問26 ムスカリン性 アセチルコリン受容体には 直接作用せず アセチルコリンによる 平滑筋収縮を増強する薬物はどれか。 1つ選べ。 1 ネオスチグミン 2 ベタネコール 3 イソプレナリン 4 スコポラミン 5 フロプロピオン 選択肢 1 の ネオスチグミンは コリンエステラーゼ阻害剤です。 アセチルコリンを分解する コリンエステラーゼを阻害することで アセチルコリン受容体に 直接作用することはないが アセチルコリンの効果を増強させる薬物です。 よって、正しい選択肢です。 選択肢 2 ですが ベタネコールは 直接型コリン作動薬です。 アセチルコリン受容体(M 受容体)に作用します。 直接作用せず、という問いに該当しません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが イソプレナリンは β1,β2受容体刺激薬です。 非選択的 β 刺激薬とも呼ばれます。 気管支に作用し、平滑筋を拡張させる作用を持ちます。 平滑筋収縮を増強させるわけでは、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが スコポラミンは 抗コリン薬です。 アセチルコリンの働きを阻害する薬であるため アセチルコリンの効果を増強するわけでは、ありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが フロプロピオンは COMT 阻害薬です。 平滑筋を弛緩させる作用を持ちます。 平滑筋収縮を増強させるわけでは、ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1 です。 参考) (交感神経系に作用する薬) (副交感神経に作用する薬) (肝臓疾患治療薬) 問27 自律神経節において節前繊維から 節後線維への神経伝達を行う受容体はどれか。 1 グルタミン酸 NMDA 受容体 2 セロトニン 5 - HT3 受容体 3 ニコチン性アセチルコリン受容体 4 γ - アミノ酪酸GABAA 受容体 5 グリシン受容体 自律神経とは 交感神経と副交感神経のことです。 節前繊維から節後繊維への 神経伝達に用いられる物質は アセチルコリンです。 従って、受容体は アセチルコリン受容体です。 以上より、正解は 3 です。 補足 ちなみに 選択肢 1 ですが NMDA 受容体は 主に中枢神経系に分布する受容体です。 グルタミン酸が結合すると 陽イオンを透過させるような イオンチャネルとして働く受容体です。 記憶や学習に深く関わる受容体です。 選択肢 2 ですが 5 - HT3 受容体は 主に中枢神経系に分布する受容体です。 セロトニン受容体には 様々なサブタイプがありますが 5 - HT3 の特徴は イオンチャネルとして働く受容体である点です。 選択肢 4 ですが GABAA 受容体は 主に中枢神経系に分布する受容体です。 主要な抑制性神経伝達物質である GABA の受容体です。 Cl- イオンのチャネルとして働きます。 選択肢 5 ですが グリシン受容体は 脊髄などで発現し作動している受容体です。 GABAA 受容体と同様に 抑制性神経の受容体であり Cl- イオンのチャネルとして働きます。 (ちなみにですが、本問の受容体は 全てイオンチャネルとして作用する という点に特徴があります。) (自律神経系) 問28 テトラカインの局所麻酔作用の機序はどれか。 1つ選べ。 1 K+ チャネル活性化 2 K+ チャネル遮断 3 Na+ チャネル活性化 4 Na+ チャネル遮断 5 Ca2+ チャネル活性化 局所麻酔作用の機序は 神経の伝達を担う Na+チャネルの遮断です。 Na+チャネルが遮断されることで 痛みなどの刺激が伝達されなくなるため 麻酔作用を示します。 よって、正解は 4 です。 問29 麻薬拮抗性鎮痛薬はどれか。 1つ選べ。 1 フェンタニル 2 モルヒネ 3 ペンタゾシン 4 ペチジン 5 オキシコドン 選択肢 1 ですが フェンタニルは、麻薬性鎮痛薬です。 麻薬拮抗性では、ありません。 経皮的に吸収できるという特徴があります。 (デュロテップ®バッチ など) 選択肢 2 ですが モルヒネは、麻薬性鎮痛薬です。 麻薬拮抗性では、ありません。 選択肢 3 は、正しい選択肢です。 麻薬拮抗性であるとは 麻薬性鎮痛薬が存在する状況では 拮抗薬として働き 存在しない時は 作動薬として働くような薬である ということです。 ペンタゾシンは μ オピオイド受容体に対する拮抗薬として 作用します。 選択肢 4 ですが ペチジンは、麻薬性鎮痛薬です。 麻薬拮抗性では、ありません。 選択肢 5 ですが オキシコドンは、麻薬性鎮痛薬です。 麻薬拮抗性では、ありません。 以上より、正解は 3 です。 問30 心筋のトロポニンの Ca2+ 感受性を高めて 強心作用を示すのはどれか。 1つ選べ。 1 コルホルシンダロパート 2 ミルリノン 3 ジゴキシン 4 ピモベンダン 5 デノパミン 選択肢 1 ですが コルホルシンダロパートは アデニル酸シクラーゼ(AC)活性化薬です。 強心薬の一種です。 Ca2+ 感受性を高めて 強心作用を示すわけでは、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが ミルリノンは ホスホジエステラーゼⅢ阻害薬です。 強心薬の一種です。 Ca2+ 感受性を高めて 強心作用を示すわけでは、ありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが ジゴキシンは ジギタリス製剤です。 