2016.07~2016.09



◆2016.09.28

「俺はまだ本気出してないだけ」


「俺はまだ本気出してないだけ」(青野春秋さんの漫画)を読んだら面白くて
ほくほくしているので、今日のテーマは本気について。

実は(実も何も隠してないですが)、僕も失敗したり負けたりしたときに、
今のは本気じゃなかったから仕方ない…と、自分で自分に云いわけをすることがよくあります。

もちろん、そんなこと口に出したらただの嫌な奴なので、あくまで自身への云いわけに使うだけです。
そもそも、こんなセリフをヒト様に向けて発したら、「だったら本気出しなよ…」と云われるのが関の山です。
そう云われてしまうと返す言葉もない…と思いきや、ありました、返す言葉。

先日、「Fight Music」(SEKAI NO OWARIの曲)を聴いていたら、
これだー!と云いたくなるような歌詞に出会ったんです。


    だって、本気なんか出して負けたらどうする?


これです、これ。
自分が強いから本気を出さないんじゃなくて、弱いけど…というか、
弱いからこそ負けることを見越して、負けたときに云い逃れできるように、
それで自分が挫折したり立ち直れなくなるのを防ぐために本気を出してない…
って、すごい良い云いわけだと思います。

いえ…わかってますよ、もちろん。
秀逸な云いわけについて吟味してる時点で、もうすでに負けじゃないかってことくらい。


そんなわけで傷つかない負け方を身につけた僕ですが、
本気を出して負けて、そして本気で悔しがってるようなヒトを見ていると…
なんかもう、嫉妬と羨望が入り混じったような妙な感情が芽生えてきます。


僕もいつか、頑張って頑張って頑張って…そして負けられるといいな。

…と思うものの、「いつか」とか「いいな」とか云ってる時点で、幸先不安です。


(ICO)




◆2016.09.22

「湿布の使い分け」


解熱・鎮痛剤として広く使われているロキソニン。
ロキソニンSとしてOTC(一般用医薬品)になってからは、テレビCMも頻繁に流れ、ますます有名になったような気がします。
そんなロキソニンSが、このたび(もう先月の話だけど)、外用鎮痛消炎剤として発売されました。

外用薬と云われてパッと連想するのは何でしょうか…たぶん、湿布と答えるヒトが多いと思います。
湿布には大きく分けて、パップとテープがあるのですが、パップとテープの違いはご存じですか…?
ここで Yes. と答えた方にとっては以下の文章は駄文なので、ざっくり読み飛ばしちゃってください。

ちなみに、今回発売された外用薬のロキソニンSは「テープ」、「パップ」、「ゲル」の3種類です。
ゲルはゼリーみたいなやつなのでわかりやすいですよね。
パップとテープの見た目や使い方の面での違いについて、今日はご紹介します。
(大雑把な説明になりますので、厳密な定義などを知りたい方は、別途お調べください。)

まず、パップかテープかは色で判断することができます。
基本的には、白いものがパップ、ベージュ色のものがテープであることが多いです。

また、水分を多く含んでいてひんやりするのがパップで、
水分が多いせいで密着性がイマイチなので、結構はがれやすいです。
一方、水分が少なく、貼ったときにひやっとしないほうがテープです。
こちらはひんやりしないどころか、むしろ保温性があるといえます。
また、伸縮性・密着性が良く、意図せずはがれてしまうことは少ないです。

以上のことから、使い方としては、患部を冷やしたい用途の薬はパップ剤が多く、
患部を温めたい場合にはテープ剤を用いることが多いと考えられます。
具体的には、ねんざとか打撲のような痛みにはパップを、
肩こりとか腰痛とかの痛みにはテープを使うといいと思います。

イメージとしては、
 急性症状 → 冷やす → パップ剤
 慢性症状 → 温める → テープ剤
という感じですね。

ぜひ、参考にしてみてください。

でも、くり返しになりますけど、これらは大雑把な説明でしかないので、
実際にドラッグストアで薬を購入する際は、薬剤師さんや登録販売者さんと相談した上で、
ご自分の症状に適したものを選ぶようにしてください。

