5) 薬物分布の変動要因


薬物を投与した時に
人体にどう分布するかを表すパラメータが
分布容積です。

薬物を投与すれば
投与経路が経口、静注、、、何であれ
吸収されれば、血液の流れに乗ります。

血液の流れに、ずっと薬物が存在すれば
血液の体積(約3.5L)に分布で、おしまいです。
ですが、人体には血液以外にも
「薬物が分布できる水分」があります。

以下、少し詳しく
人体の水分構成について説明します。


人間の体(70kgと仮定)は
60%が水分なので
体内には、約 42kg (= 42 L)  の液体が存在します。

この液体は、大き
細胞外(組織外)細胞内(組織内)に2分できます。

細胞外の水分は更に
血液(約3.5L) と
それ以外(組織間液(約10.5L))に分類されます。

※組織間液とは
血管内に存在しないが
細胞内にも入り込めず
あふれている液体 と考えるとよいです。


細胞内まで、薬物が均等に分布すれば
人体全体、つまり 42L に薬物は分布します。



次に、代表的な4種類の薬物の
分布容積について説明します


1「色素系薬物 の 分布容積」
エバンスブルーや
インドシアニングリーンといった
色素系薬物の特徴は

アルブミン等の血漿タンパク質と
結合率が高く、かつ
極めて強く結合する という点です。

すると、薬物が血液に入ると
アルブミン等と極めて強く結合し
その結果、血中をぐるぐる周ります。

従って
分布容積は、血液の体積 3.5L と
ほぼ一致します。



2「イヌリン などの 分布容積」
イヌリンなどの薬物は
アルブミンとの結合はそれほど強くありません。

そのため、血管からもれでて
組織付近まで分布します。
しかし、組織透過性が低いです。

そのため、分布容積は
血液の体積+細胞外 の体積である 
14L とほぼ一致します。


3「エタノール などの 分布容積」

エタノールなどの薬物は
アルブミンとの結合はそれほど強くありません。
さらに、細胞膜も容易に透過し
組織内へと入り込みます。
(脳にも速やかに移行し、酔う わけです。)

分布容積は
体全体 の体積である 42 L と
ほぼ一致します。



4「チオペンタール や 三環系抗うつ剤 
などの分布容積」

これらの薬物の特徴は
比較的、組織移行性 及び 組織への蓄積性が高い
という点です。

分布容積は 
42L を超えた値になります。


※分布容積の定義は
Vd = X/C です。

X:投与した薬物の量
C:血中濃度


あっという間に組織へと
ほとんどの血液が移行することから
C がとても小さな値になって
42 を超えることもあるのです。



代表的な4パターンの
薬物の分布容積に見られるように

薬物分布は
「アルブミンとの結合性が強いかどうか」
「細胞膜の透過性が高いかどうか
(脂溶性と高い相関。分子量の大小も重要。)」
によって、変動します。
「組織への蓄積性が高いかどうか」
などによって、変動する といえます。


もう少し大きなスケールで人体を捉えて
器官への薬物分布に注目します。
すると、「血流量」も重要な要素です。

血液の循環量が多く、循環が速い臓器 
(脳、肝臓、腎臓、心臓など)には
それだけ多く、速く、薬物が分布します。

一方
脂肪組織や骨組織 といった
血流量が比較的少ない臓器への
薬物の分布は、ゆっくりになります。

疾病などで、これらの臓器への
血流量が変化すれば、薬物分布も変動します。




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