3-2 1) 有機ハロゲン化合物の性質と反応






3-2 の章では、有機ハロゲン化合物の性質と反応について取り扱います。
この章では重要な 4 つの反応

  • SN1 反応
  • SN2 反応
  • E1 反応
  • E2 反応

について順を追って説明することになりますが、最初にこの章のまとめとなる図を載せておきます。
すでにS
N反応(求核置換反応)やE(脱離反応)を授業などで習った方は、この図をよく見てから、続く説明文をお読みください。
まだこれらを履修していない方は、以下の図は眺める程度にとどめ、すぐに次に進んでもらって構いません。
3-2 6)にて再度この表を載せていますので、その際に知識の整理をしてください。


ハロアルカンと求核剤による反応
 

求核剤の種類と例 →


ハロアルカン ↓

弱い求核剤

H2O

弱塩基の強い

求核剤

I

強塩基の求核剤

(立体障害なし)

CH3O

強塩基の求核剤

(立体障害あり)

(CH3)3CO

メチル

反応なし

SN2

SN2

SN2

第一級(立体障害なし)

反応なし

SN2

SN2

E2

第一級(立体障害あり)

反応なし

SN2

E2

E2

第二級

SN1, E1(反応遅い)

SN2

E2

E2

第三級

SN1, E1

SN1, E1

E2

E2



さて、大事な図を見てもらったところで、有機ハロゲン化合物の概論から始めます。



◆ハロアルカンの性質◆


有機ハロゲン化合物の代表的なものといえば、ハロアルカンですが、ハロゲンがフッ素なのか塩素なのか臭素なのかヨウ素なのかによって、その構造や性質に違いが出てきます。
その違いとは、以下のようなものです。

  • X の電気陰性度
  • C-X 間の結合距離
  • C-X 間の結合エネルギー
  • 求核剤との反応性


そしてその違いというのは、以下の表の通りです。


    

ず、電気陰性度については、周期表の上側ほど、右側ほど大きくなります(希ガス除く)。
よって、フッ素が高くヨウ素が低めですが、どのハロゲンも炭素よりも電気陰性度が大きく、ハロアルカンの C-X 間では C(δ+)-X(δ-) のように分極しています。
このため、ハロアルカンの C ( δ+ )の部分が求核攻撃を受けやすく、反応が起こることになります。

次に、炭素-ハロゲン間の結合距離についてはフッ素で小さくヨウ素で大きいですが、これは原子の大きさのためです。
第2周期のフッ素に比べ第5周期のヨウ素のほうが原子サイズが大きいため、必然的に炭素との結合距離(各々の原子の中心間の距離)も大きくなります。
また、結合距離が長いとそれだけ結合エネルギーが小さくなります。

求核剤との反応性についてですが、上記の通り結合エネルギーの弱いヨウ素は結合が切れやすく(=脱離しやすく)、かつ脱離基( I)も安定しているので、反応性が高いといえます。
逆にフッ素の場合は脱離基( F)が不安定なこともあって反応性に乏しいといえます。



◆ハロアルカンの反応◆

ハロアルカンの反応の詳細については次項以降で扱いますが、大まかにいえば「S反応」と「E 反応」の2パターンです。

Sとは Nucleophilic (求核)、Substitution (置換)の略で、以下の反応図のように、求核剤(下図のNu)が基質を求核攻撃し、脱離基(下図のX)が外れることで結果として置換反応が起こるものです。


    



E 反応のE はElimination(脱離)です。
以下の反応図の通り、求核剤(塩基)がプロトンを奪い、かつハロゲンが脱離基として抜けることで二重結合が生成するような反応です。


    


さらに S反応は SN1 反応と SN2 反応に、E 反応は E1 反応と E2 反応に分けられますが、そのそれぞれを次項以降で解説していきます。