ぁ…そうだ。

最後に、ロキソニンSはテープでもパップでもゲルでも、15歳以上のヒトにしか使えないので、
湿布だからって気軽に子どもに使ったりしないよう、気をつけてくださいね。


(ICO)




◆2016.09.15

「雨が好き」


雨って厭われがちだけど…それって、詰まるところ、
持っているバッグや着ている服が雨で汚れたりシミになったりするのがイヤだ。って話ですよね?
そんなわけで通学・通勤中の雨が嫌われる傾向にあるのは理解もできるんだけど、
持ち物や身につけてるものの話じゃなく、自分自身の身体に関しては、
雨を浴びるのってかなり気持ち良いと感じませんか…?

例えば、ランニング中とか。
走ってるわけだから当然バッグなんて持ってないし、おしゃれな服も着てないし(普段からおしゃれじゃないけど)、
もはや汗かいてるから、濡れることへの抵抗なんてこれっぽっちもないし。
このタイミングで雨が降ると、なんて幸運なんだ!って少しだけ胸が躍ります…♪

…僕の個人的な好みで云えば、普通の出勤日や休日の雨だって好きなんですけどね。


「君という光」(GARNET CROWの曲)の歌詞に、「君という光、浴びて呼吸した」ってフレーズがあるんですけど(唐突)、
この曲が好きなので、浴びたいものランキング1位は「君という光」だとして、「恵みの雨」は2位くらいでしょうか。
ちなみに、3位は「冷たい風」…かな。秋の夕月夜に吹く肌寒い風が好き。


光と雨と風を浴びれば、ヒトは生きていけると思います。


p.s.

今日は、何だか至って個人的な文章ですみません…。
薬学や科学の話が思いつかないときは、たまにこんな文章も書きます。


(ICO)




◆2016.09.08

「スマホで偽造薬をチェック」


偽造、という言葉を聞いて、あなたは何を連想しますか…?
お札、硬化、ブランドバッグや洋服のデザインなどなど…
挙げればキリがないほど、世の中は偽物に満ちています。

そんな中、医薬品業界でも偽造薬には結構悩まされています。
偽物の薬が出回った場合、製薬メーカーの経済的損失はもとより、
ユーザーである患者さんの健康面にも大きく影響が出得る話になるので、
ある意味でブランド品の偽物などより悪質とも云えそうです。
(メーカーの経済的損失がその業界の死活問題になり得るから、
 どっちが悪質とか関係ないかも…。)

しかし、そんな現状を打破すべく、電通国際情報サービスという会社が
面白い偽造薬防止策を講じていたので、
今日はその新技術についてご紹介したいと思います。

その技術とは、医薬品の箱やラベルに肉眼では見えない微細な凹凸をつけて、
正規品か偽造薬かを見極めたいときには、スマホのアプリを起動して
その箱やラベルにかざすと、そのパッケージが本物かどうかを判断してくれる
…というような技術です。

微細な凹凸というのは印刷機によって作られますが、
薬によって凹凸のパターンを変えて管理できるので、
多種多様な薬を区別することができますし、一方で偽造する側としては、
肉眼では見えないほどの微細な凹凸パターンを模すというのは、
かなりマネしづらいはずです。

この技術のすごいところは、本物と偽物の差異を如何にして作るか、
という点ではなく、この技術が広く普及するよう、
ユーザーの使いやすさを追求している点だと思います。

判定にはスマホを使えばいいこと(複雑な機器や高度な技術が不要)とか、
微細な凹凸を作るのが一般的な印刷技術で対応可能(専用の印刷機は不要)とか、
そういうところに気を配っているのが素敵なところですね…♪
実際、高性能にも関わらず、使いにくさが原因で流行らなかった技術も、
過去には幾らでもあったでしょうし。

それでも偽造する側とされる側の闘いはこれからも続くんでしょうけど…
だとしても、この技術が、製薬メーカーをしばらくの間守ってくれる
大きな一手となることを願います。


参考URL  : ㈱電通国際情報サービスの公式HP


(ICO)




