100-91~100-100 解説一覧


問91
分子間相互作用に関する記述のうち、
正しいのはどれか。
2つ選べ。

1 酸素原子の電気陰性度は
硫黄原子より大きいため
分子間に働く水素結合は 
H2O の方が H2S よりも強い。

2 静電的相互作用による
ポテンシャルエネルギーは
距離の 2 乗に反比例する。

3 分散力は、ロンドン力とも呼ばれ
そのポテンシャルエネルギーは
距離の 4 乗に反比例する。

4 ファンデルワールス相互作用は
分子間の距離により
引力として働く場合と
斥力として働く場合がある。

5 疎水性相互作用は
ファンデルワールス相互作用により
説明される。



選択肢 1 は、正しい選択肢です。



選択肢 2 ですが
静電的相互作用(クーロン相互作用)による
ポテンシャルエネルギーは
距離に反比例します。
距離の 2 乗に反比例するわけでは、ありません。


よって、選択肢 2 は誤りです。



選択肢 3 ですが
ロンドン力によるポテンシャルエネルギーは
距離の 6 乗に反比例します。
距離の 4 乗に反比例するわけでは、ありません。


よって、選択肢 3 は誤りです。



選択肢 4 は、正しい選択肢です。



選択肢 5 ですが
疎水性相互作用は
周囲の水の水素結合ネットワークへの影響を
小さくするようにしている、と説明されます。
ファンデルワールス相互作用で説明される
わけではありません。


よって、選択肢 5 は誤りです。



以上より、正解は 1,4 です。



問92 
下の図は
マクスウェル・ボルツマン分布則に基づいた
温度の異なる
ある理想気体の運動の速さ分布である。



図中の曲線 A は
温度 T1 = 150 K の場合
曲線 B は
温度 T2 の場合を示す。

気体の運動に関する記述のうち
正しいのはどれか。
2 つ選べ。

ただし、図中の分子運動は
並進運動のみを表しているものとする。



1 T2 は、約 300 K である。

2 各曲線における最大確率速度 
(頂点における速度)は
それぞれの平均の速さより小さい。

3 分子量が 2 倍、温度 T1 の
理想気体における分布曲線は
曲線 A と比べて
側にシフトし広がる。

4  温度が高くなれば、速さ分布は広がる。



選択肢 1 ですが
最大確率速度(最確速度)は
温度 T の平方根に比例します。

つまり、最確速度が 2 倍になる時
温度は 4 倍です。

T1 が 150 ℃なので、T2 は、600 ℃になります。
300 ℃では、ありません。


よって、選択肢 1 は誤りです。



選択肢 2 は、その通りの記述です。



選択肢 3 ですが
分子量が大きくなると、分布曲線は
左にシフトし、シャープになります。

イメージとしては
同じ温度であっても
軽いものなら、激しく動くこともあるけれど
重たいものだと、みんなほとんど動かない
ということです。


また別のたとえとして

温度が低い→素人の微妙なコントが放送されている。
温度が高い→名人のとてもおもしろいコントが放送されている。

分子量が小さい→お笑いをほとんど知らない集団が聞いている。
分子量が大きい→お笑い通の集団が聞いている。

ある分子の速度→コントを聞いて、うけた度合い

とした時に

温度が低い=微妙なコント でも
まだお笑いを知らない集団の中には
めちゃくちゃうける人も、案外いる。
(速度が大きい分子も、案外いる。)

しかし
お笑い通の集団では、まぁうけない。(分布が左による。)
微妙なコントでめちゃくちゃうける人なんてめったにいない。
(分布に広がりはなくなる。シャープになる。)
というイメージです。


