102-6~10 解説まとめ


6

シスプラチン((SP-4-2)Diamminedichloroplatinum)はどれか。1つ選べ。





英語の化合物名の

「Diammine」、「dichloro」 とある所から

OH基が 2 つ付いている選択肢 3,4,5 は誤りです。


シスプラチンは

中心がPtで、「cis」 つまり同じ側に

Cl が 2 つ、NH3 が 2 つずつ存在する構造です。



よって、正解は 1 です。




ちなみに

(SP-4)とは、平面四角形を意味する

多面体記号と呼ばれるものです。


その後の -2 は

四角形上の4つの配位子の位置関係を示しています。


それぞれの順位番号を考え(Clが1、NH3 が2)

一番小さい配位子から見て

トランスの位置にある順位番号を意味します。


つまり

Clから見てトランスの位置に

NH3がある ということを意味します。




7

キラルな化合物はどれか。1つ選べ。



 

1は、1位の炭素の4本の手のうち

1つは-Cl1つは-Br、残る2つは炭素環となりますが

この2つが全く等価となるので

これはアキラル(キラルではない)です。


2は、1位の炭素に-Br2つ付いているので

アキラルな化合物です。しかも、炭素環のほうも1と同様に等価です。


3は、1位と3位の炭素が不斉炭素となっています。

画面上側の炭素を1位とするなら、1位がR3位がSです。

しかし、(1R,3S)体のエナンチオマーである(1S,3R)体は

実は(1R,3S)体と同一の化合物(メソ化合物)です。

よって、これもアキラルな化合物となります。



43と同様、1位と3位の炭素が不斉炭素となっています。

しかし、この(1R,3R)体はどのように回転させても

(1S,3S)体とは重なりません。

よって、4はキラルな化合物です。

5については12と同じ考え方で

1位の炭素の4本の手のうち、炭素環につながる2本が等価です。

4位の炭素についても全く同様のことがいえるので

これはアキラルな化合物といえます。


以上から、正解は4です。


問8

ラジカル中間体を経る反応はどれか。1つ選べ。



この問題はラジカル反応を答える問題ですが

3に書かれている「光照射」という条件が大ヒントになっています。

ラジカルは高エネルギー状態であるがゆえに高い反応性を持ちますが

逆にいうと、ラジカルを発生させるためには

外から高いエネルギーを注がなくてはいけません。

それが、加熱であったり光照射であったりします。

よって、選択肢3が正解となります。


以上で答えは出ていますが

参考までに各選択肢それぞれの反応について以下で解説します。


1は第三級アルコールとハロゲン化水素との置換反応で

以下のようなSN1反応によりハロアルカンが生成します。

中間体はカルボカチオンです。



2は第三級ハロアルカンの脱離反応によるアルケンの生成反応です。これはE2反応となるので、中間体を経ない1段階の反応です。



3はトルエンの臭素化ですが

ベンジル位は反応性が高く、求核置換反応の反応点となります。

これはラジカル中間体を経た反応となります。

具体的には、NBSN-ブロモスクシンイミド)に

光を照射することで臭素ラジカルが生成し

それとトルエンのメチル基との反応によって

ベンジルラジカルとなり、それが臭素(Br2)と反応することで

生成物を得ることができます。

ちなみに、臭素(Br2)が突然登場していますが

これは臭素ラジカルが生成する反応で生じた

臭化水素(HBr)とNBSとの置換反応で

HBrを交換することによって臭素(Br2)とイミドが生じるので、そこから来ています。




4はヨードメタンと水酸化ナトリウムとの反応で

これはSN2反応なので1段階の反応であり、中間体は経る反応ではありません。


5は共役ジエンとアルケンとの反応で環化反応が起きているので

これはDiels-Alder(ディールス・アルダー)反応です。

Diels-Alder反応は、ペリ環状反応という

環状の遷移状態を取る一段階の反応で進行します。

よって、これも4と同様、中間体を経る反応ではありません。



問9

オゾン(O3)の構造式として最もふさわしいのはどれか。1つ選べ。



オゾンは問題文にもある通り、O3で表される分子です。

その構造は、3つの酸素原子が折れ線型に並んでいて

電荷の配置は1のようになっています。


2の場合、左側の酸素に二重結合と+の両方が付いているのがおかしいです。

酸素は6価なので左側の酸素には二重結合のほかに

非共有電子対が2組あることになりますが

そうするとこの酸素は8電子則を満たすので+を付ける余地はありません。


3の場合、中央の酸素には二重結合が2つ付いていますが

酸素は6価なので、このほかに非共有電子対を1組持つことになります。

しかし、そうするとこの酸素の価電子は10になってしまい8電子則に反するので、この構造も誤りです。


4では、分子全体の電荷の合計が0になっていない点がおかしいです。

また、分子全体の価電子数を数えると20(=767)になっていて

O3が本来持つべき18個と合いません。よって、これも誤りです。


5について、炭素の三員環(シクロプロパン)や

炭素2つと酸素1つから成る三員環(エポキシド)ならともかく

酸素のみの三員環だと高エネルギー過ぎるので分子として成立しません。


以上の通り、選択肢25はどれも不適切ですが

1はこのような不備や矛盾がないので、1が正しい構造式となります。


問10

次のアミノ酸のうち、破線で囲んだ部分の塩基性が最も強いのはどれか。1つ選べ。



問題文にあるように、選択肢はいずれもアミノ酸の一種です。

生化学で扱う20種類のα-アミノ酸(タンパク質を構成するアミノ酸)については

その名称と構造、簡単な特徴を全て覚えておくことが望ましいです。


選択肢の中では

1がアスパラギン酸、2がアルギニン

3がグルタミン、4がトリプトファン

5がヒスチジンとなっています。


20種類のアミノ酸のうち塩基性を示すのは

リシン・アルギニン・ヒスチジンの3つなので、今回は25の比較となります。


2の破線部分はグアニジン構造

5の破線部分はイミダゾール構造となっています。

このうち、グアニジンが塩基として働いてプロトンを引き抜いた場合

その共役酸は以下の図のように共鳴構造を描くことができ

電子が非局在化できるので安定しています。

よって、グアニジンは強い塩基性を示すといえます。



一方、イミダゾールの例でも

以下の図のように共役酸が生成するので

イミダゾールも塩基として成立します。

ただし、共鳴構造は2種類しかなく、グアニジンほど強い塩基にはなりません。



よって、正解は2のアルギニン(グアニジン構造)となります。


ちなみに、1の破線部分はカルボン酸であり

これは明らかに酸性ですが、3のアミド(カルボン酸アミド)と

4のインドール構造はいずれも中性です。

アミドの窒素原子が持つ非共有電子対は

以下の図のように共鳴構造を成立させるために使われています。



よって、この非共有電子対はプロトンを引き抜くために使うことができないので、アミドは塩基ではなく中性となります。一方のインドール構造も同様に、窒素原子が持つ非共有電子対が五員環の芳香族性を保つために使われているので、塩基としては働きません。