問300-301 62歳女性。3年前に悪性リンパ腫と診断され、R-CHOP療法が施行された。R-CHOP療法施行直前の検査で肝機能検査値に異常はなかった。R-CHOP療法4コースを終了後、定期的に通院していたが、あるときALT 742U/L、AST 1,354U/Lと上昇したため入院した。 エンテカビルの投与によりALT及びASTは低下した。本人に確認したところ、10年前の献血時にHBc抗体陽性を指摘されていたことが判明した。
問300(実務) 本症例に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 本症例の悪性リンパ腫は、Hodgkinリンパ腫である。 2 ALT及びASTの上昇は悪性リンパ腫の再発に起因する可能性が高い。 3 R-CHOP療法により、肝組織が直接障害され、ALT及びASTが上昇した。 4 R-CHOP療法開始後にHBVに再感染した可能性が高い。 5 R-CHOP療法によりHBVが再活性化した可能性が高い。 選択肢 1 ですが 悪性リンパ腫は 大きく2つに分類されます。 ホジキンリンパ腫(10%程度)と 非ホジキンリンパ腫(90%程度)に 分類されます。
非ホジキンリンパ腫は更に B系と、T系に分類されます。 それぞれ治療法が違います。
本症例では R-CHOP療法が施行されていることから B系非ホジキンリンパ腫と判断されます。
従って 選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2~4 ですが 10年前の献血時に HBc 抗体陽性ということから B型肝炎のキャリアであり
R-CHOP療法により免疫が弱まった所 肝炎ウイルスが増殖(再活性化)した結果 急性肝機能悪化 → ALT、ASTの上昇 と考えられます。
従って 選択肢 2~4 は誤りです。
以上より、正解は 5 です。 問301(病態・薬物治療) HBVが原因のB型肝炎に関する記述として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 HBワクチンは感染予防には有効ではない。 2 性行為による感染はない。 3 IgM型HBc抗体は肝炎の後期に現れる。 4 初感染で自然治癒するのは半数以下である。 5 HBs抗体は肝炎の病態が終息した後に上昇する。 選択肢 1 ですが B型肝炎ウイルスに対して ワクチンは有効です。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが B型肝炎ウイルスの感染経路は 垂直感染及び水平感染です。 血液、体液を通じて感染するので 性行為による感染もあります。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが HBc→HBe→HBs の順で 検査で陽性化します。 つまり この順で産生されて現れる ということです。 (添字がアルファベット順 と 覚えておくとよいかもしれません。)
従って HBc抗体が後期 ではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが 初感染後、7~80%は 自然治癒することが知られています。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい選択肢です。
以上より、正解は 5 です。 |