2) 油脂の変敗






変敗とは
食品が本来の性質を失い、食用に耐えられないような状態になることです。
腐敗の他、酸化などを包括した概念になります。


油脂は、空気中の酸素と接触することで
自動酸化を引き起こします。
これが油脂の変敗の原因となります。
油脂の酸化機構はかなり詳しく分かっているので
以下に詳しく説明します。


まず、トリアシルグリセロールが加水分解され
遊離脂肪酸(R-H)が発生します。
次に、特に不飽和(構造式中に二重結合や三重結合があること)だと進行しやすいのですが
R-H の H が光や熱の存在下で引きぬかれます。
開始反応とも呼ばれます。

この結果脂肪酸ラジカル(R・)が生成されます。


次に、R・と空気中の酸素(O2)との反応で
ペルオキシラジカル(RCOO・)が生成されます。


RCOO・は、遊離脂肪酸のHを引きぬくことで
ヒドロペルオキシド(RCOOH)が生成されます。
この時、遊離脂肪酸の H を引きぬくことで R・ が生成されるため
一連の反応は終わることなく連鎖的に続いていきます。


ヒドロペルオキシドはその後様々な代謝を受け
二次生成物とされるカルボニル化合物や
マロンジアルデヒトといったものに代謝されていきます。



このような変敗の機構における様々な中間生成物に注目した
様々な油脂の変質試験が現実に行われています。

代表的なものとして、ヨウ素価、過酸化物価、チオバルビツール酸試験値があります。
時間と共にこの値が下がるか、上がるかといった大雑把な動きが重要です。


ヨウ素価は、油脂中の不飽和部分の量を示します。
変敗していくと、どんどん酸化していくことから
不飽和な部分はどんどん飽和されていきます。
よって、時間が経つとこの値は下がります。


チオバルビツール酸試験値は
変敗の最後の方で出てくるマロンジアルデヒト等の量を示します。
よって、変敗していくとこの値はどんどん上がっていきます。


最後に、過酸化物価ですが
この値は過酸化物、すなわちヒドロペルオキシド(RCOOH)の量を示します。
よって、変敗する過程においてまずは上昇するのですが
だんだんヒドロペルオキシドも分解されていくため
時間がかなり経つと今度は下がってきます。
油脂の変質試験において唯一、時間と共に上がって下がるという挙動を示します。
この試験には、チオ硫酸ナトリウムが用いられます。