2) 各栄養素の消化・吸収・代謝








糖質、タンパク質、脂質についてそれぞれ説明します。


糖質は、単糖が重合した多糖類です。
消化において多糖類は最終的に単糖類にまで小さく分解されて消化管から吸収されます。
イメージは下図になります。
丸が、小さく分解された糖です。






単糖(グルコース)は人体のエネルギー源として非常に重要であるため
糖の吸収に特化した輸送装置が小腸粘膜細胞には存在します。
それがグルコーストランスポーター(GLUT:glucose transporter)です。

グルコーストランスポーターは、発現している場所により少しずつ構成アミノ酸が異なり
機能にも少しずつ違いがあります。
そのため、主要なGLUTに関しては、名前と特徴を思い出すことができるとよいです。


小腸粘膜細胞において、刷子縁膜側(なみなみしている方)には
SGLT1(sodium-glucose cotransporter 1)が発現しています。
sodiumとはナトリウムのことです。

このトランスポーターの特徴は2点あります。

1点目は能動輸送、すなわちATPを使用するトランスポーターであるという点です。

2点目はNa+を、グルコースと一緒に取り込むという点です。
Na+を取り込み、流れを引き起こすことによって、グルコースを引き入れているのです。
このような、物質の濃度差を利用して目的物質を取り込む機構を、二次性能動輸送といいます。
1点目で指摘したATPは、Na+の濃度差を維持するためのエネルギー源として使われます。

SGLT1により、小腸粘膜細胞に取り込まれたグルコースは、今度は血液中へと輸送されます。
この輸送においてもGLUTの1つが用いられます。


小腸基底膜側において、GLUT2と呼ばれるトランスポーターが発現しており
このトランスポーターがグルコースを血液へと輸送します。

GLUT2の特徴は1点あります。
それは促進拡散、すなわちATPを使用しないトランスポーターであるという点です。
イメージとしては、グルコースが通りやすい道が用意されているだけで
誰かが「急げ~」と言ってくれるわけではないといったイメージです。

血中のグルコースは全身の細胞へと運ばれていきます。
全身の細胞にとって、グルコースはエネルギー源としてとても重要なものです。
そのため小腸と同様に、様々な器官においてもグルコースの吸収に特化した輸送装置が
細胞膜に発現しています。
特に、肝臓と筋肉細胞に関してよく研究が進んでいます。

肝臓では、小腸基底膜側と同様に、GLUT2が発現しています。


又、筋肉細胞では、GLUT4が発現しています。

GLUT4には大きな特徴が1点あります。
それは、インスリンというホルモンに応答して輸送が活性化されるということです。

肝臓、及び筋肉に取り込まれたグルコースは、グリコーゲンに代謝され、貯蔵されます。
その他の組織に取り込まれたグルコースの多くは、すぐにエネルギー源として代謝されます。

以上が糖の消化・吸収・代謝の過程です。




脂質とは、中性脂肪やコレステロールの総称です。
中性脂肪は、脂肪酸+グリセロールのエステルです。
コレステロールとは、ステロイドの一種です。
ステロイドとは、下の図のような構造を持つ化合物及びその類縁体の総称です。





脂質の消化は、すい臓から分泌される膵リパーゼと、胆汁から分泌される胆汁酸によって行われます。
脂質は脂肪酸と2-モノアシルグリセロールに分解されます。
分解された脂肪酸及び2-モノアシルグリセロールは、糖と同様に、小腸粘膜細胞に取り込まれます。


小腸粘膜細胞に取り込まれると、そこでキロミクロンと呼ばれるタンパク質と結合して
脂質を含むタンパク質であるリポタンパク質としてリンパ管へ送られます。
※『脂質は、まずキロミクロンに取り込まれる』が、重要なポイントです。


その後、リンパ管から血管へとリポタンパク質が送られます。
次に血流に乗って全身の脂肪組織と呼ばれる組織へと運ばれます。
その際、血管はどんどん細くなり、毛細血管になります。

