102-106~110 解説一覧


106

次に示した医薬品の活性成分Aに関する記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1 N末端のアミノ酸はD-プロリンである。

2 C末端では、L-プロリンの環内の窒素がN-エチル化されている。

3 L-ロイシンのエナンチオマーであるD-ロイシンが含まれている。

4 経口投与には通さない。



1について、ペプチドを構成するアミノ酸を並べて表記する場合、左側をN末端に、右側をC末端にするのが一般的です。よって、今回はN末端なので左端に注目します。この環状アミノ酸がD-プロリンかどうかということですが、これは正しくはL-ピログルタミン酸です。

ピログルタミン酸という化合物の構造や名称を覚える必要は特にありませんが、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸については覚えておくべきなので、そのうちのひとつであるプロリンの構造は抑えておいてください。プロリンの構造は以下の通りです。

よって、これは誤りの記述です。


2で、1の解説にも書いた通り、ペプチドの並びは左側がN(アミノ基)、右側がC(カルボキシル基)です。つまり、Pro(プロリン)の窒素は左側のArg(アルギニン)との結合に使われているため、「プロリンの環内の窒素がN-エチル化」という部分は誤りです。

よって、L-プロリンの環内の窒素がN-エチル化しているのではなく、カルボキシル基の炭素にエチルアミノ基(-NHCH2CH3)が結合しています(アミド化)。


3に関して、問題文に記載されている活性成分Aを見ると、「D-Leu」が含まれていますが、「Leu」はロイシン(Leucine)のことなので、これは正しい記述です。


4について、この問題の医薬品に限らず、ペプチド医薬品は胃や腸の消化酵素によって分解されてしまうので、一般的には経口投与ができません。たとえば糖尿病の治療で用いるインスリン注射も同様の理由で経口投与ではなく注射としています。よって、これは正しい記述です。


よって、正解は3と4です。




107

ビルダグリプチンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1 ピペリジン環を有している。

2 破線で囲んだ炭素骨格中のすべてのシクロヘキサン環は、いす形配座をとっている。

3 a及びbで示される2つの窒素原子のうち、bの方が塩基性が強い。

4 cで示される不斉炭素原子はR配置である。

5 d及びeで示される2つの炭素原子はいずれもキラル中心(立体中心)ではない。



1で、ビルダグリプチンが有している五員環は、ピペリジン環ではなく、ピロリジン環です。ピペリジン環は六員環となります。よって、これは誤りです。


2について、破線で囲われた炭素10個から成るこの構造を、アダマンタン骨格といいます。これは全ての炭素がsp3混成軌道取りながら六員環のいす形配座を形成しているという、極めて安定な構造です(ダイヤモンドの結晶構造と同じ並び方をしています)。よって、これは正しい記述です。


3に関して、aは普通のアミンなので塩基性ですが、bはアミンではなく、隣のカルボニル基と合わせてアミドとなっています。アミドの窒素原子が持つ非共有電子対は、カルボニル基との共鳴構造を描くことができるように、電子が非局在化して安定性に寄与しているため、塩基として働くことができません。

よって、アミドは中性なので、3の記述は誤りです。


4は、Hを除いて考えたとき、優先順位の高いほうから、NCNCH2の順になるので時計回り(右回り)です。ただし、今回はHが画面手前側に出ているので、反転させて反時計回り(左回り)になると考えます。

4つの置換基の中で最も優先順位の低いもの(今回はH)を奥側にしたとき、残る3つの優先順位の順番が時計回りになればR配置、反時計回りになればS配置なので、今回はS配置となります。よって、これは誤りの記述です。


5では、dは下図の青、eは下図の赤で示した通り、deを起点としてシクロヘキサン環を順方向と逆方向のどちらで廻っても全く等価です。

そのため、deも炭素の4つの手のうち2本は同じ置換基を持つことになるため、キラル中心ではありません。よって、5は正しいです。


以上より、正解は2と5になります。





108

下図は、ある化合物の1H-NMRスペクトル(400MHzCDCl3、基準物質はテトラメチルシラン(TMS))である。この化合物の構造式として正しいのはどれか。1つ選べ。なお、イのシグナルは一重線であり、拡大図AB及びCの拡大率はそれぞれ異なる。また、エのシグナルはヒドロキシ基のプロトンに由来する。



