3-1 2) 官能基の定性試験







この項では、代表的な官能基の定性試験の方法とその結果について解説します。
「定性試験」とは目的のもの(今回だと官能基)が含まれているかどうかを判断するための試験です。
ある試薬を入れると色が変わる、沈殿が生じる、臭いを発するなど、その判断基準は様々です。
対応する言葉に「定量試験」があり、こちらは機器分析や滴定などによって、目的のものがどれだけ入っているかまで詳しく調べる試験です。



◆フェノール性水酸基◆

フェノール性水酸基が含まれているかどうかを調べるには、鉄(Ⅲ)イオンを含む試薬(塩化鉄(Ⅲ)など)を加えて呈色するかどうかを見ます。
その色は青や紫、緑など化合物により様々ですが、特に色を気にする必要はありません。
この方法によりフェノールやサリチル酸のような化合物は錯体を形成するため呈色しますが、アルコールなどの水酸基では呈色が見られません。



◆第一級アミン◆

第一級アミンの定性試験は、酸性条件下で亜硝酸ナトリウムを作用させます。
その結果は脂肪族アミンか芳香族アミンかで異なります。
脂肪族アミンの場合はジアゾ化分解が起こり窒素ガスが生成しますので、このガス放出で判定します。
芳香族アミンの場合はジアゾカップリングという縮合反応が起きます。
これに津田試薬を加えるとジアゾ色素(赤紫系の色)が呈色するので、その色で判定します。
以下に第一級芳香族アミンがジアゾ化して、さらに津田試薬によって呈色するまでの流れを示します。


    



◆アミノ酸・イミノ酸◆

アミノ酸またはイミノ酸にニンヒドリン試薬を作用させるとニンヒドリン反応が起こり、アミノ酸なら紫色、イミノ酸なら黄色に呈色します。



◆アルデヒド・ケトン◆

アルデヒドまたはケトンであることを示す反応には、ヒドラジン誘導体やヒドロキシルアミンが用いられます。
ヒドラジン誘導体(2,4-ジニトロフェニルヒドラジンなど)をアルデヒドもしくはケトンに作用させると、ヒドラゾンが生成します。
これは黄色や橙色の沈殿として目に見えるので、そこで判断します。
ヒドロキシルアミンと反応させた場合はアルデヒドやケトンとの縮合反応が起こりオキシムを生成します。
これも沈殿なのでこの時点で確認したともいえますが、得られたオキシムの融点測定をして標品の確認を行うのが普通です。

また、アルデヒドの定性試験には銀鏡反応もあります。
これは硝酸銀・アンモニア試薬を加えると、銀イオンが金属銀に還元されて銀鏡を形成する反応です。

アルデヒドまたはα-ヒドロキシルケトンであることを確かめるには、フェーリング反応を用いることもできます。
これは、フェーリング試薬を加えて加熱すると試薬中の銅イオンが還元されて酸化銅(Ⅰ)が析出するという反応です。

メチルケトンの定性試験として有名なものとしてヨードホルム反応があります。
メチルケトンに水酸化ナトリウムとヨウ素を加えて温めると、特有の臭いを持ったヨードホルム(CHI3)の黄色沈殿が生成します。



◆エステル◆

エステルの判定で代表的なものは2つあり、ひとつは呈色による判定、もうひとつは臭気による判定です。
呈色反応のほうは、ヒドロキシルアミンと反応させてヒドロキサム酸とし、さらに塩化鉄(Ⅲ)などで鉄(Ⅲ)イオンと錯体形成させることにより呈色が起こります。
臭気を利用するほうはエステル交換という反応です。
エステルに酸とエタノールを作用させるとエステル交換が起こり(平衡反応です)、酢酸エチル臭(芳香のある臭い)がしてきます。



◆アルケン◆

アルケンの定性試験は、二重結合を持つことによる付加反応の起きやすさを利用します。
例えば臭素を反応させれば付加反応が起こりますが、それにより臭素の褐色が見えなくなるので、その脱色を確認します。
もしくは、過マンガン酸によってアルケンを酸化すると、赤紫色であった過マンガン酸が消費され、こちらも脱色します。



◆ハロゲン◆

ハロゲンの定性試験で有名なのは、バイルシュタイン試験と呼ばれるものです(名称は特に大事じゃないと思います)。
銅線の先端をバーナーで加熱し酸化銅(Ⅱ)としてから、そこにハロゲンを含む試薬を付着させます。
するとハロゲン化銅を生じ、再び過熱した際に緑や青の炎色反応が見られます。
ただし、この反応は塩素、臭素、ヨウ素には有効ですが、フッ素の判定には使えません。
(フッ素の試験はアリザリンコンプレキソン溶液で青紫呈色、などがありますが、これは有機フッ素化合物を加熱分解したのちの無機物の試験法なので、ここでは詳述しません。)