2-3 5) 求核置換反応






前項までは芳香族求電子置換反応についての説明でしたが、この項では芳香族求核置換反応について扱います。
芳香環に脱離能の高い置換基がある時、その置換基が付いた炭素に求核試薬がアタックし、置換反応が起こります。
以下に代表的な3つの反応例を示します。


例1

    


上の反応の基質は、ベンゼンジアゾニウム塩といいます。
これは見ての通りベンゼン環に直接結合したNに正電荷が付いているため、隣の C からある程度の電子を供与するかたちになっています。
つまり、N の隣の C は δ+ の状態で、ここに求核試薬がアタックします。
結果、置換反応が起こり、窒素ガスが脱離します。

ここで Nuで表した求核試薬ですが、実際には CuX、KI、H2O などを使います。
特に、CuX (X=Cl、Br、CN) を使って芳香族ジアゾニウムイオンをハロゲン化物やシアン化物に置換する反応には名前が付いていて、Sandmeyer (ザンドマイヤー)反応といいます。
ドイツ人の名前が由来なので、s が濁ります。)


    




例2

液体アンモニア中でクロロベンゼンにカリウムアミドを作用させると、求核置換反応が起きてアニリンが生成します。
上の反応機構を見てもわかるように、この反応ではまず最初にハロゲン化水素の脱離が起きてベンザインという中間体ができます。
そこにアミドアニオンがアタックすることでアニリンが生成します。



例3

    
    マイゼンハイマー錯体


上図のようにベンゼンにクロロ基とニトロ基が 位( 位でも可)で置換されている化合物に対し、塩基性条件下で加熱すると、ニトロフェノールが生成します。
この場合、ヒドロキシル基の付加が先に起こりマイゼンハイマー錯体となって、そののちにクロロ基の脱離が起こります。
この反応自体は代表的な求核置換反応ですが、マイゼンハイマー錯体の名称や構造までは覚えなくても良いと思います。


以上が代表的な芳香族求核置換反応の例でした。


演習問題