アのピークを拡大図Aで見ると二重線の6Hになっています。ここで選択肢を見ると、126Hに相当する等価な2つのメチル基があり、隣接炭素に1つの水素が結合しているため、二重線であることに合致します。

一方、3は等価なメチル基が3つあるので9Hになってしまう上、隣接炭素に水素が付いていないのでこの9Hは一重線となるので不適です。また、42つのメチル基は等価ではなく、53つのメチル基もそれぞれ等価ではないので、45も不適です。

ここで12の構造の違いに注目すると、左側のメチル基の隣に酸素があるかないかが異なります。隣に酸素があればメチル基の3Hのシグナルは34ppmに出て、酸素がなければ2ppmあたりに出ると考えられます。今回は2.3ppmにシグナルがあるので、選択肢1が正解だと判断できます。




109

天然物AEの生合成に関する記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1 天然物Aは、イソプレン単位3個から生合成される。

2 天然物Bは、2分子のフェニルプロパノイドから生合成される。

3 天然物Cは、1分子のアセチルCoA7分子のマロニルCoAから生合成される。

4 天然物Dは、1分子のフェニルプロパノイドと2分子のマロニルCoAから生合成される。

5 天然物Eは、チロシンから生合成される。



選択肢 1 は

ホルボール という物質の構造式です。


イソプレン単位は、C5なので

イソプレン単位3個であれば、C15 のはずです。

しかし、構造は C が 20個見られます。


よって

選択肢 1 は誤りであると考えられます。



選択肢 2 は、正しい記述です。

ポドフィロトキシンという物質の構造式です。

この物質の誘導体の1つが、エトポシドです。


フェニル(C6)ープロパン(C3)骨格2つが

くっついていると考えることができます。



選択肢 3 は、正しい記述です。

エモジンという物質の構造式です。



選択肢 4 は

クエルセチンという物質の構造式です。

炭素数が C15 です。


フェニルプロパノイドで C9

1分子のマロニル CoA からは C2 なので

2分子ではなく、3分子のマロニル CoA から

生合成されると考えられます。


よって、選択肢 4 は誤りです。



選択肢 5 は

レセルピンという物質の構造式です。


左上に

インドール環由来と思われる部分があります。

これがトリプトファン由来です。

チロシンからではありません。


よって、選択肢 5 は誤りです。



以上より、正解は 2,3 です。





110

生薬に関する記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1 ロートコンは、ナス科基原植物由来生薬で、トロパンアルカロイドを含有する。

2 リュウタンは、フラボノイド配糖体を主成分とし、苦味健胃薬として用いられる。

3 リュウコツは、硫酸ナトリウムを主成分とし、精神安定を目的として用いられる。

4 インチンコウは、果実を用部にする生薬であり、胆汁分泌促進作用がある。

5 トチュウは、トチュウの樹皮を用部にする生薬であり、リグナンを含有する。



選択肢 1 は、正しい記述です。



選択肢 2 ですが

リュウタンは、ゲンチジンなどの

「アルカロイド」が主成分です。

フラボノイド配糖体では、ありません。


よって、選択肢 2 は誤りです。


苦味、健胃成分というのは

正しい記述です。



選択肢 3 ですが

リュウコツは、哺乳動物の化石化した骨です。

主成分は炭酸カルシウムやリン酸カルシウムです。

硫酸「ナトリウム」ではありません。


よって、選択肢 3 は誤りです。


精神安定目的というのは

正しい記述です。



選択肢 4 ですが

インチンコウは、蕾(頭花)を用部とします。

果実では、ありません。


よって、選択肢 4 は誤りです。


胆汁分泌促進作用というのは

正しい記述です。



選択肢 5 は、正しい記述です。



以上より、正解は 1,5 です。