よって、選択肢 3 は誤りです。



選択肢 4 は、その通りの記述です。



以上より、正解は 2,4 です。




問93
次の文章の ①、② に入る
数値及び記号の正しい組合せはどれか。
1つ選べ

理想溶液がその気相と平衡にある場合
各成分の蒸気圧は
溶液中のモル分率に比例する。

成分 X と Y から成る液体を
理想溶液とみなすとき
成分 X のモル分率 0.5 の溶液と
平衡にある蒸気の成分 X のモル分率は
① となる。

ただし、成分 X と Y の蒸気圧を
それぞれ
500 hPa 、1000 hPa とする。

また、成分 X、Y が理想溶液とみなせず
X  と Y  の分子間に反発がある場合の圧力は
② のようなグラフになる。




成分 X の蒸気圧(Px)、及び
成分 Y の蒸気圧(Py) は、ラウールの法則より

Px : 500 ✕ 0.5 = 250
Py : 1000 ✕ 0.5 = 500 です。

よって、全圧は 250 + 500 = 750 です。


全圧が 750 で、そのうち 250 が
成分 X の分圧ですので
ドルトンの法則より
250 / 750 ≒ 0.33 が、X のモル分率です。

以上が、① についての解説です。



次に、X と Y に反発がある場合ですが
例えば 蒸気の成分が
X,Y 共に ちょうど 半分ずつの場合を考えます。

反発するということは
X は Y に対して
Y は X に対して 反発力を与えるということです。

すると蒸気は、より早く飛び回ることになります。
つまり、圧力が大きくなると考えられます。

グラフでいうと
Y の モル分率が 0.5 付近で 上に凸 となる
と考えられます。


以上が、②についての解説です。


従って、正解は 7 です。




問94 タンパク質の構造に関する記述のうち
正しいのはどれか。
2 つ選べ。

1 円二色性スペクトル法により
タンパク質の一次構造を決定することができる。

2 α ヘリックスや β シートは
タンパク質中に見られる二次構造である。

3 基質が酵素分子に結合する際に生じる
誘導適合(induced fit)とは
酵素分子堅固な剛体として仮定したときに
生じる変化をいう。

4 酵素の等電点とは
その酵素の至適 pH のことである。

5 ヘモグロビンと酸素との結合は
協同性を示し
この協同現象はヘモグロビンの
四次構造変化により説明される。



選択肢 1 ですが
円二色性スペクトル法でわかるのは
タンパク質の二次構造です。
一次構造が決定できるわけでは、ありません。


よって、選択肢 1 は誤りです。



選択肢 2 は、その通りの記述です。



選択肢 3 ですが
誘導適合とは
基質に合わせて酵素分子が形を変えることです。

一方、堅固な剛体と仮定するとは
形が変わらないと仮定する、ということです。


よって、選択肢 3 は誤りです。



選択肢 4 ですが
等電点とは
正の荷電と負の荷電が等しくなる pH のことです。

酵素の性質としては
水などの溶媒に可溶化しにくくなる pH といえます。
いいかえると、沈殿しやすくなります。

沈殿しやすい pH かどうか、と
酵素の働きが至適となる pH であるかどうかは
同一ではありません。

従って
等電点が 酵素の至適 pH である
ということはできません。


よって、選択肢 4 は誤りです。



選択肢 5 は、その通りの記述です。



以上より、正解は 2,5 です。




問95
NAD+ 及ぴ CH3CHO の還元反応及び
標準電位を以下に示した。

pH 7、25℃における、NAD/ NADH 及ぴ
CH3CHO / CH3CH2OH からなる
学電池が放電するときの
標準ギブズエネルギ一変化(kJ・mol-1 )の値に
最も近いのはどれか。1 つ選べ。

