カルボン酸はカルボキシ基( -COOH )を持つ化合物で、その名のとおり酸の性質を持ちます。 カルボン酸は分子間で水素結合を形成し、液体のカルボン酸は二量体を成していることが多いです。 以下に、カルボン酸を基質とした様々な反応を紹介していきます。 ◆塩素化反応◆ カルボン酸に塩化チオニル( SOCl2 )や五塩化リン( PCl5 )などを反応させると、カルボン酸の-OH 部分が-Cl に置換されます。 こうしてできた RCOCl を一般に、酸塩化物または塩化アシルといいます。 アシルとはアシル基を有する化合物のことで、アシル基は RCO- と表されます。 またアシルのことをアルカノイルと呼ぶこともありますが、両者は同じものを指しています。 この反応の反応機構は以下のとおりです。 ◆酸無水物化反応◆ 上記の酸塩化物(塩化アシル)とカルボン酸が反応すると、脱水縮合が起きて酸無水物が生成します。 もしくは、2 分子のカルボン酸の間で脱水縮合を起こしても、同じく酸無水物が生成します。 ◆エステル化反応◆ エステルは、カルボン酸とアルコールの脱水縮合により得られます。 この反応は強酸触媒の存在下、加熱をすることで反応が進行します。 しかし、上の反応は平衡反応です。 実際にエステルを収率良く得ようとする場合、別の方法を取ります。 具体的には、カルボン酸塩とハロゲン化アルキルとの SN2 反応などが挙げられます。 ◆アミド化反応◆ カルボン酸とアルコールの脱水縮合でエステルが得られるのに対し、カルボン酸とアミンの脱水縮合で得られるのがアミドです。 しかし、カルボン酸(酸)とアミン(塩基)を単純に反応させると、酸-塩基反応が起こり塩を生成してしまうため、脱水縮合は起こりづらいです。 そのため、実際にはカルボン酸を酸でない誘導体、つまり、塩化アシルや酸無水物に変えてからアミンと反応させるのが普通です。 また、カルボン酸とアミンを直接反応させる方法として、脱水縮合剤を用いることがあります。 これを使えば、酸-塩基反応よりも脱水縮合が起きるため、収率良くアミドを得ることができます。 脱水縮合剤には DCC (N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド)がよく使われます。 ◆ヒドリド還元◆ 水素化アルミニウムリチウム( LiAlH4 )によってカルボン酸は還元され、第一級アルコールとなります。 ヒドリド還元の試薬として有名なものには LiAlH4 と NaBH4 がありますが、NaBH4 では反応性が低く、カルボン酸は還元されません。 基質がアルデヒドやケトンの場合には、どちらの還元剤でも還元反応が起こります。(参考:3-5 2)) |