この毛細血管の内皮細胞には、リポ蛋白リパーゼと呼ばれるタンパク質が発現しています。
このリパーゼによって、リポ蛋白の形で運ばれてきた脂質の中でも特に中性脂肪は
脂肪酸とグリセロールに分解されます。
分解された脂肪酸は脂肪組織に取り込まれます。


グリセロールは血中に乗って運ばれて、様々な組織において解糖系と呼ばれる回路へと入り
エネルギー源として使用されます。

取り込まれなかったコレステロールは、小さくなったリポ蛋白(=レムナント(残骸という意味))に残ったまま
血流に乗って肝臓へと運ばれます。





※TG=中性脂肪 C=コレステロール



肝臓では、VLDL(超低比重リポタンパク質)と呼ばれるタンパク質が合成されており
このタンパク質がコレステロールと結合して、リポタンパク質として血流に乗り
全身の脂肪組織へと運ばれていきます。
この時、体内由来の中性脂肪もタンパク質に取り込まれます。

運ばれたリポタンパク質に含まれる中性脂肪は
やはりリポ蛋白リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解され
脂肪組織に取り込まれます。


取り込まれなかったコレステロールは、VLDL残骸にくっついたまま、血流へと出ていき
IDL(中間密度リポタンパク質)として血流に乗ります。
血流に乗ったコレステロールの半分ほどは、肝臓の受容体と結合して肝臓に取り込まれます。

残り半分は、肝臓の血管内皮細胞において発現している肝性リパーゼによって
更に中性脂肪が分解されることにより
コレステロール含有比率が高いLDL(低密度リポタンパク質)といったリポタンパク質になっていきます。

LDLは、LDL受容体と結合することにより、各組織にとりこまれます。
これはいわばコレステロールの各組織への輸送にあたります。








ちなみに、各組織において余分なコレステロールは、まず細胞膜に移動します。
そのコレステロールは、HDL(高比重リポタンパク質)と呼ばれる血中のリポタンパク質により抽出され
HDL中においてコレステロールエステルの形で肝臓へと運んでいきます。
HDLは、血漿において、リポタンパク質の残骸から作られたり、肝臓で合成されたりします。


脂肪組織に取り込まれた脂肪酸は、改めて中性脂肪の形で蓄積されます。
蓄積された中性脂肪はエネルギー源として主に使われます。
エネルギー源として用いられる時には、ホルモン依存性リパーゼ(グルカゴンやアドレナリンに依存します)により
脂肪酸に分解された後、アルブミンなどの結合タンパク質に結合して血液中を運搬されます。
そしてさまざまな組織へと取り込まれます。


組織にとりこまれると、脂肪酸はまず細胞質において、アシルCoAと呼ばれる活性化された物質に代謝されます。
そしてアシルCoAはカルニチンと呼ばれる低分子と反応してアシルカルニチンとなります。
この形にならなければ、ミトコンドリアの中に入り込むことができないのです。


そしてアシルカルニチンは、ミトコンドリアの膜においてカルニチン輸送タンパク質により、ミトコンドリアの内側に輸送されます。
そしてミトコンドリア内においてβ酸化と呼ばれる、C単位の切断を受けエネルギーを取り出されます。


以上が脂質の消化・吸収・代謝です。




タンパク質は、アミノ酸がペプチド結合で重合したものです。
タンパク質は胃においてペプシンという酵素によって分解されます。
この酵素は、pH 2 で最もよくタンパク質を切断します。

又、膵臓においてトリプシノーゲンという酵素によって分解されます。
タンパク質は、1つのアミノ酸にまで分解されなくても
ジペプチド(2つのアミノ酸が結合したもの)やトリペプチド(3つのアミノ酸が結合したもの)でも吸収されます。

アミノ酸は、体内のタンパク質合成に用いられます。
また、一部はグルコースやアセチルCoAに変換されて、エネルギー源となります。

アミノ酸が含む窒素(N)は、人体にとって有害になり得る要素であるため、回収機構が存在します。
それが肝臓における尿素サイクルです。
尿素サイクルでは、Nを水溶性で無害な尿素に変換し、尿中に排泄します。


以上がタンパク質の消化・吸収・代謝です。