◆2016.09.03

「二次元TLC」


TLC(Thin-Layer Chromatography、薄層クロマトグラフィー)、使ったことありますか…?
シリカゲルを塗布したガラス板に試料をスポット的に乗せ、それを溶媒に浸すことで
試料の成分分離や標準品との比較(同定)ができる、便利な研究グッズです。
なんか説明がド下手ですけど、薬学部の皆さんの多くは有機化学の実習とかで
扱ったことがあると思いますので、ご自身の経験でうまいことカバーしてください。
(使ったことのない方、ごめんなさい。興味があったらぜひ調べてみてください。)

TLCは仕組みが簡単で手軽であるのが最大のメリットです。
基質と反応中の試料を並べてスポットすることで、
未反応の基質が残っているかどうか確認できます。
もし目的の生成物がすでにあるなら、それを標品として並べておけば、
生成物がちゃんとできてるかどうかもわかります。
未知の生成物であっても、何種類くらいの物質ができたかなど、
大雑把な情報を得ることはできます。
これをNMRなどで知ろうとすると、試料をちゃんと精製してからでないといけませんが、
TLCなら反応中の溶液のまま使えるので、かなり便利です。

…ですが、プレート上で各物質がそううまく分かれてくれるとは限りません。
基質も生成物も似たような構造をしていると、
しばしばスポットが同じ高さのところに出てしまうので、
2つのスポットが区別できないこともあります。
そういうときは、溶媒の種類を変えたり、
2種類以上の溶媒を色んな比でブレンドしてみると、
スポットがうまく分離してくれるときもあります。
または、発色剤(p-アニスアルデヒドやリンモリブデン酸など)を使うことで
スポットに色を付けることができますが、化合物によってその色は様々なので、
基質と生成物が似たような高さであっても、色による区別が可能です。

けれど、溶媒を変えても発色剤を変えても、
やっぱり基質と生成物の区別がつかないこともあります。
そんなとき、僕はもう諦めますね…諦めるというのは、TLCに頼るのをやめて、
適当な時間で反応を止めて精製したのち、NMRなどの機器分析に頼るという意味です。

と思ったら、つい最近、TLCでもう一手打てることを知りました。
いや…もしかしたら結構基礎的な知識なのかもしれませんが、僕は知りませんでした。
それが今日のタイトルにもある「二次元TLC」です。
1回の展開ではうまくいかないときに使える方法で、
正方形のプレートを普通に1回展開させたのち、プレートを90°回転させ、
違う溶媒でもう一度展開させるんですって。
そうすると、1回の展開ではどうしても分離できなかったスポットを分離させることも
可能になる(かもしれない)そうです。
このやり方は思いつかなかったなぁ…二次元NMRとかもあるから、
云われてみればすごい納得なんだけど。

単純なことでも、知らないことも多々あれば、思いつかないことも数多くありますね…。
当たり前だと思わないことって大事だなぁ…。情報収集を怠らないことも必要。

まだまだ未熟です。


(ICO)




◆2016.08.26

「心臓と腎臓はどっちのほうが大切?」


五臓六腑…皆さんは、全部云えますか?
五臓は確か、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、肺…ですよね。
六腑は、胃と小腸、大腸…あと、何でしたっけ。

(…検索中…)

はい、正解は以下の通りでした。

五臓 : 心臓、肝臓、腎臓、脾臓、肺
六腑 : 胃、小腸、大腸、胆、膀胱、三焦

三焦って何だろう…って思ったかもしれませんが、これはリンパ管のことです。
…と知った風な口を利きましたが、すみません、僕は今、知りました。


さて、今日の本題は五臓六腑ではなく、その中でも心臓と腎臓です。

この間読んでた本に、「~が肝腎である。」っていう文章があって、
あれ、これは誤植(変換ミス)か?と思ったんですけど、
辞書で調べてみたら、「肝心」でも「肝腎」でもどちらも正しい表記なんですね。

でも、このような例は探せばいくらでもありますけど(正確と精確とか)、
そういえば「肝心」は何で「かんしん」じゃなくて「かんじん」なんだろう…
と、ちょっと疑問です。

2文字目以降だと音が濁ることは珍しくないですが、「心」に関しては、
安心、会心の一撃、遠心分離、左心室、以心伝心…などなど、
どれも濁らない「しん」で読むんですよね。
なのに「肝心」は「かんじん」。不思議。

