8) 非線形性の薬物動態


非線形性の薬物動態とは

投与量と血中薬物濃度が単純に比例せず

急に薬物濃度が

上昇したり減少したりすることです。


代表的な原因は

「代謝酵素の飽和」です。

これをもう少し具体的に考えます。



代謝酵素と薬物は

以下のような関係で表すことができます。

  Km

薬物+酵素 ⇄ 薬物酵素複合体 → 代謝物



Km は、ミカエリス定数 と呼ばれます。

ミカエリス定数の意味は

「理論的最高代謝速度の半分になるような

薬物(基質)濃度」です。


薬物の代謝速度は

以下のように表すことができます。

この式は

「ミカエリス-メンテン式」と呼ばれます。


v = Vmax[S]/Km+[S]



グラフにすると、以下のようになります。

横軸が、薬物濃度

縦軸が v であることに注意してください。






このグラフが意味することは

ある程度

血中薬物濃度(基質濃度)が上昇するまでは

薬物濃度と、消失速度は比例関係ですが


ある程度からは

薬物濃度の上昇にもかかわらず

消失速度が頭打ちになるということです。



(薬物+酵素 ⇄ 薬物酵素複合体 → 代謝物

から、ミカエリス-メンテン式を導出するのですが

公式として覚えてかまいません。


導出は余裕があれば

一度追っておく ぐらいで OK です。

(このページの一番下を参照。))



さて、代謝過程が飽和すると

結局、投与量と薬物濃度の関係は

どうなるのでしょうか。


薬物動態パラメータに注目すれば

CLtot が減少します。

この結果、半減期が伸びます。

※血中濃度が上昇し

副作用リスクが上がるといえます。




ちなみに

薬物と反応するタンパク質は

代謝過程に存在するものだけではありません。


他の過程におけるタンパク質の飽和も

非線形薬物動態を引き起こしうるのです。



『代謝過程の飽和』以外に

以下の 3 つが

非線形薬物動態を示す

代表的原因として知られています。



『消化管吸収の飽和』

(能動的に吸収される薬物に対する

輸送担体の飽和)


→血中に薬物が移行しなくなる

→薬物動態パラメータに注目すれば

AUC が D に比例しなくなる。(頭打ち)


※血中濃度が上がらず

適切な薬効が期待できなくなる可能性があるということ。



『腎における、分泌過程の飽和』


→血中から尿への薬物移行速度が減少

→腎 CL が減少。半減期が伸びる。


※血中濃度が上昇し

副作用リスクが上がるということ。



『腎における、再吸収過程の飽和』

→原尿から血中への薬物移行速度が減少

→腎 CL が増加。半減期が短くなる。


※血中濃度が上がらず

適切な薬効が期待できなくなる可能性があるということ。




※※※以下は、余裕がある時に目を通してください。※※※

ミカエリス-メンテン式の導出は

大きく 3 ステップです。


STEP1

『薬物+酵素 ⇄ 薬物酵素複合体 → 代謝物』 

の左側の平衡部分から、計算する。


[E]all (系中に存在する

全タンパク質の濃度)を用いて


[ES] = ・・・にする所を

意識して覚えておく!



2:左辺を v = にする。

そのために

『薬物+酵素 ⇄ 薬物酵素複合体 → 代謝物』の

右側を用いる。

速度定数を k2 とします。


(反応の第一段階で

薬物酵素複合体になり

二段階目の反応の、速度定数 

ということで k2 です。


STEP 3 でなくなるので、安心してください。

また、別の表し方でも問題ありません。)




3:Vmax を見つけて、完成させる。


STEP2 で見たように

[ES] の最大値は、せいぜい[E]all です。

つまり

『vmax = k2[E]all 』と表すことができます。


これを STEP2 のラストの式に代入すれば

ミカエリス-メンテン式の出来上がりです。


※※※導出 以上。※※※




以上です。




前の項目へ      目次へ     次の項目へ


(酵素反応、拮抗阻害、非拮抗阻害)