ただし
ファラデー定数 F = 9.65 × 10C・mol -1 とする。

1 -49.9
2 -23.7
3 -11.9
4 11.9
5 23.7




電位差は、約 0.12 です。
公式である
ΔG = -nFE に数値を代入して計算します。

※ n は、電子の係数を揃えた時の係数です。
本問では、もともと係数が揃っているため
2 を、そのまま代入します。 

※ 選択肢から、それほど厳密な計算が必要ないので
F = 10 ✕ 104 で近似します。

※標準電極電位の差が起電力 E です。
E = 0.12 を代入します。


- 2 ✕ (10 ✕ 104 )✕ 0.12
≒-24000 です。

標準ギブズエネルギ一変化の単位が
kJ・mol-1  となっているため k を用いると
-24000 = -24k となります。


従って、一番近い値は -23.7 です。



以上より、正解は 2 です。









問96 
紫外可視吸光度測定法に関する
次の記述のうち、正しいのはどれか。
2 つ選べ。

ただし図のように
測定に用いた単色光の入射光の強さを I0 
透過光の強さを I とする。



1 透過度 t は t = I/I0 で表される。

2 透過度 t と吸光度 A の間には、A = 2 - log t の関係がある。

3 層長を 2 倍にすると、透過度 t は 2 倍になる。

4 試料溶液が十分に希薄な場合
濃度を 2 倍にすると吸光度 A は 2 倍になる。

5 吸光度の単位は cd (カンデラ)である。




選択肢 1 は、その通りの記述です。
「透過度」 と 「吸光度」 を 
区別することが重要です。

ちなみに、吸光度の定義は
透過度の逆数の、常用対数をとったもの です。



選択肢 2 ですが
透過度と吸光度の間には
という関係が成り立ちます。
A = 2 - log t は、成り立ちません。


よって、選択肢 2 は誤りです。



選択肢 3 ですが
層長を 2 倍にしたら 2 倍になるのは
吸光度です。
透過度では、ありません。


よって、選択肢 3 は誤りです。



選択肢 4 は、その通りの記述です。



選択肢 5 ですが
吸光度の単位はありません。


よって、選択肢 5 は誤りです。


ちなみに cd は、光度の単位です。



以上より、正解は 1,4 です。




問97
誘導結合プラズマ(ICP)
発光分光分析法及び
原子吸光光度法に関する記述のうち
正しいのはどれか。
2 つ選べ。

1 ICP 発光分光分析法では
試料原子が
基底状態から励起状態に遷移する際の
光を観測する。

2 IC P発光分光分析法では
高周波誘導結合法により得られた
アルゴンプラズマ中に
試料を導入する。

3 原子吸光光度法の光源には
中空陰極ランプが用いられる。

4 原子吸光光度法で
測定する原子スペクトルは
連続スペクトルである。

5 原子吸光光度法において
銀イオンは冷蒸気方式により
原子化される。



選択肢 1 ですが
観測する発光は
励起状態から、基底状態に戻る時の発光です。
基底状態から、励起状態に遷移する際では
ありません。


よって、選択肢 1 は誤りです。



選択肢 2,3 は、正しい選択肢です。



選択肢 4 ですが
原子吸光光度法では
測定するスペクトルは
線スペクトルです。
連続スペクトルでは、ありません。


よって、選択肢 4 は誤りです。



選択肢 5 ですが
冷蒸気方式により原子化されるのは
水銀イオンです。
銀イオンでは、ありません。


よって、選択肢 5 は誤りです。



以上より、正解は 2,3 です。




問98
キャピラリー電気泳動に関する
次の記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。

1 中性の電解質溶液を満たした
フューズドシリカ製キャピラリーの内壁は
シラノール基の解離により
正電荷を帯びる。


2 フューズドシリカ製キャピラリーと
中性の緩衝液を用いて
電気泳動を行うと

陰イオン性物質は
中性物質よりも速く泳動される。


3 ミセル動電クロマトグラフィーでは
泳動液に
イオン性界面活性剤を添加することで
中性物質の分離が達成される。


4 キャピラリーゾーン電気泳動では
泳動液の pH が高いほど
中性試料成分の泳動速度が遅くなる。


5 キャピラリーゲル電気泳動で
DNA を分離すると
サイズの小さなものから順に検出される。



選択肢 1 ですが
シラノール基(Si-OH)が 解離して
Si-O となるため、負電荷を帯びます。
正電荷では、ありません。


よって、選択肢 1 は誤りです。



選択肢 2 ですが
キャピラリー電気泳動では
陽極から陰極への流れが生じます。

そのため、陽イオン性物質が
中性物質よりも速く泳動されます。
陰イオン性物質は
中性物質よりも遅く泳動されます。


よって、選択肢 2 は誤りです。



選択肢 3 は、正しい選択肢です。
キャピラリー電気泳動で、分離の難しい
複数の中性物質の分離を可能にするのが
ミセル動電クロマトグラフィーです。



選択肢 4 ですが
泳動液の pH が高いと
シラノール基がより解離します。

解離した負電荷に引きつけられた