ってことは、「かんじん」は「肝腎」表記がオリジナルで、
誤用が定着したとかで「肝心」表記が広まったのかな…?
と推測したのですが、結論は、当たらずとも遠からずといったところでした。

「かんじん」は、確かにもともとは「肝腎」だったようです。
それが、1956年に「同音の漢字による書きかえ」というものが行われ、
当用漢字(今で云う常用漢字のようなもの)ではない語句については
同音のほかの漢字に置き換えるという措置がとられました。
当時、当用漢字表に「心」はあるけれど「腎」がなかったので、
「肝腎」は「肝心」へと表記を変えたそうです。

その後、1981年に当用漢字を使う制度が廃止され、
常用漢字を使う制度へと変わりました。
常用漢字は、当用漢字よりは縛りの緩いもので、
この表にある漢字を使いなさい、というよりは、
この表にある漢字を使ったほうがわかりやすいからおすすめです、
という程度のものです。

この時点で、「肝腎」という言葉を復活させることはできるといえばできましたが、
依然として常用漢字表に「腎」がないので、強制力がないとはいえ、
敢えて「肝腎」に戻す動きも特になかったようです。

ところが、2010年に常用漢字表が改訂されて、
新たに「腎」が常用漢字に加わることになりました。
これによって、晴れて「肝腎」を堂々と使えるようになったのですが…
時すでに遅し、「肝心」が定着しているため、
僕達が普段読む文章は「肝心」となっていることが一般的だと思います。


…と、まぁ、これだけ「肝腎」について語っておきながら、
僕は今後も「肝心」を使うと思います。
腎臓も心臓もどっちも大事だし優劣はつけ難いけど…
「肝心」表記のほうが、なじみがありますからね。

でも、「肝心」のときだけ(?)、「心」を「じん」と読む理由についてわかったので、
これはこれで良い廻り道でした…♪


(ICO)




◆2016.08.20

「休日の過ごし方 ~宇宙編~」


宇宙飛行士の大西卓哉さんは、今もISS(国際宇宙ステーション)でお仕事の真っ最中です。
昼も夜も日曜日も月曜日もない世界で、科学の発展のために働いています…。

と思ったら、日曜日とか月曜日はあるみたいです、宇宙にも。
宇宙飛行士さんも大体のサラリーマンと同様、土日が休みなんですって。
云われてみればそりゃそうか、と思う反面…何となく、休みなく色々と研究したり作業したりしてるイメージを持ってました。

実際には1日の作業は、地上との打ち合わせを2h、実務を6.5hくらい…だそうです。
宇宙でも労働基準法みたいなのは適用されるんですかね。良いことです。
まぁ、そのほかに体力トレーニングなどの時間もあるので、当然、決して楽な生活ではないと思いますが。

でも、宇宙で週2日の休日を過ごすなんて…一体何をしたらいいんでしょうか。
僕達の休日から、水族館や公園のようなレジャー施設を消して、インターネットも使えず、
あまつさえスーパーに買い物に行くこともできないとなると、暇で暇でしょうがないような気がしますけど。
それとも、窓の外から漆黒の宇宙を眺めているのは、案外飽きない遊びなんですかね…。

そんな想像をしていたのですが…全然違いました。
宇宙飛行士さん達はISSに本や音楽プレイヤーや映画のDVDを持ち込んでて、休日はそれらを堪能しているようです。
案外、文化的な生活を送っているんですね…。

宇宙空間に浮かびながらハリー・ポッターを読むとか…何て贅沢な休日の過ごし方よ。


参考URL :
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の公式サイト


(ICO)




◆2016.08.16

「アレグラFXが1類から2類に変わりそうです。」


タイトルの通りなんですけど…嵐の大野くんが紫色の宇宙人を演じてるCMでお馴染みの「アレグラFX」が、
一般用医薬品の第1類から第2類へと移行しそうです。

厚生労働省の「薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会)」という審議会で、
以下の4つの第1類医薬品を第2類医薬品(1つだけは指定第2類医薬品)に引き下げることに決まりました。

