問132 強心配糖体に関する記述のうち 正しいものの組合せはどれか。 a 心筋細胞膜の Na+/Ca2+ 交換系を直接抑制し 心筋細胞内 Ca2+ 濃度を増加させる。 b 房室伝導時間を短縮し 心電図上 PR 間隔を短縮する。 c 心拍数を減少させるので 発作性上室性頻脈の治療に用いられる。 d 心室筋の自動性を高めるので 副作用として心室性期外収縮を起こす。 e 低 K+血症を起こす利尿薬との併用により ジギタリス中毒が増強される。 1(a、b、c) 2(a、b、e) 3(a、c、d) 4(b、d、e) 5(c、d、e) 記述 a ですが 強心配糖体は、心筋のNa+/K+-ATP ase が作用点です。 Na+/Ca2+ 交換系を直接抑制することは、ありません。 ちなみに、心筋細胞内 Ca2+ 濃度を増加させる。 という部分は正しいです。 Na+/K+-ATP ase → Na+ が外に排出されなくなる → Ca2+ 排出機構である Na+/Ca2+ 交換系の働きが抑制 → 心筋細胞内の Ca2+ 濃度が上昇 →心筋収縮の増強につながる という流れで、心収縮力増強がおきると考えられています。 よって、記述 a は誤りです。 記述 b ですが 強心配糖体は、心臓の房室結節を直接抑制します。 この結果、心房の興奮が心室へと伝導する時間が遅延します。 房室伝導時間を短縮するわけではありません。 ちなみに、房室伝導時間が短縮すると、確かに心電図上では PR 間隔が短縮します。 よって、記述 b は誤りです。 記述 c ですが、強心配糖体により、心拍数は減少します。 そのため上室性頻拍に適応があります。 記述 c は正しいです。 捕捉。 ちなみに「上室性」とは 心電図特有の、つまり、不整脈について考える時に 特有の言葉です。 心室よりも上ぐらいの意味ですが それって心房では?と感じると思います。 ですが、心房には 房室結節のような、特徴的な部分が存在するため 心電図で見た時に 「房室結節における不整脈」の波形と 「心房部分のその他の部分における不整脈の波形」とでは 微妙な違いがあります。 そこで、大雑把に 「心房(房室結節以外)や房室結節の不整脈における 共通する特徴を示す波形」に対して 総称して「上室性・・・」と読んでいるようです。 つまり、心電図を見て 「あ~、上室性頻拍ですね~」といっていたら 「心室よりも上の方での、頻脈性不整脈だな~」 といっていると、考えればよいということです。 で、更に細かい分類で 心房細動、心房粗動、WPW症候群などに 分類されていきます。 捕捉 終わり 記述 d ですが 強心配糖体の作用の一つとして 心室の自動興奮性を増大するというものがあります。 そのため、副作用として 心室性期外収縮を起こすことがあります。 よって、記述 d は正しいです。 ちなみに 期外収縮では、心房性よりも、心室性の方が より危険性が高い可能性があります。 記述 e ですが 低 K+状態では、ジギタリス中毒の毒性が強く現れます。 これは、阻害するのが Na+/K+-ATP ase なので 強心配糖体は、細胞内のK+の濃度を下げる薬であるといえます。 そのため、低K+状態では より細胞内の電解質バランスの崩れが大きくなるためです。 よって、記述 e は正しいです。 以上より、正しい組み合わせは (c , d , e)です。 正解は 5 です。 |