6) ATP産生阻害物質



key words
複合体Ⅰ→ロテノン
複合体Ⅲ→アンチマイシンA
複合体Ⅳ→シアン化、アジ化物 
脱共役剤→2,4 ジニトロフェノール、バリノマイシン
酸化的リン酸化阻害→オリゴマイシン




電子伝達系における
「電子がどのように伝達されていくのか」という
疑問解明のために
多くの阻害物質が用いられました。
様々な生化学的実験に
現在も用いられているものもあります。


電子伝達系を阻害する ということは
ATP 産生を阻害する ということを意味します。


代表的な ATP 産生阻害薬について
電子伝達系の構造と関連して、以下にまとめます。



複合体 Ⅰ に働きかけて、次の補酵素 Q への
電子伝達を阻害するのが、ロテノン です。

    ロテノン


フェニルプロパノイド に分類される化合物で
植物由来の成分として発見されました。
農薬 などに用いられます。


複合体 Ⅲ に働きかけて電子伝達を阻害するのが
アンチマイシン A です。

    アンチマイシンA

微生物由来の 抗生物質の一種です。



複合体 Ⅳ にはたらきかけて、酸素への電子伝達を
阻害するのが
シアン化物(CN-)、アジ化物(N3-)、CO、H2S などです。



その他に、複合体とは関与しないけれども
ATP 産生を阻害する物質もあります。


まず、脱共役剤として作用する 
2,4 ジニトロフェノール です。

この物質は、H+ の濃度勾配を消失させることにより
ATP 産生を抑制します。


また、やはり脱共役剤として作用するのが
バリノマイシンです。

こちらは、ミトコンドリア内膜で
イオンを通過させる という作用により
H+勾配を消失させます。

それぞれの構造は、以下になります。





次に、酸化的リン酸化を阻害する物質として
オリゴマイシンが知られています。

これは、ATP シンターゼ に作用し
膜間腔からマトリックスへの H流入を阻害することで
ATP 産生を阻害します。


(オリゴマイシンには、A,B、、、といった
細かい違いがあり、ここではAの構造を
例としてあげています。)



ここまでの記述で
ATP 産生阻害物質は、どれも電子伝達系と関連する
という印象を持つかもしれません。

しかし
生物には、ほぼ例外なく、例外が存在します。


補足のために、1例をあげると
ボンクレキン酸 という抗生物質は
ミトコンドリア内膜で生じたATPを
ミトコンドリア外に輸送する
『ATP/ADP交換体』 を阻害することにより
ATP産生を阻害します。

ボンクレキン酸