    ・ イブプロフェン 600mg/日(商品名:ナロンメディカル、リングルアイビー錠α200) → 指定第2類医薬品
    ・ フェキソフェナジン塩酸塩(商品名:アレグラFX) → 第2類医薬品
    ・ セチリジン塩酸塩(商品名:ストナリニZ、コンタック鼻炎Z) → 第2類医薬品
    ・ アシタザノラスト水和物(商品名:アイフリーコーワAL) → 第2類医薬品

1番上のイブプロフェンについては、1日最大服用量が450mg/日のものに関してはすでに指定第2類ですが、
600mg/日のものも1類から指定第2類医薬品へ引き下げるという話です。

いずれも引き下げの理由は、副作用について類似の第2類医薬品と比較した際に違いが認められないから、というようなことです。

しばらく第1類で販売してて、それなりに知見が集まってきて、安全そうなので第2類に引き下げましょう…というのは
自然な流れだし、それ自体は良いことだと思います。

ただ、これでまた薬剤師を置くドラッグストアが減っちゃったらイヤだなぁ…というのは、個人的な感想です。
(指定第2類医薬品も第2類医薬品も登録販売者が店舗にいれば販売できるので、時給の高い薬剤師を雇わなくてもよくなります。)
登録販売者の方ももちろん難しい試験をパスしているわけで、別に薬剤師との優劣を語りたいわけではありません。
ただ単純に、薬剤師の働く場が目減りしていくことがほんの少し物悲しいと感じているだけです。

もちろん…第1類にはまだリアップやロキソニンSがあるから、
今すぐ薬剤師が登録販売者に取って替わるわけではないかもしれませんけれど。


参考URL :
薬事・食品衛生審議会(厚生労働省の公式サイト内)
(このページの議題2が、今回の件です。)


(ICO)




◆2016.08.13

「医薬分業のゆくえ」


医薬分業という世の流れ(国の方針)に従って、多くの病院では院外処方箋を発行しています。
けれど、大阪府守口市にある関西医科大学総合医療センターでは、このたび、院外処方箋の全面発行を中止し、
今まで院外処方だった外来患者に対しても、基本的に院内での処方へ切り替えることにしたそうです。
(ただし患者さんの希望を優先し、院外処方を望むならその通りにしているみたいです。)

院長さん曰く、その理由は、「メリットを感じられなかったというのが16年ほどやった上での印象」とのこと。
ここで云うメリットというのは、たぶん患者さんにとってのメリットのことだと思います。
患者さんにとっては費用の負担も少し増える場合が多いし、
利便性の面でも病院と薬局の2か所を廻ったり待ったりしますからね…。
ちなみに、病院にとっては薬剤師の人件費を減らせたり薬剤室(調剤室)のスペースや設備も少なくて済んだり、
医薬分業のメリットは決して少なくないと思います(あくまでも経営面から見た話)。


個人的にはこの医療センターの方針に賛成なのですが、だからと云って医薬分業が悪だとは受け取られたくないので、
まずは医薬分業の意義というか…メリット・デメリットについて簡単に紹介したいと思います。

医薬分業とは、厚生労働省曰く、「医師が患者に処方せんを交付し、薬局の薬剤師がその処方せんに基づき調剤を行い、
医師と薬剤師がそれぞれの専門分野で業務を分担し国民医療の質的向上を図るものである。」とのことです。
これによって、たとえば次のようなメリットがあります。

・ 医師が、手元にない医薬品を処方することができます(病院の在庫に関わらず、患者にとってより良い処方を行えます)。
・ 処方箋が患者さんの手に渡るので(一時的にですが…)、患者自身が自分の薬について知る機会が増えます。
・ 薬局で薬歴管理を行うことで、複数の病院による重複投薬や相互作用の有無についての確認ができ、薬の有効性や安全性の向上につながります。
・ 病院薬剤師の外来調剤業務がなくなる(減る)ので、病院薬剤師は入院患者に対する仕事に集中できます。

