国試103回 解説101~105



101

 

化合物Aの最も安定な立体配座に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

 

 

1.シクロヘキサン環は、いす形配座である。

2.ヒドロキシ基aは、アキシアル位にある。

3.イソプロピル基bは、エクアトリアル位にある。

4.炭素-炭素結合cdは、ほぼ平行である。

5.炭素-水素結合efは、ほぼ平行である。

 

 

正解 (2)

 

シクロヘキサンには主にいす形配座と舟形配座があり、これらは平衡が成り立っています。

 

 

ただし、いす形配座のほうが置換基同士の立体障害が小さく済むので、いす形配座が最も安定な立体配座となり、平衡もそちらに傾きます。

 

また、いす形配座の中でも、大きい置換基がエクアトリアル位にあるほうがより安定です。

これは、大きい置換基がアキシアル位にあると、1,3-ジアキシアル相互作用による立体反発が生じるからです。

 

以上を踏まえて化合物Aを立体的に描くと、以下のようになります。

 

 

 

ここで選択肢を見ると、1はいす形なので正しいことがわかります。

23は、全ての置換基がエクアトリアル位を取ることができるので、2が誤りで、3が正しい記述となります。

45も上図の構造式を見ると正しいと判断できます。

 

よって、正解は2です。

 


 

102

 

以下の反応で得られる化合物の酸素原子アに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

 

 

1.主に酸素原子a由来である。

2.主に酸素原子b由来である。

3.主に酸素原子c由来である。

4.主に酸素原子d由来である。

5.酸素原子a由来のものとd由来のものが約50%ずつ存在する。

 

 

正解 (3)

 

1つ目の反応は過酸によるアルケンのエポキシ化で、このsyn付加反応によってエポキシドが生成します。

 

 

2つ目の反応は酸触媒による開裂反応ですが、このとき中間体としてカチオンが生成します。

第一級カチオンよりも第三級カチオンのほうが安定なので、以下のような反応機構が描けます。

 

 

よって、酸素原子アはc由来となるので、正解は3となります。

 


 

103

 

下式に示した、光学的に純粋な化合物Aと水とのSN1反応に関する記述のうち、正しいのはどれか。2選べ。

 

 

1Aの化合物名は(R)3bromo3,4dimethylpentaneである。

2.光学的に純粋なアルコールが得られる。

3.反応速度は、Aの濃度及び水の濃度のいずれにも比例する。

4.水は求核剤として作用する。

5.反応はカルボカチオン中間体を経由して進行する。

 

 

正解 (4)(5)

 

1は誤りで、正しくは(S)3bromo2,3dimethylpentaneです。

 

 

立体配置について、不斉炭素に結合している4つの原子団の優先順位は上図のの通りです。

よって、④を奥に見たときに①、②、③が反時計回り(左回り)になっているので、S体であることがわかります。

また、主鎖の炭素は赤い数字で示した順番に数えます。

もし反対にしてしまうと、「3bromo3,4dimethyl」となりますが、より若い番号で表記できる「3bromo2,3dimethyl」を採用します。

 

25について、SN1反応とはカルボカチオン中間体を経る2段階の求核置換反応です。

カルボカチオン中間体が平面構造となるため、最終生成物はラセミ体となります。

よって、2は誤りで、5は正しい記述と判断できます。

 

3に関して、SN1反応の反応速度は基質濃度のみに依存します(求核試薬は関係しません)。

これは、一連の反応の律速段階が、基質がカルボカチオンになるところだからです。

よって、反応速度は、求核剤である水の濃度には比例しないので、3は誤りです。

ちなみに、SN2反応の反応速度は、基質と求核試薬の両方の濃度に依存します。

 

4で、H2Oが求核剤となってアルコールが生成するので、これは正しいです。

 

以上から、正解は45になります。

 


 

104

 

ジクロロメタンを溶媒として、同じ物質量の塩化ベンゾイルとベンジルアミンとを室温で反応させたところ、塩化ベンゾイルのほぼ半量が生成物に変化したところで反応が停止した。

この反応を再度行うにあたって、反応条件を改善して、塩化ベンゾイルのほぼ全量を生成物に変換したい。

改善方法として適切なのはどれか。2選べ。

 

 

1.ベンジルアミンに対して1当量以上のトリエチルアミンをさらに加える。

2.ベンジルアミンの量を2倍にする。

3.塩化ベンゾイルの量を2倍にする。

4.ジクロロメタンの代わりにメタノールを溶媒として用いる。

5.ジクロロメタンの量を半分にする。

 

 

正解 (1)(2)

 

この反応はアミンの求核置換反応です。

問題文に記載された化学反応式から、反応前後でHClが抜けていることがわかります。

よって、この反応では塩化ベンゾイル1分子とベンジルアミン1分子から、生成物1分子とH1つ、Cl1つ生じることになります。

このHが塩基であるベンジルアミンと反応してしまうので、最初の条件では反応が半量しか進みません。

 

基質である塩化ベンゾイルを全量反応させるためには、ベンジルアミンがHによって潰されても大丈夫なようにベンジルアミンを追加するか、または、ベンジルアミンがHに潰されないようにするかの2つです。

 

前者の解決策は選択肢2です。

基質が完全に反応するとH1当量生じますが、ベンジルアミンが2当量あれば、1当量分がHが反応しても、もう1当量分で基質と完全に反応できる計算となります。

 

後者の解決策は選択肢1です。

ベンジルアミンよりも塩基の強いトリエチルアミンがあれば、Hはそちらと反応します。

結果としてベンジルアミンはそのままの形で残るので、全量を基質と反応させることができます。

 

以上から、正解は12です。

 


 

105

 

図は、タンパク質加水分解酵素キモトリプシンの酵素活性部位における相互作用を模式的に示したものである。

この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2選べ。

 

 

1His57Ser195との間の相互作用は、Ser195のヒドロキシ基の求核性を高めている。

2Asp102His57との間の相互作用は、His57のイミダゾリル基の塩基性を低下させている。

3.疎水性ポケットと基質タンパク質との間の相互作用は、酵素の基質特異性を高めている。

4Ser195のヒドロキシ基は、基質タンパク質をプロトン化することによって、ペプチド結合の切断を容易にしている。

 

 

正解 (1)(3)

 

選択肢 1 は、正しい記述です。

His 57 N 原子が

Ser 195 H を引き抜くことで

Oができ、求核性が高まります。

 

 

選択肢 2 ですが

Asp102 により、His57 のイミダゾリル基の

塩基性が「高」まります。

 

これにより

His 57 N 原子が Ser 195 H

引き抜くことを可能にします。

よって、選択肢 2 は誤りです。

 

 

選択肢 3 は、正しい記述です。

 

 

選択肢 4 ですが

Ser 195 の ヒドロキシ基は

基質タンパク質のカルボニル基を攻撃し

共有結合を一時的に作ります。

 

基質タンパク質のプロトン化ではありません。

よって、選択肢 4 は誤りです。

 

 

ちなみに

57,102,195 は、キモトリプシンの

触媒三残基として知られています。

 

 

以上より、正解は 1,3 です。

 



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