ) 肝クリアランスを、CLh 腎クリアランスを、CLr とおきます。 (ちなみに h は、hepatic(肝臓の) の略 r は、renal(腎臓の) の略 です。) CLtot = CLh + CLr です。 尿中未変化体排泄率が 10 % だから 腎クリアランスが CLtot × 0.1 = 10 (L/h) です。 100 = CLh + 10 なので CLh = 90 (L/h) とわかります。 ここで、全身クリアランスのうち 90 % が 肝クリアランスなので 全身クリアランス≒肝クリアランスと考えます。 肝血流量が、問題文より 100 (L/h) で 肝クリアランスが、90 (L/h) とわかったので 肝抽出率(Eh)が、CLh/Qh なので 90/100 = 0.9 とわかります。 Eh > 0.7 の場合は CLh = Qh と考えてOKです。 すなわち、血流依存性薬物と考えられます。 以上より、肝クリアランスが、肝血流の影響を顕著に受け 全身クリアランス≒肝クリアランスであるため 全身クリアランスが、肝血流の影響を顕著に受ける ということがわかります。 従って、正解は 1 です。 99回 問170 クリアランスの定義は 消失速度 = クリアランス × C(濃度) です。 尿中排泄速度 と 腎クリアランス においては 「尿中排泄速度(dXu/dt ) = 腎クリアランス(CLr) × 血漿中濃度」 が成り立つと考えられます。 これは、すごく単純化してしまえば y = ax のようなものです。 ※ ただし、y,a,x 共に変数扱い。 ※ y が dXu/dt、a がCLr、x が 血漿中濃度 に対応 これをふまえて 選択肢 1 を見ると dXu/dt が一定のグラフになっています。 y = ax の、y が変わらない と考えてみると 「a が増えれば、x は減る もしくは、x が増えれば、y は減る」 という関係のはずです。 ところが、横軸である、血漿中濃度(x に対応)が増えると 縦軸の、CLr (a に対応)も、増えています。 つまり、「x が増えると、a も増える」という関係となっています。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は 正しいグラフです。 選択肢 3 は、正しいグラフなのですが 一定の値を取る変数がないため、ひとまず とばして、他の選択肢の正誤を判断し 消去法で考えたほうがわかりやすいと思います。 選択肢 4 ですが CLr(a に対応) が一定であるグラフです。 すると、血漿中濃度(x に対応)が増えると 縦軸の、CLr (a に対応)は 比例的(直線的)に増えていくと考えられます。 しかし、グラフは、上に凸なグラフになっています。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが dXu/dt が一定のグラフになっています。 y = ax の、y が変わらない と考えてみると 「a が増えれば、x は減る もしくは、x が増えれば、y は減る」 という関係のはずです。 ところが、横軸である、血漿中濃度(x に対応)が増えると 縦軸の、CLr (a に対応)も、増えています。 つまり、「x が増えると、a も増える」という関係となっています。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、選択肢 1,4,5 が誤りであるため 正解は 2,3 です。 98回 問170 薬物相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。 1つ選べ。 1 併用により薬物の血中濃度は変化せず、薬効が変化する相互作用を、薬物動態学的相互作用という。 2 併用により薬物の血中濃度が変化する相互作用を、薬力学的相互作用という。 3 薬物代謝酵素が、薬物の代謝物と共有結合することで阻害される場合、薬物が血中から消失しても、その酵素活性は直ちには回復しない。 4 併用薬剤数が多くなるほど、相互作用の発現を互いに打ち消しあうため、薬物相互作用が起こる可能性は小さくなる。 5 薬物代謝酵素の誘導は、その酵素で代謝される薬物によってのみ起こる。 併用により、薬物の血中濃度は変化せず、薬効が変化する相互作用は 薬力学的相互作用と呼ばれます。 よって、選択肢 1 は誤りです。 併用により、薬物の血中濃度が変化する相互作用は 薬物動態学的相互作用と呼ばれます。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 はその通りの記述です。 併用薬剤数が多くなるほど、相互作用が起こる可能性は大きくなります。 よって、選択肢 4 は誤りです。 薬物代謝酵素の誘導は、その酵素とは代謝において無関係な薬物によっても 誘導されることがあります。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 3 です。 97回 問170 P−糖タンパク質に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。 1 二次性能動輸送担体の1つである。 2 小腸上皮細胞に発現し、薬物の吸収を妨げる。 3 脳毛細血管内皮細胞に発現し、薬物の中枢移行を促進する。 4 肝細胞に発現し、薬物の胆汁排池を促進する。 5 腎尿細管上皮細胞に発現し、薬物の再吸収を促進する。 二次性能動輸送とは、一次性能動輸送すなわちATPを用いた 濃度勾配に逆らった物質輸送により生じた、イオン勾配を駆動力として 行われる物質輸送の形式です。 P-糖タンパク質による能動輸送は、ATPを直接用いた 一次性能動輸送です。 よって、二次性能動輸送担体の1つではないので、選択肢 1 は誤りです。 参考)ちなみに、P-糖タンパク質の Pは、permeability (透過性) の頭文字です。 多剤耐性化した腫瘍細胞における、薬物の膜透過性を変化させる要素として 発見されたという歴史的経緯を反映しています。 P-糖タンパク質は、様々な薬物を能動的に細胞外へ排出する役割を担っています。 言い換えると、薬物の細胞内への吸収を妨げます。 又、体内の様々な組織において発現し、小腸上皮細胞にも発現しています。 P-糖タンパク質は、血液脳関門における実態を担っています。 すなわち、中枢へと薬物が移行しないように、能動的に薬物の排出を行なっています。 ここで、血液脳関門とは、上皮細胞の密着結合のことであるため 毛細血管内皮細胞にP-糖タンパク質が発現しているわけではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 肝臓において発現しているP-糖タンパク質は、様々な薬物を胆汁中に 排泄する役割を果たしています。 速やかな薬物の排出に貢献しているといえます。 P-糖タンパク質は、腎尿細管上皮細胞にも発現しており 薬物を尿細管腔側へと排出しています。 すなわち、尿細管分泌を担っています。 よって、再吸収の促進ではないため、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2,4 です。 前の項目へ 目次へ 次の項目へ |