問258-259 36歳女性。乳がん手術後、以下の薬物療法が開始された。 (処方) 1)( A )錠10mg 1回2錠(1日2錠) 1日1回 朝食後 28日分 2)( B )注射用3.75mg 全1本 1回3.75mg 4週間ごとに1回 皮下注射 この処方の服薬指導として、( A )は、子宮体がんのリスクを上げるため、定期的な検査を行うよう患者に指導した。また、( B )は、ほてりやのぼせ、抑うつなどの更年期症状がみられることがあると患者に説明した。
問258(実務) ( A )と( B )に当てはまる薬剤はどれか。2つ選べ。
1 リュープロレリン酢酸塩 2 レトロゾール 3 トラスツズマブ 4 タモキシフェン 5 テガフール 問259(薬理) ( A )の薬物の作用機序として正しいのはどれか。1つ選べ。
1 乳腺のエストロゲン受容体(ER)を遮断する。 2 ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)を遮断する。 3 アロマターゼを阻害する。 4 活性酸素を発生させ、DNA鎖を切断する。 5 ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体を刺激する。 問 258,259 解説 まず、36歳ということで 閉経前と考えられます。
また 処方2)の用法が 「4週ごとに1回の注射」であることから 選択肢を参考にすると B はリュープロレリン酢酸塩と 判断できると考えられます。
残りは A です。 問258 選択肢 2 ~ 5 について 以下、検討します。
選択肢 2 ですが レトロゾール(フェマーラ)は 「閉経後」乳がん治療や、不妊治療に用いられる アロマターゼ阻害薬です。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが トラスツズマブ(ハーセプチン)は HER2 タンパク特異的分子標的薬です。
HER2 過剰発現が確認されておらず 本問では当てはまらないと考えられます。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。 タモキシフェンは ER受容体遮断薬です。
選択肢 5 ですが テガフールは フルオロウラシルのプロドラッグです。 乳がんに用いられることはあるのですが 子宮体がんのリスクを上げる ということはありません。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より 問258の正解は 1,4 です。 問259の正解は 1 です。
ちなみに 問い259の他の選択肢ですが
選択肢 2 は トラスツズマブの作用機序についての記述です。
選択肢 3 は レトロゾールの作用機序についての記述です。
選択肢 4 は 問258の選択肢にはありませんが ブレオマイシン等の作用機序についての記述です。
選択肢 5 は リュープロレリンの作用機序についての記述です。 参考) 問260-261 38歳男性。急性リンパ性白血病と診断され、以下の化学療法が開始された。 (処方1) 注射用シクロホスファミド水和物1,200mg/m2(無水物換算) 3時間で点滴静注 Day 1 (処方2) 注射用ダウノルビシン塩酸塩60mg/m2 1時間で点滴静注 Day 1~3 (処方3) 注射用ビンクリスチン硫酸塩1.3mg/m2 静注 Day 1, 8, 15, 22 (処方4) 注射用アスパラギナーゼ3,000U/m2 3時間で点滴静注 Day 9, 11, 13, 16, 18, 20 (処方5) プレドニゾロン錠60mg/m2 分2 経口 Day 1~21
問260(実務) 上記化学療法に対して、支持療法が必要である。支持療法として使用する薬物として優先順位が最も低いのはどれか。1つ選べ。
1 フィルグラスチム 2 グラニセトロン 3 アロプリノール 4 ピタバスタチン 5 メロペネム
急性リンパ性白血病(ALL) に対し、化学療法が行われています。 支持療法とは 抗がん剤の副作用を予防、軽減するための治療です。
