問226-229
74歳女性。年齢を考えるとそろそろ骨がもろくなり、寝たきりになるのではないかと心配になった。
問226
この女性が薬局を訪れ、サプリメントの摂取について相談した。 薬局に取りそろえている以下の成分を含むサプリメントのうち、カルシウム(Ca)のほかに摂取する成分として優先度が高いのはどれか。2つ選べ。
1.ビタミンA 2.ビタミンC 3.ビタミンD 4.ビタミンE 5.ビタミンK
正解 (3)、(5)
骨粗しょう症薬の中でも アルファカルシドールや メナテトレノン(グラケー)を覚えていれば
必要な成分は ビタミン D 及び ビタミン K と 判断できると考えられます。 問226 の正解は 3,5 です。
問227
この女性に「骨粗しょう症は加齢とともに骨がもろくなり、進行しやすい病気なので、無理のない軽い運動を心がけてください」と指導した。 この指導の根拠となる骨のリモデリングに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.エストロゲンは、骨からのCa2+遊離を促進する。 2.骨細胞は、増殖能を有する未分化細胞であり、Ca2+を細胞外へ分泌する。 3.骨芽細胞は、コラーゲンを細胞外へ分泌して骨基質をつくる。 4.カルシトニンは、破骨細胞の機能を抑制して、骨形成に働く。 5.負荷がかかる運動は、破骨細胞を活性化することで骨量を増加させる。
正解 (3)、(4)
選択肢 1 ですが エストロゲンは、代表的な女性ホルモンです。 エストロゲンの減少は、骨の密度減少につながります。
問題文の「骨からの Ca2+ 細胞外へ分泌」とは 骨の Ca が減少する方向の記述です。 つまり、エストロゲンが骨の密度減少 という内容です。 これは明らかに誤りです。
選択肢 2 ですが 骨細胞は分化済の細胞といえます。 ちなみに、増殖能はほぼありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが 破骨細胞が活性化されれば 骨の分解が進行します。 骨量は減少するはずです。 よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より 問227 の正解は 3,4 です。
問228
3ヶ月後、この女性が全身倦怠感を覚え、近医を受診したところ、血清Ca濃度10.0mg/dL、血清アルブミン濃度3.0g/dLであった。 なお、補正血清Ca濃度は、血清Ca濃度と血清アルブミン濃度から次の式で算出される。 以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
補正血清Ca濃度(mg/dL)=血清Ca濃度+[4-(血清アルブミン濃度)] 補正血清Ca濃度の基準値:8.4~10.2mg/dL
1.血清中のCa濃度を評価する際、この女性は高アルブミン血症であるため、補正血清Ca濃度を用いる。 2.この女性は低Ca血症と判断される。 3.イオン化したCaのみを測定しないと、この女性におけるCaの過不足は判断できない。 4.この女性は、脱力や脱水、腎障害を起こしやすいと予測される。 5.ビタミンを含む薬剤の中には、過剰摂取すると高Ca血症を引き起こすものがある。
正解 (4)、(5)
選択肢 1 ですが アルブミン濃度の基準値は 年齢により変動します。 とはいえ、3.5 以下は低い状態です。 「高アルブミン」ではありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが Albが 4 以下の時用いられるのが 補正 Ca 濃度です。 補正の結果、濃度は高くなります。
すると 10.0mg/dL よりも高めと補正されるので 「低 Ca 血症」ではありません。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが Ca は血中において、イオン化したものと タンパク質に結合しているものがあります。 測定しているのは、総 Ca です。 イオン化した Ca のみを測定しなければ ならないということはありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 は、正しい記述です。
アルブミンが 3.0 以下なので ネフローゼ症候群の疑いが強いです。 そのため、倦怠感や腎障害などが予測されます。
また、例えば ビタミン D 作用が過剰になると 高Ca 血症を引き起こすことがありえます。
以上より、正解は 4,5 です。
問229
骨の構成成分であるCaに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.Caは、主に遊離イオン状態で骨や歯に存在する。 2.骨に存在するオステオカルシンは、Caと結合する。 3.腸管からのCaの吸収は、カゼインホスホペプチドにより阻害される。 4.腸管からのCaの吸収は、シュウ酸やフィチン酸により亢進する。 5.パラトルモン(副甲状腺ホルモン)の過剰分泌により高Ca血症となることがある。
正解 (2)、(5)
選択肢 1 ですが 遊離イオン状態ではありません。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
選択肢 3 ですが カゼインホスホペプチドは Ca の吸収を助けます。 トクホとして認められている成分です。 「阻害」ではありません。 よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが シュウ酸やフィチン酸は Ca の吸収を阻害します。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より 問229 の正解は 2,5 です。
問230-231
65歳男性。長期にわたるアルコール依存症と診断されて、入院治療中。 食事が摂れず栄養不良の状態であったが、さらに担当看護師より、眼球運動の異常やふらつき、意識障害が確認されるようになったと報告があった。 この患者の症状の原因としてビタミン欠乏の可能性が考えられた。
問230
この患者で欠乏し、症状の原因となっている可能性が最も高いビタミンはどれか。1つ選べ。
1.ビタミンB1 2.ビタミンB2. 3.ビタミンB6 4.ビタミンB12 5.ビタミンE
正解 (1)
アルコールの分解に 大量に使われること 及び 眼球運動の異常 から ビタミン B1 の欠乏の可能性が 最も高いと考えられます。 よって、正解は 1 です。
参考 衛生まとめ 1-1 1)
問231
この患者の症状の原因となっている可能性が最も高いビタミンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.緑黄色野菜に多く含まれる。 2.アミノ基転移反応の補酵素として働く。 3.生体内でリン酸化されてから、糖質を代謝する酵素の補酵素として働く。 4.さらに欠乏すると、ペラグラ様皮膚炎を発症することがある。 5.多量に摂取しても尿中に排泄されるため、重篤な過剰症は特に知られていない。
正解 (3)、(5)
選択肢 1 ですが ビタミン B1 は 米の胚芽、大豆、豚肉などに 多く含まれます。 よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが アミノ基転移反応の補酵素といえば ビタミン B6 です。 よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが 欠乏症がペラグラであるのは ナイアシンです。 よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 3,5 です。
参考 衛生まとめ 1-1 1)
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