Na+,K+-ATPase を阻害することにより作用する 強心薬の一種です。 Ca2+ 感受性を高めて 強心作用を示すわけでは、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は、正しい選択肢です。 選択肢 5 ですが デノパミンは、β1 刺激薬です。 強心薬の一種です。 Ca2+ 感受性を高めて 強心作用を示すわけでは、ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 4 です。 問31 心室筋の活動電位を 下図の実践から破線へ変化させるのはどれか。 1つ選べ。 1 プロパフェノン 2 メキシレチン 3 プロカインアミド 4 ジベンゾリン 5 アミオダロン 活動電位を破線のように変化させるのは クラス Ib 群 の抗不整脈薬です。 選択肢 1 ですが プロパフェノンは、Ic 群の抗不整脈薬です。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は、正しい選択肢です。 ちなみに、クラス Ib 群には リドカイン、アプリンジンなどもあります。 選択肢 3 ですが プロカインアミドは、Ia 群の抗不整脈薬です。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが ジベンゾリンは、Ia 群の抗不整脈薬です。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが アミオダロンは、III 群の抗不整脈薬です。 よって、選択肢 5 は誤りです。 ちなみに クラス I は、Na+チャネル阻害薬です。 活動電位時間への影響により 更に Ia,Ib,Ic と分類されます。 また、クラス III は、K+チャネル阻害薬です。 参考) 薬理学まとめました 2-4 1) (代表的な抗不整脈薬) 問32 カリウム保持性利尿薬はどれか。 1つ選べ。 1 スピロノラクトン 2 ブメタニド 3 アセタゾラミド 4 D - マンニトール 5 メフルシド 選択肢 1 は、正しい選択肢です。 選択肢 2 ですが ブメタニドは、ループ利尿薬です。 カリウム保持性利尿薬では、ありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが アセタゾラミドは、炭酸脱水酵素阻害薬です。 カリウム保持性利尿薬では、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが D - マンニトールは、浸透圧性利尿薬です。 カリウム保持性利尿薬では、ありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが メフルシドは、非チアジド系利尿薬です。 チアジド系利尿薬とは骨格構造が異なりますが 作用機序は類似した薬です。 カリウム保持性利尿薬では、ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 1 です。 (利尿薬) 問33 胃腸管に発現する受容体で 刺激されることで 消化管運動を亢進させるのはどれか。 1つ選べ。 1 オピオイド μ 受容体 2 アセチルコリン Nm 受容体 3 アドレナリン β2 受容体 4 セロトニン 5 - HT4 受容体 5 ドパミン D2 受容体 選択肢 1 ですが μ 受容体を刺激すると 腸の運動は、抑制されます。 消化管運動が亢進されるわけでは ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが アセチルコリン Nm 受容体は 消化管運動を亢進させません。 アセチルコリンの受容体で 消化管運動を亢進させるのは M 受容体です。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが β2 受容体が刺激されると 平滑筋は 弛緩します。 つまり、消化管運動は亢進されません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 は、正しい選択肢です。 モサプリド(ガスモチン®)等の作用機序です。 選択肢 5 ですが D2 受容体が刺激されると アセチルコリン分泌が低下するため 間接的に、消化管運動は抑制されます。 よって、選択肢 5 は誤りです。 ちなみに、D2 受容体遮断薬 (メトクロプラミド(プリンペラン®)等)は 消化管運動改善薬として用いられています。 以上より、正解は 4 です。 問34 ガベキサートの 急性膵炎治療効果に関わる機序はどれか。 1つ選べ。 1 タンパク質分解酵素阻害 2 H+、K+ - ATPase 阻害 3 ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断 4 ヒスタミンH2 受容体遮断 5 シクロオキシゲナーゼ阻害 ガベキサートは タンパク質分解酵素阻害薬です。 すなわち、消化酵素阻害薬です。 自己消化を防ぐことで 膵炎の症状を緩和します。 従って、治療効果に関わる機序は タンパク質分解酵素阻害です。 以上より、正解は 1 です。 問35 デスモプレシンの 抗利尿作用の機序はどれか。 1つ選べ。 