溶液中の陽イオンが、電圧をかけることで
一気に陰極へ流れることで
溶液全体が陰極へと流れるというのが
電気浸透流の実体です。

つまり
pH が高いほど、解離した負電荷が多い
→引きつけられる陽イオンも多い
→電圧をかけた時の流れは速くなる

といえます。


そして、中性物質の移動速度は
電気浸透流の流速とほぼ等しいと考えられるため
泳動速度は速くなります。
遅くはなりません。


よって、選択肢 4 は誤りです。



選択肢 5 は、正しい選択肢です。



以上より、正解は 3,5 です。




問99 
液体クロマトグラフィーを用いた
鏡像異性体の分離法には
キラル固定相法
キラル移動相法
ジアステレオマー誘導体化法がある。

各法に関する記述のうち
正しいのはどれか。
2つ選べ。


1 キラル移動相法では
分析対象物に対する対掌体を
移動相溶液に添加して
エナンチオマ一分離を行う。

2 ジアステレオマー誘導体化法は
誘導体化により
通常の分配クロマトグラフィーで
分離することを目的とする。

3 あるラセミ混合物を分離したとき
異性体間のピークの分離度(Rs)は
1.2であった。
このとき、2つのピークは
完全分離しているといえる。

4 キラルカラムに固定化される
光学活性な高分子として
多糖類誘導体やタンパク質が
広く用いられている。



選択肢 1 ですが
キラル移動相法とは
移動相中に
光学活性な化合物(キラルセレクター)を添加し

固定相に吸着させ
分析対象物との相互作用を介し
エナンチオマーの分離を行う方法です。

加えるのは、キラルセレクターです。
(多糖誘導体など、様々なセレクターが開発されています。)
分析対象物に対する対掌体を加えるわけでは
ありません。


よって、選択肢 1 は誤りです。



選択肢 2 は、正しい選択肢です。



選択肢 3 ですが
ピークが完全分離している とは
分離度が 1.5 以上を意味する と
日本薬局方で定義されています。
1.2 では、完全分離とはいえません。


よって、選択肢 3 は誤りです。



選択肢 4 は、正しい選択肢です。



以上より、正解は 2,4 です。




問100
水酸基を有する
医薬品 X のデータは以下の通りである。
次の記述のうち正しいのはどれか。
2つ選べ。


分子量: 200
300nm におけるモル吸光係数: 20,000
比旋光度[α]20 :-30° ~-33°

1 医薬品 X  の 300nm における
比吸光度 E  1%1cm  は
1,000 である。

2 医薬品 X の1.0× 10 -6 mol/L 溶液の
旋光度を層長100 mm のセルを用いて測定すると
- 3.0° ~- 3.3° となる。

3 医薬品 X の赤外吸収スペクトルにおいて
水酸基の伸縮振動スペクトルの波数は
測定溶媒との水素結合形成により
減少する。

4 医薬品 X の結晶を作成し
X 線(波長 1.54Å (0.154nm))を照射した。
このとき、回折角 2θ が 60° の
回折点由来の面間隔は0.89Åである。
ただし、,/3 = 1.73 とする。



選択肢 1 は、正しい選択肢です。

比吸光度は
100mL に、1g を溶かした時の吸光度です。

一方、モル吸光係数は、1mol/L の時の吸光度です。
1mol = 200g なので、200g/L の時の吸光度が、20,000 です。


比吸光度との比較を簡単にするために
モル吸光係数における「 /L 」 の部分を、「 /100mL 」 にしてみると
200g/L 
= 20g/100mL です。
この時の吸光度が 20,000 です。


すると、1g/100mL の時の吸光度は
溶けている物質が1/20 なので、吸光度も1/20 です。
つまり、20000 × 1/20 = 1,000 となります。



選択肢 2 は旋光度が問われていますが、問題文で比旋光度が与えられているため、
比旋光度と旋光度をつなぐ、以下の式を使います。


[α]:比旋光度
α:旋光度(実測)[°]
l:試料セルの長さ[mm]
c:溶液の濃度[g/mL]

上式に適当な値を代入してαについて解けばよいのですが、
単位に気をつけながら計算してください。

cについては、分子量200、濃度1.0×10-6 [mol/L] より、次のように計算できます。


よって、旋光度は以下の2つの式より、



となるので、旋光度は-3.0° ~-3.3° ではありません。

よって、選択肢 2 は誤りです。



選択肢 3 は、正しい選択肢です。

測定溶媒との水素結合
→自由に振動していたものに
水素結合というしばりがつくようなイメージなので
振動が弱くなる
→振動のエネルギーが低くなる
→吸収する赤外線の持つエネルギーも、低くなる
→波数(/cm)で言うと、低くなる。 という流れです。



選択肢 4 ですが
ブラッグの式 2d sin θ = n λ より
d = n λ / 2 sin θ です。

θ = 30 ° なので、sin θ = 1/2 です。

よって、 d = n × (1.54Å) となります。
※ n は、整数。

従って、0.89Å では、ありません。


よって、選択肢 4 は誤りです。



以上より、正解は 1,3 です。