具体的には ・白血球細胞を増やす薬の投与 ・吐き気どめの投与 ・予防、治療のための抗菌薬の投与 ・腫瘍が崩壊することにより 高尿酸血症になることを防ぐために投与される アロプリノールやラスブリカーゼの使用 等の処置のことです。 選択肢 1 ですが フィルグラスチムは、G-CSF 製剤です。 白血球等を増やす効果があります。 選択肢 2 ですが グラニセトロンは、吐き気どめです。 選択肢 3 ですが アロプリノールは、XO 阻害薬です。 選択肢 4 ですが ピタバスタチンは、スタチン系です。 コレステロールを低下させます。 選択肢 5 ですが メロペネムは、カルバペネム系抗菌薬です。 β-ラクタム系の一種です。 細胞壁合成阻害薬です。 これらの中では スタチンが最も優先順位が低いと考えられます。 よって、正解は 4 です。 問261(薬理) 前問の支持療法に用いる薬物の作用機序で、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 尿酸トランスポーターを阻害する。 2 DNAをアルキル化し、DNA合成を阻害する。 3 セロトニン5 -HT3受容体を遮断する。 4 G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)受容体を刺激する。 5 PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)を阻害する。 選択肢 1 ですが 尿酸トランスポーターを阻害するのは プロベネシドやベンズブロマロンです。 よって、選択肢 1 は誤りです。 選択肢 2 ですが アルキル化剤は、支持療法ではなく メインの抗がん治療薬の作用機序です。 よって、選択肢 2 は誤りです。 選択肢 3 は、正しい記述です。 グラニセトロンの作用機序です。 選択肢 4 は、正しい記述です。 フィルグラスチムの作用機序です。 選択肢 5 ですが PPARγ の「活性化」 or 「刺激」 であれば ピオグリタゾン等についての記述であると考えられます。 支持療法に用いる薬物の作用機序としては 不適切であると考えられます。 以上より、正解は 3,4 です。 問262-263 50歳女性。発熱、咽頭痛を主訴として受診し、入院することとなった。入院時に薬剤師が持参薬を確認したところ、下記の薬剤を服用していることが分かった。服薬コンプライアンスは良好であった。 入院時検査値:体温 38.7℃、血圧 108/72mmHg 赤血球数 180×104/μL、白血球数 2,200/μL、血小板 3×104/μL 血清クレアチニン値 0.7mg/dL、BUN 18mg/dL、AST 25IU/L、ALT 30IU/L 空腹時血糖値 96mg/dL Na 140mEq/L、K 4.2mEq/L、Mg 2mEq/L 胸部X線検査では肺に異常所見なし。 持参薬の内容 (薬袋1) リセドロン酸Na錠17.5mg 1回1錠(1日1錠) 毎週月曜日1日1回 朝起床時 2日分(投与実日数) (薬袋2) プレドニゾロン錠5mg 1回半錠(1日半錠) 1日1回 朝食後 14日分 (薬袋3) メトトレキサートカプセル2mg 1回4カプセル(1日8カプセル) 毎週月曜日1日2回 朝夕食後 2日分(投与実日数) (薬袋4) 酪酸菌錠(宮入菌として)20mg 1回1錠(1日3錠) スクラルファート細粒90% 1回1g(1日3g) 1日3回 朝昼夕食後 14日分
問262(実務) 薬剤師は、この女性の検査所見より、服用中の薬剤の副作用を疑った。原因となった可能性の高い持参薬はどれか。1つ選べ。
1 リセドロン酸Na錠17.5mg 2 プレドニゾロン錠5mg 3 メトトレキサートカプセル2mg 4 酪酸菌錠(宮入菌として)20mg 5 スクラルファート細粒90%
問263(薬理) 前問の「原因となった可能性の高い持参薬」の標的分子として正しいのはどれか。1つ選べ。
1 グルココルチコイド受容体 2 シクロオキシゲナーゼ 3 カルシニューリン 4 ジヒドロ葉酸還元酵素 5 ファルネシルピロリン酸合成酵素 検査所見から 発熱、及び、血球数の減少が見て取れます。
持参薬からは リセドロン酸 →ビスホスホネート系、骨粗しょう症治療薬
プレドニゾロン →ステロイド
メトトレキサート(MTX) →免疫抑制剤の一種。リウマチか?
整腸剤 →消化器系に違和感とか? という所がまず連想され MTX + ステロイド なら リウマチだろうなぁ、と印象を持つのではないでしょうか。
血球減少症が代表的副作用である メトトレキサートが原因である可能性が 高いと考えられます。
メトトレキサートは 葉酸代謝拮抗薬です。 免疫抑制剤の一種です。 ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害します。
以上より 問262 の正解は 3 問263 の正解は 4 です。 |