7) 薬物代謝酵素の変動要因


薬物代謝酵素の変動要因としては
個人内、個人間の変動があります。

個人内の代謝の変動要因として
年齢や性差、疾病の有無
併用薬物による代謝阻害、代謝誘導 
等があります。

個人間の違いの要因として
人種差や、遺伝的多型 等があります。


【代謝阻害】
代表的な薬物としては
アゾール系抗菌薬 及び
マクロライド系抗生物質(~リスロマイシン) が
CYP 3A4 を阻害することが知られています。



【代謝誘導】
代表的な薬物としては
リファンピシン、カルバマゼピン
フェニトイン、フェノバルビタール 
ほぼすべてのCYP分子種を
誘導することが知られています。


【人種差】
人種差が見られる代表的代謝酵素は
N-アセチル基転移酵素(NAT)です。
イソニアジド(抗結核薬) の代謝酵素なのですが
日本人の代謝能が大きいことが知られています。


【遺伝的多型】
遺伝的多型とは
個人ごとの遺伝子の違いのことです。

特に、一塩基のみの違い
(・・・A「T」GC・・・が、・・・A「A」GC・・・とか。)
を、SNPs (一塩基多型 「スニップス」 と読む。)といいます。

多型による代謝の変動が知られているのが
イミプラミン(三環系抗うつ剤)です。

イミプラミンは
主として CYP2D6 で代謝されるのですが
一部は、CYP1A2 により脱メチル化されます。
そして、脱メチル化されたものは活性代謝物なのです。

普通は、ほとんど2D6で代謝されるので
わずかに1A2 で代謝される方の影響はほぼないのですが
2D6 の PM(Poor Metabolizer:代謝能の低い集団) では
代謝物のメインが 1A2 による脱メチル体になり
作用が強く出る という変動があります。



他には
UDP-グルクロニルトランスフェラーゼの1つである
UGT 1A1 に、多型が知られています。

これは、抗がん薬のイリノテカンの活性代謝物である
SN-38 を代謝するのですが、この多型で代謝能が小さいと
重篤な副作用の発現比率が高まることが知られています。
そのため、この遺伝的多型の血液検査は、保険適用になっています。


また、CYP2C19の遺伝的多型と、オメプラゾールの血中濃度及び
ピロリ菌除菌の成功率には高い相関があることが知られています。


ちなみに
薬物代謝酵素とは少し違うのですが
遺伝子検査を行ってから、薬の使用を決定する
といえば、分子標的治療薬です。

トラスツズマブのHER-2 など
分子標的治療薬と、対応する遺伝子は
セットで逐一憶えておく必要があります。


演習)
(CYP阻害、誘導 関連の問題。)

(SNPs 関連の問題。)

(遺伝子多型 関連の問題。)



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