デメリットは、冒頭でも書きましたが、以下のようなものが例として挙げられます。

・ 病院(クリニック)とは別に薬局に行かなくてはならないので、移動や待ち時間などの手間ひまが掛かります(待ち時間は減る場合もありますが)。
・ 病院では薬代の分が減りますが、薬局で支払う分を考えると、トータルで値上がりとなる可能性が高いです。

以上を踏まえた上で、薬学側(医療関係者側)の立場ではなく、市民感覚(患者側の立場)で考えると、
やっぱり医薬分業のメリットって感じにくいような気がしますね…。
上記の関西医科大学総合医療センターの場合は、せっかく院外処方箋を出しても、その多くが門前薬局で利用されていたため、
分業のメリットが薄れている現状であったようです。

特に、普段あんまり病院に掛からないで、インフルエンザに感染したとか、ものもらいができたとか、そういう単発の用で
たまに使うだけのヒトにとっては、薬局ってただ薬をもらえればそれでいい。って意識を持っているのかもしれません。
(かく云う僕も、風邪をひいたくらいでは医者に掛からないので、どちらかと云えばこのタイプです。)

でも、慢性疾患を持っているヒトやお年寄りの場合には、薬局がなじみ深い存在になっていると思うので、
薬のことを含めた健康面に関して相談しやすい薬剤師がいるとしたら、それは大きなメリットになり得ます。
最近話題のかかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師制度は、そんな医薬分業の良い面を引き出せるかもしれません。


医薬分業が良いとか悪いとかっていうのは、病院やクリニックの規模とか、門前薬局の数や混み具合、
自分(患者)の疾病の種類や、病院や自宅の立地条件などなど…そういう、色々なものに影響されます。

なので、専門家はこれからも医薬分業の是非について考え抜くことと思われますが、
患者としての僕らは、病院や薬局のそういう違いにも注意を向けて、
より自分のライフスタイルに合った、より満足できるところに足を運ぶことが大事なんだと思います。

そして、じきに薬剤師になるであろう薬学生の皆さんには、あなたが身を置くことに納得のできる病院や薬局を、
そんな面(そこに来る患者さんが求めているサービスと、自分が提供したいサービスが一致しそうかどうか)についても
考慮しながら職場選びをしてくれたら…僕は、ほんの少し嬉しいです。


(ICO)




◆2016.07.27

「読み方、呼び方」


methane…今、何て読みましたか?
僕なら「メタン」と読みます。
でも、アメリカ英語ではメセイン、イギリス英語ではミーセインと呼ぶそうです(表記は独英米とも一緒)。
ほかにも、ether は独語だとエーテルだけど、英語ではイーサーとなります(こちらも綴りは同じ)。

これらは、日本の科学がドイツの影響を大きく受けているために起こる混乱ですね。
有名どころでは、pH のことをペーハー(独語)って読むかピーエイチ(英語)って読むかの違いが挙げられます。
pH については、ここ最近はピーエイチと発音するヒトも多く、僕もなるべくピーエイチって読むようにしていますけど、
相手につられてペーハーって云っちゃうときもあるので…あんまり定まっていません。

こういう風に表記が一緒なのに読み方が違うものは、結構まぎらわしくてたまに苦労しますよね。
いっそ、ナトリウム(natrium、独語)とソディウム(sodium、英語)くらい違ってくれれば、誤解も少ないんでしょうけど…。

そういえば、かのフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトさんも、出身がイタリア語圏だったから
最初のうち(台頭してくる前)は、ナポレオーネ・ブオナパルテと名乗っていたようです。
言語の違いによって固有名詞の呼び方まで変わってくるのか…なんか、もうさ、ねぇ。


だからって、世界共通語を作ればいいじゃん!…とは云いません。
その国その地域の、歴史や文化や風土に合った言葉ってものがあるし、
僕は日本語を消されたくない一方、ほかの言語も消したくはないから…このままでいいです。

この多様化した世界の中で、
「アメリカ人相手にメタンが通じない。このヒト化学の知識あるはずなのに、どういうことだっ…!?」
と狼狽しているくらいが、僕にはちょうど良いです。


(ICO)