1 バソプレシン V1 受容体刺激 2 バソプレシン V1 受容体遮断 3 バソプレシン V2 受容体刺激 4 バソプレシン V2 受容体遮断 5 バソプレシン分泌抑制 V 1 受容体は、心筋、血管平滑筋、大腸平滑筋などに 分布しており、血圧や腸管運動に関与しています。 V 2 受容体は、腎集合管に存在しており 水の再吸収を調整しています。 V 2 受容体が刺激されると 水の再吸収が促進されます。 その結果、尿量は減少します。 これが、デスモプレシンの抗利尿作用の機序です。 従って、正解は 3 です。 問36 グルカゴン様ペプチド - 1 (GLP-1) 受容体を刺激する 糖尿病治療薬はどれか。 1つ選べ。 1 アカルボース 2 グリベンクラミド 3 ピオグリタゾン 4 メトホルミン 5 リラグルチド 選択肢 1 ですが アカルボースは、α-GI です。 GLP - 1 作動薬では、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが グリベンクラミドは、SU 剤です。 GLP - 1 作動薬では、ありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 ですが ピオグリタゾンは、インスリン抵抗性改善薬です。 作用点は、PPAR - γ です。 GLP - 1 作動薬では、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが メトホルミンは、ビグアナイド薬です。 GLP - 1 作動薬では、ありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 は、正しい選択肢です。 以上より、正解は 5 です。 (糖尿病治療薬) 問37 小腸コレステロール トランスポーター阻害薬はどれか。 1つ選べ。 1 イコサペント酸エチル 2 エゼチミブ 3 コレスチミド 4 シンバスタチン 5 フェノフィブラート 選択肢 1 ですが イコサペント酸エチルは、EPA 製剤です。 小腸コレステロール トランスポーター阻害薬では、ありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 は、正しい選択肢です。 選択肢 3 ですが コレスチラミドは、陰イオン交換樹脂です。 小腸コレステロール トランスポーター阻害薬では、ありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。 選択肢 4 ですが シンバスタチンは HMG-CoA 還元酵素阻害薬です。 小腸コレステロール トランスポーター阻害薬では、ありません。 よって、選択肢 4 は誤りです。 選択肢 5 ですが フェノフィブラートは、フィブラート系薬です。 小腸コレステロール トランスポーター阻害薬では、ありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。 以上より、正解は 2 です。 (高脂血症治療薬) 問38 ダルテパリンの凝固因子阻害活性について 正しいのはどれか。 1つ選べ。 1 トロンビン(第Ⅱa 因子)のみを阻害する。 2 第 Xa 因子よりも第Ⅱa 因子を強く阻害する。 3 第Ⅱa 因子と第 Xa 因子を同等に阻害する。 4 第Ⅱa 因子よりも第 Xa 因子を強く阻害する。 5 第 Xa 因子のみを阻害する。 ダルテパリンは、ヘパリン類似薬です。 「アンチトロンビンⅢを介した 抗 Xa 因子作用を十分有するが アンチトロンビンⅢを介した 抗トロンビン作用がそれほど強くない」 という特徴を有する薬です。 いいかえると トロンビン(第Ⅱa 因子)よりも 第 Xa 因子をより阻害する といえます。 以上より、正解は 4 です。 (抗血栓薬) 問39 モンテルカストの抗アレルギー作用の機序はどれか。 1つ選べ。 1 トロンボキサン A2 受容体 (プロスタノイド TP 受容体)遮断 2 トロンボキサン合成酵素阻害 3 ヒスタミン H1 受容体遮断 4 5 - リポキシゲナーゼ阻害 5 ロイコトリエン受容体遮断 モンテルカストは ロイコトリエン受容体遮断薬 です。 従って、正解は 5 です。 ちなみに 選択肢1~4の代表的な薬としては 1:セラトロダスト、ラマトロバン 2:オザグレル 3:ケトチフェン、セチリジン、フェキソフェナジン 4:オキサトミド (※オキサトミドの主な作用機序は H1 拮抗作用とされている。 5-リポキシゲナーゼ阻害作用を併せ持つと 知られている。) などがあげられます。 (アレルギー治療薬) 問40 抗真菌薬ブテナフィンが阻害するのはどれか。 1つ選べ。 1 シトシン透過酵素 2 ラノステロール C-14 脱メチル化酵素 3 DNAトポイソメラーゼ Ⅱ 4 トランスペプチダーゼ 5 スクアレンエポキシダーゼ ブテナフィンが阻害するのは スクアレンエポキシダーゼです。 従って、正解は 5 です。 ちなみに 選択肢 1 ~ 4 に関しての補足ですが 1:シトシン透過酵素に関連する 代表的な薬は、フルシトシンです。 フルシトシンは、この酵素を介して 真菌細胞内に取り込まれた後 代謝されて、5 -FUとなり 抗真菌作用を示すことが知られています。 2:ラノステロール C-14 脱メチルに関連する 代表的な薬は、アゾール系抗真菌薬 (イトラコナゾールなど)です。 3:DNAトポイソメラーゼ Ⅱ に関連する 代表的な薬は、エトポシドです。 トポイソメラーゼⅡ阻害薬です。 抗がん剤として用いられます。 4:トランスペプチダーゼに関連する 代表的な薬は、β-ラクタム系抗生物質 (ペニシリン等)です。 |