◆2016.07.22

「食品? それとも医薬品?」


近所に瓶詰専門店があります。
ジャムとか調味料とかハチミツとか、色んなものが瓶詰めされてて綺麗なお店です。
まぁ…それはそれとして、そのお店にはハーブティーも少し売っているので、
個人的にはそちらのほうに興味がいきます。
ハーブの品揃えはあまり多くないこのお店で、
何故かよそではあまり見かけないハーブが置いてあるのが魅力。

例えば、セントジョーンズワート。またの名をセイヨウオトギリソウ(西洋弟切草)。
これは薬学部で生薬の授業があれば出てくると思いますが、
うつ病や不安障害に効果を示す生薬です。

このセントジョーンズワート、もちろん食品として売っているので、
一般の方が飲んでも問題ありません。
(同ハーブが医薬品として用いられることもありますが、
 薬効を標榜しない限りは食品扱いで売って良いことになっています。)
しかし、このハーブは様々な薬と相互作用を生じることが知られていて、
実は結構気をつけなければいけないハーブです。

CYP3A4を阻害することから強心薬のシゴキシン、血液凝固防止薬のワルファリン、
気管支拡張薬のテオフィリンなどなど...多くの薬の効果を増強させてしまいます。
かと思うと、抗うつ薬のSSRIや抗てんかん薬などの効果を下げることも知られています。

話が長くなってきましたが、何が云いたかったかというと、まったく同じ成分の商品でも、
効果効能を謳うか謳わないかでそれが医薬品になったり食品になったりするというのが、
ちょっと不思議だなぁ…と思うのです。
ましてや、セントジョーンズワートみたいに
飲み合わせによる副作用がそこそこ懸念されるものに関しては、なおさら。


(ICO)




◆2016.07.17

「風とRAINBOW」


中学生の頃、初めて「七光り」って言葉を見たとき、何て綺麗な字面だろう…って感じました。
prism(プリズム)を和訳したものなのかなぁ…とか想像を膨らましていたのも束の間、
実際の意味は皆さんご存知の通り、親の地位や権力を使って恩恵を受けるとかいう、
夢もへったくれもない言葉だという事実を知ってしまいます。
(良くも悪くも親は選べませんから…親の七光りが必ずしも悪いとは云いませんけど。)

こんな感じで、言葉自体はすごく良さそうな響きを持っているのに、実際の意味を知ってしまうと
何だかなぁ…と思ってしまうとき、たまにありますよね。

たとえば…ドラゴンフルーツとか。
あれ、かなり想像力が豊じゃないと、竜の成分は見出せないぞ。
(これはただの名前負けで、七光りの例とはちょっと違いますね…。)

そんなわけで、七光りが使えなくなった今、prismに相当する綺麗な和名が欲しいです。
「虹水晶」みたいな感じで…いや、ちょっと安直だな。
「七色鏡」だと…何を指してるのかわからないか。

そう考えると…「七光り」、やっぱりかなり優秀な言葉だったような気がしてきた。
こんな素晴らしい言葉を、ヒトを貶めるために使うのはもったいないのでは…?

皆さん、prismに対応する素敵な日本語があれば、ぜひご一報ください…お待ちしてます。


(ICO)




◆2016.07.08

「国際宇宙ステーションでの水再生システム」


ISS(国際宇宙ステーション)では普段、6人のヒトが暮らしています。
人間が生活するんだから、当然、そこでは水が必要です。
でも、宇宙空間に水があるわけなんてないし、どうしてるんだろう…?
補給船に大量の水を積み込むのも難しそうだし(ほかに積みたいものがたくさんありそう)、
船内でリサイクルするとしても全部が全部きれいな水として回収できるわけではないよね…。

…と思っていたんですが、案外、実際には尿から何から
ほとんど全ての水を飲料可能な水質にまで再生できるようです。

具体的には、尿はまず加熱によって水蒸気に変えられます。
で、その水蒸気を再び凝縮させることで水に戻せば(つまり蒸留するってこと)、
多くの不純物が取り除かれた水を得られます。
ただ、まだこの状態だとアンモニアとかその他気化しやすい有機物が含まれているので、
まだより高位の処理が必要です。
この段階(蒸留後)で、尿だった水とそれ以外の水(空調の除湿水や実験で使った水など)を合わせ、
ろ過や高温酸化触媒反応を使って固体粒子やアンモニア、有機物の除去(分解)を行います。
そして、仕上げにイオン交換膜に通して飲用可能な水とし、さらに水質検査を行ってから
飲料水タンクに送っているそうです。
飲料水タンクではヨウ素または銀を添加することで、菌の繁殖を防いでいます。

ちなみに、燃料電池が搭載された補給機がドッキングしている間は、
燃料電池から水を得られるため、ISS内で使える水がさらに潤沢になります。
(ISSには燃料電池がありません。太陽電池があるから。)

もちろん、それでも水が足りないときは、地上から輸送するんですけどね。
実際、今年打ち上げ予定の補給船「こうのとり6号機」には、600Lの飲料水が積まれることになっています。


こんな感じの、使えるものは何でも使う。っていう精神、ちょっといいですよね…♪
僕には、生き残るために必死になる逞しさが欠けている節があるので、
こういう工夫を気に留めておいて、少しでも良い影響を受けられたらなぁ…と思います。


参考ホームページ :
ファン!ファン!JAXA! (JAXAの公式コミュニティサイト)


(ICO)




◆2016.07.05

「ペット用の小さなブタ、お値段なんと19万円!」


! Attention !
今日はゲノム編集というセンシティブなテーマを取り上げますが、
あまり倫理観に重きを置かず、さらっと読んでもらえると幸いです。


ブタってイラストとかキャラクターだと可愛いけど、
実際の養豚場にいる家畜のブタって可愛くないですよね。
いや…個人的な好みを云うなら、家畜のブタも結構可愛いと思うんだけど、
それだと今日のテーマに入りづらいので、ここでは
「(実物の)ブタは可愛くない」という一般論があるって仮定のもと、
話を進めましょう。

…で、何故ブタは可愛くないのか。
とりあえず、大き過ぎるからじゃないでしょうか。
仔ブタだったら、皆さん結構可愛いと評価してくれるんじゃないでしょうか…?
現に、千葉県のマザー牧場には「こぶたのレース」なるものがあるそうです。
(見たことないので、どんなものかは知りません…。)


さて、下手な前置きでしたけど、今、中国などでひっそりとマイクロブタを
ペットとして売り出そうとする動きが進行中です。
マイクロブタというのは、大人になっても15kgくらいにしか成長しないブタで、
そのお値段、なんと19万円。お買い得!
いや…お買い得かどうかは知りません。云ってみただけです。

マイクロブタは自然界にいる品種ではなく、
ゲノム編集技術の成果として創り上げられたブタです。
これ、もともとは研究用に(実験動物として)開発されたんです。

皆さんマウスやラットを使った実験が馴染み深いかもしれませんが、
生理学や遺伝学の面ではネズミたちよりもブタのほうがヒトに近いため、
ブタで実験したほうが有意義な研究ができるというシーンが多くあります。

けれど、研究室で実験ブタを飼うのは容易ではありません…これは想像に難くないですよね。
飼育の手間暇やご飯や実験で用いる薬剤の量も体の大きさの分だけたくさん必要です。
そこで、ゲノム編集技術を使って創ったマイクロブタが使われるようになった次第です。

そうして月日は流れ、今後は実験動物としてじゃなくて、
その小ささを活かしてペット市場に送り込もうというわけです。
倫理的な問題や法律的な問題など、まだ超えなきゃいけない壁がいくつかあるので、
すぐに普及する…という話ではなさそうですが、一度販売が認められたら、案外、
結構早くにマイクロブタのペットブームが来るかもしれません。

ま…マイクロといっても15kg、犬で云うと中型犬くらいの大きさになるから、
決して気軽にお世話できる類のペットではありませんけどね。
それにしても、大きさはともかく、匂いとかはどうなんだろうか…
いや、一緒に住めば気にならなくなるかな?


この話についてもっと詳しい内容を知りたい方は、以下のURLのサイトを参照してください。 
リンク先は、科学雑誌「nature」の日本語版サイト、「natureasia」のホームページです。 

ゲノム編集ブタ、ペット販売へ


(ICO)